こころの辞典1601-1700

1601
長期入院者社会復帰促進プラン
・いわゆる「社会的入院」にあたる人のリストアップ。レベル・状態に応じて分類する。
・使用可能な社会資源の検討。さらには不動産屋・大家と懇意になれるか検討。
・具体的な社会復帰のめどがないのに社会復帰療法をすすめるのでは不十分である。
・具体的なケース検討会。参加は医師、看護婦、OT、PSW、地域担当保健婦、通院予定施設PSW、生保ワーカー、作業所指導員、グループホーム指導員、可能なら家族など。社会復帰計画を立てる。……この作業を社会療法部会でおこなう。生活歴、現病歴、性格、治療経過、検査結果、日常生活能力、職業能力、暮らしの状況について情報を持ち寄る。
・社会復帰計画に従って実行。結果をフィードバックして、次からのプランに生かす。

・以上の作業のための書式を作ること。
・退院後の通院先と担当保健婦訪問看護担当者、福祉ケースワーカーに手渡すデータの書式を整える。入院時から情報収集を開始する。医師、看護婦、OT、PSWの分担を明確にする。大きくわけて、薬・体・心、日常生活、職業能力・特性、暮らし全般のそれぞれを担当する。

1602
退院時カンファレンス資料
○医師から
診断、生活歴、家族歴、現病歴、性格、治療経過、検査結果、患者教育の成果(病識、コンプライアンス、病気について、再発防止について、再発時の対処、受診のタイミング、社会資源利用などについての理解)、今後の予測

○看護から
病棟での症状評価……PANSS
日常生活能力……LASMIなど?
陽性症状・陰性症状は日常生活をどの程度妨げるか
性格評価

○OTから
職業能力評価
職業準備教育は完了したか
職業適性
集団内での適応

PSWから
・暮らしの状況(収入・預貯金、住居・大家の理解、職場の理解、友人ネットワークのメリット・デメリット)
・家族状況
  家族教育(精神状態、薬、EE、受診タイミングなどの理解は十分か)
  家族調整の要否
  家族親戚がどのように援助するか具体的に提案できるか
・仕事探しの援助

○退院後ケア体制としてどのようなものが望ましいか
・通院先
デイケア、AA、ソーシャルクラブ、作業所、グループホーム、援護寮などの利用
訪問看護、地域保健婦や生保ワーカーの関与のしかた(住居、職場、生活費など)

○再発要因とその対策のまとめ
・不眠・不食・拒薬への対策
・再発早期発見の方法
・再発要因と予防の要点

1603
組織 案
東京海道病院臨床業務部分
院長 医局
  臨床心理室
社会療法部
  医療相談課
  リハビリ課
     地域リエゾン
 患者・家族教育課
 社会療法部広報課
   看護……総婦長、各病棟婦士長
薬剤
臨床検査
訪問看護ステーション
   栄養
事務

社会療法部

○リハビリ課
・入院精神リハビリ係
・入院痴呆リハビリ係
・通院リハビリ係
精神デイナイトケア……外来、地域、訪問看護との連携
(将来)老人デイナイトケア

○地域リエゾン
・退院時地域リエゾンカンファレンス係
・長期入院患者社会復帰促進プラン係
社会的入院患者評価
退院準備作業(ホステルで評価するなど)
社会資源受け皿整備(アパートや外勤先開拓など)
・社会資源情報整備係

○家族教育課
患者・家族教育の実施アレンジと効果判定

○医療相談課
各種CW業務
受診援助、入院援助、退院援助、経済問題援助、住宅問題援助、家族問題援 助、心理・情緒問題援助、療養上の問題援助、就労問題援助、教育問題援助、 日常生活援助、人権擁護、ソーシャルクラブ、病棟グループワーク、デイケ ア、その他

○社会療法部広報課
印刷技術を生かす

職員構成は医師、OT、PSW。ボランティアのアレンジも考慮する。

1604
せん妄
意識障害のひとつで、興奮や不穏を伴うもの。普通意識障害は精神の働きが鈍くなり眠る方向に向かうのであるが、せん妄の場合には興奮して騒いだりする点が特異である。

1605
地域精神保健
?ポジティブメンタルヘルス活動(積極的精神保健)
心の健康作り
生きがい作り
子育て
?サポーティブメンタルヘルス(支持的精神保健)
拠点作り
制度作り
システム作り
?トータルメンタルヘルス(総合的精神保健)
地域でシェアする

1606
家庭、学校、職域、地域とわけて考える。

1607
健康は「栄養、運動、休養」。この原則は精神にもあてはまる。

1608
ネットワークだから核はない。核のないネットワークは代償性が高いのではないか。

1609
地域医療のネットワークは三層に構築する
オフィシャルネットワーク
プライベートネットワーク……個人的つながり
ベーシックネットワーク……関心を持つ住民、ボランティア

1610
小学校での勝手な様子とプロ野球の応援団の集団主義的様子。集団凝集性・一致度が全く違う。
教室で勝手気ままな子供たちと球場で完全に集団の一員となっている人とはもともと違う人なのだろうか。
球場のように強力な場の力があれば集団に沿うということなのだろうか。

1611
精神衛生と精神保健
消毒と隔離の伝染病対策が衛生。健康の増進保持が保健。保健には積極的な響きがある。

1612
疾病性だけではなく、事例性としてとらえて対応することが大切。
illness–medical care
caseness–case work,care

1613
精神病と脳病の差
精神病=脳病(身体医学的把握)+現象学(心理学的把握)

1614
地域保健活動
?手帳の交付・啓発活動
?健康教育
?健康相談
?健康診査
?リハビリテーション(機能訓練)
?訪問指導
?

1615
保健所事業
?普及・啓発
?健康教育
?相談・訪問
?保健所デイケア
?家族会
?地域ネットワーク

1616
保健所連絡会議
?事務連絡会議
?デイケア業務連絡
?ケース検討会
?企画会議

1617
PANSS:陽性・陰性症状評価尺度

P1 妄想
P2 概念の統合障害
P3 幻覚による行動
P4 興奮
P5 誇大性
P6 猜疑心
P7 敵意

N1 情動の平板化
N2 情動的引きこもり
N3 疎通性の障害
N4 受動性・意欲低下による社会的引きこもり
N5 抽象的思考の困難
N6 会話の自発性と流暢さの障害
N7 常同的思考

G1 心気症
G2 不安
G3 罪責感
G4 緊張
G5 衒気症と不自然な姿勢
G6 抑うつ
G7 運動減退
G8 非協調性
G9 不自然な思考内容
G10 失見当識
G11 注意の障害
G12 判断力と病識の欠如
G13 意志の障害
G14 衝動性の調節障害
G15 没入性
G16 自主的な社会回避

1618
LASMI:精神障害者生活障害評価尺度(精神科診断学 5,221,1994)

1619
デイケアという処方は何を狙っているか。
デイケアは「ほっとして、次に元気が出てくる」という。レストとアクトである。患者を保護して元気づける「時間と空間の処方」である。さらにそこには職員や他患がいて、「人の処方」も可能である。また、自らの意志を展開する場所を与えることにより「患者の意志」を処方の狙いとすることも可能である。

1620
作業療法という呼称は作業所につながっている。そして、労働は神聖で人格を形成するとの過去の通念が影響している。

1621
精神障害者社会生活評価尺度(LAMSI)

 1 身辺処理
?生活リズムの確立
?身だしなみへの配慮……整容
?身だしなみへの配慮……服装
?居室(自分の部屋)掃除やかたづけ
?バランスの良い食生活

2 社会資源の利用
?交通機関
?金融機関
?買い物

3 自己管理
?大切な物の管理
?金銭管理
?服薬管理
?自由時間の過ごし方

4 対人関係
・会話
?発語の明瞭さ
?自発性
?状況判断
?理解力
?主張
?断る
?応答
・集団活動
?協調性
?マナー
・人づきあい
?自主的なつきあい
?援助者とのつきあい
?友人とのつきあい
?異性とのつきあい

5 労働または課題の遂行
?役割の自覚
?課題への挑戦
?課題達成の見通し
?手順の理解
?手順の変更
?課題遂行の自主性
?持続性・安定性
?ペースの変更
?あいまいさに対する対処
?ストレス耐性

6 持続性・安定性
?現在の社会適応度
?持続性・安定性の傾向

7 自己認識
?障害の理解
?過大な自己評価・過小な自己評価
?現実離れ

1622
コンピューターをはじめとする技術革新は物流革命をもたらした。医療分野で何ができるか、考えることは価値がある。
○外来
・コンピューターオンラインで、薬剤の待ち時間が節約できる。
・面接の待ち時間を合理的に管理できないか。

○入院
・同じ内容の処方や文書を何度も書かなくて済むようにしたい。
・各病棟に足を運んでいる時間があったらもっと有効に使いたい。朝のうちに緊急度に応じてドクターに要請を出し、ドクターはその要請に従って一日のスケジュールをこなす。そのほかに救急コールなど。
・患者の自発性を向上させるために使えないか。ソフトな管理に移行できないか。

このように考えてみて、「不満」や「改善点」は医者の側にはあまり感じられないのではないかと思う。

1623
患者ごとに最適な刺激レベルをセットする。その刺激レベルをめどとして日常生活、病棟生活、作業、デイケア活動などを計画する。「最適刺激レベル」は何によって知ることができるか?

1624
リハビリでいう、「人間作業モデル」とは何か?Kielhofner.

1625
この病院は各部局がタコツボである。それだけではない。医者同士でさえ、タコツボである。組織の精神病理である。
→「組織の精神病理」を展開できないか?

1626
精神科リハビリ……社会復帰を目指すとしても、社会の受け皿がなければ空しい……どのような社会資源があるか?開拓の戦略はどうか?地域は受け入れる心の用意ができているか?……共同体のあり方。会社や地域は障害者をどのように遇するのか。
共同体の倫理は個人の倫理の総和ではない。
しかし一方で、治療者の側にリハビリの戦略はあるのか?……理論と技法と制度(治療構造)……評価と働きかけ、それらの背景となる理論。

1627
リハビリ
・cure:精神療法の延長……心理職……ファンタジーの次元で癒す
・care:作業の延長?……OT職……現実的・現実検討回復的
しかし広義の精神療法は「ただそばに寄り添うこと」のシュヴィング的態度を含む。それはcareである。
どちらの系統であっても、本質的に深いものは共通の深みにたどり着くだろう。入り口あたりでうろうろしている場合には、かなり異なるものと映る。
お話を聞いて、現実的実際的アドバイスを返すことも精神療法ならば、違いはない。

1628
リハビリ活動の二大別
?現実検討を増大する方向の活動……現実的対処(現実を処方する)
?ファンタジーを刺激する方向の活動……深層を操作する

手術にたとえるとして、メスで切り裂いて病患部を操作するタイプと、傷口を乾かして新しい皮膚ができるように促進するタイプとがあると思う。癌のような深部の病理には前者を適用し、擦り傷のような浅部の病理には後者でよい。

1629
共感と投影の差。
「親は嫌いだ」と相談者が語る。それに対して、自分の「親体験」を投影して応じるのは共感ではない。
共感的技法ではなく、自分の体験や考え方をぶつけるという常識的方法を採用する場合もある。

1630
当事者にならなければ分からないことばかりである。他人には何も分からないのだと謙虚になった方がよい。

1631
アセスメントする技能領域一覧(池淵)
a.日常生活の自立
身だしなみ、家事、食生活、金銭管理、買い物、交通機関の利用など

b.職場・学校・デイケア・作業所で役割をどの程度遂行できているか
参加状況、参加態度、周囲との協力関係、仕事の達成度、本人の満足度、周囲からの評価など

c.家族関係は円満か、家族としての役割はこなせているか
家事、家庭人としての役割遂行、家族間の親密さ、家庭問題解決の技能

d.交友関係
親愛関係の維持、肯定的自己主張、断るなどの否定的自己主張、会話の開始と維持、余暇の過ごし方

e.再発に関連した諸技能
服薬自己管理、症状自己管理、ストレスへの対処技能、持続症状への対処など

一人暮らしの人ならaが、家族と同居する人ならbが重要。

1632
精神科リハにおける心理学。チーム医療の視点。
行動評価尺度を用いる理由……スタッフがとらえにくい行動。

1633
ケースマネジメント
○強調点
・利用者の個別の立場に立つ
・サービスを調整する(援助をパッケージ化する、地域の状況に合わせる)
・計画的におこなう
・継続的におこなう
○内容
・ニーズ・アセスメント……アウトリサーチが基本、チェックリストが有用。
・プランニング……ニーズに順位をつける、ミーティングを開き、連携内容と期間を限定することも大切。
・介入
代行者、教師・指導者、案内者・同行者、解説者、広報専門職、支持者、などとして。
・モニタリング……紹介して終わりではなく、経過をモニターする。
・評価……全体の動きを評価する。目標達成度や利用者の満足度など。

1634
地域での生活のノウハウを教える。プライベートな情報ネットも大切。地域生活ネットワークが構築できるか。

1635
病棟管理医の仕事
病棟レクの問題
引継方式
記録方式
カンファレンス・ミーティング
教育
他部署との連携・具体的なタイムスケジュール

1636
「依存させる福祉」の問題点。

1637
退院時・PSWのチェック項目
住居
経済
職場
家族関係
社会資源の利用
とりまく人々の配置・サポートシステムとしてどうか?
以上から
ニーズとプラン
再発因子・対策

1638
退院時・看護部のチェック事項
陽性症状、陰性症状、日常生活能力について、PANSS,LAMSIから抽出。これらが日常生活をどの程度制限するか、評価。
性格因子・対人関係の特徴・行動特徴についての情報。
再発因子と対策

1639
退院時・OTのチェック事項
・OT場面での観察報告……参加の状況、作業内容、態度、自己評価、周囲の評価、集団内での振る舞いの特徴、作業能力、職業適性、就業にあたって注意すべき点、仕事を続けるために注意すべき点、事業所への連絡事項はあるか、サポート体制を工夫できるか
・再発因子と対策

1640
ケースワークシステム
リハビリのための包括的最適システムが半ば自動的に機能するように工夫すること。利用可能な社会資源の中で最適の組み合わせが出力されるようなシステム。
ケースに対して自動的にチェックがかかり、ニードが発見されれば対策は自動的に決まる、……などと半自動的なシステムを作れないだろうか?
問題発見と解決の循環を手続き化する。
「たまたま特殊な事情によってうまくいった」タイプの解決が続くようだとよくないと思う。

1641
精神病の場合も、病院をつきとめ根治療法を探るのが第一の道である。しかしそれが現状ではできない以上、リハビリテーションノーマライゼーションが大切である。精神医学の本来の目的は精神病者のQOL向上であることからも、また、人権への配慮の面からみても、リハビリテーションノーマライゼーションが必要である。
そのためにはチーム医療が不可欠である。

1642
「それを必要とする人を集めてサービスを提供するのではなく、人にサービスを集める」方式の援助が大切。

1643
長期入院者の場合、ひきこもりなどの状態を「陰性症状なのか、施設症なのか」と問うことが必要である。Hospitalismともいえるし、Prisonizationという言葉もあるようである。
施設症の場合には自発性欠如や依存性格などがみられても、生活状況を改善すれば元に戻る。
毎日新聞1997年2月7日付けの記事では、「外出制限・少ない入浴回数が施設症の発生と関係していることが裏付けられた」と報じている。精神病院協会ではそれは陰性症状と施設症を意図的に混同して精神病院を攻撃する材料にしたものだと反発している。

1644
世間の人の病気についての知識は、体の病気についてと心の病気についてとでは大きな開きがある。
とくに心の病気の場合には、病気なのかストレスによるものなのか、心因性疾患というべきかなど、不明な点も多いと思う。医者自身が混乱しているのだから、その知識を受け取る側がすっきりと理解できているはずはないだろう。
予防医学の観点からも、職場検診などで身体病のスクリーニングは能率よくできるようになった。精神面ではまだできていない。

1645
管理職の要求
・部下の言動が健全か病的か。数字で示す方法はないか。あるいは数字ではなくても目安となる基準はあるのか。(これについては現実検討などが基準になるけれど、それだけではない。防衛機制の質にまで言及すれば良いだろうが、難しい。しかし、系統立てて説明すれば分かりやすいはずである。否認→外部現実歪曲→心的現実歪曲→良好な現実検討)
・予防に何が役立つか。
・上司のいかなる言動が悪影響を及ぼすか。
・精神健康についての知識が身体保健の知識と同程度の普及がなされることが必要である。

1646
心身一如の観点から、心の状態を数値化できないか。

1647
管理職の要求
上司は部下にプレッシャーを与えながら能力向上を促す。それが効奏する場合もあるが、部下をつぶしてしまう場合もある。このあたりをあらかじめ判定するにはどうするか。「ストレス耐性」とでもいうべきもの、つまりどのくらいのストレスならば耐えられるかという、量の問題。または「ストレス対処回路の特性」とでもいうべき、ストレスの質と対処回路の質の問題がある。
このあたりを測定するテストは開発できるか?フラストレーション場面を見せて反応を探るタイプのテストが使えるかもしれない。

1648
サラリーマンと精神医学
どのタイプのストレスに弱いか。
どの程度のストレスに耐えられるか。
→ストレス耐性構造の数値化。

また、職務適性や管理職適性などを測定表示できないか。それを参考にして自分の思考や行動のパターンを改善できないか。
信長、秀吉、家康の三人はこの順番で登場する必要があった。組織の直面している課題とリーダーシップの質の関係も大切である。
マネジメントスタイルの研究といってもよい。

1649
組織のストレス
階層構造や縦割り分業組織のもたらすストレスがある。
階層構造のなかでは、顔の見えない上層部からの決定や噂や批判が届けられ、大きなストレスになる。
縦割り分業組織では全体の見通しが得にくく、横の連絡がない。さらに他部署との利害が対立しやすいため、末端部署での閉塞感・疎外感が生じる。

このあたりはコンピューターネットの利用で克服できないか?

こうした現代的組織の特性がストレスを生み出す。その上に、各構成メンバーのパーソナリティの問題が加わる。

組織の特性から生じているストレスが、特定の個人のパーソナリティの問題に見えてしまう場合があると思われる。
組織のプレッシャーが人格化されている。このような問題にも対処できるのが望ましい。

1650
職場の精神保健
・組織の特性がうみだす病理……具体的には分業体制を敷いてマネジメントしてゆく手法がもたらす精神病理。これがとのようにして個人の「下痢」につながるのかについて考察する。
→求められている。平凡な解答は簡単である。しかし本質的な解答をもとめるとすれば難問である。
・表面的には現代の特色を追いかければレポートにはなる。コンピューター化、フレックス化、在宅化、国際化など。

1651
職場と精神医学
・病気の予防……病的状態の理解、どんなときにどこに受診すべきか、悪い態度、よい態度、など。
・適性の判定……仕事の内容と適性、管理職適性、(どのような課題に向けての管理職なのかについてまで問われる)
・採用時の注意点……これぞまさに人事の最大のノウハウ。容易にわかることではない。

1652
施設に人を集めるのではなく、人にサービスを集める。転換。

1653
診断する権力
メンタルヘルス活動は社会防衛部分を含むことがある。その運用に疑問がある場合もある。極端な例は、反社会主義者を「分裂病」とレッテルを貼り隔離収容する「社会防衛」。マイルドな例では、病気に関係なく親に対して正当な批判を述べているにもかかわらず、「病気のせいでおかしなことを言っている」ことにされてしまう場合。「精神病と診断すること」は、診断の権利を握る側の「防衛力」となり、ときには「攻撃力」となる。

1654
職場リエゾン精神医学
・職場で精神医学的と思われる問題が発生したとき、精神科医やカウンセラーを訪ねやすい状況を作る。
・普段から精神医学、メンタルヘルスの啓蒙活動をする。第一次、二次予防。
・何が精神医学的問題であるか、わかるように啓蒙する。
・職場復帰が当たり前である風土をつくる。第三次予防。復帰しやすい制度を作る。たとえば50%勤務や70%勤務の制度。年休を時間刻みで消化する制度。長期欠勤者が発生した場合に仕事を補う者を手当する制度(これがないと現場では欠勤者を憎むようになる)。
・会社内のケースワークを充実させる。
・管理の強化や会社防衛の手先にならないように注意する。
・身体科の集団検診制度に乗せるか、別建てでいくか、集団スクリーニング制度を考える。
・プライバシーの問題。公開すると出世にさしつかえると考えて、秘密にする人が多い。しかしそのせいで、周囲の人に「性格の問題」と考えられてしまう場合がある。会社に知られたくないからと健康保険も使わず自費で診療を続ける人もいる。このあたりも改善の必要がある。

1655
病棟での分裂病者の様子を見ていると、何かをしながら別の何かをすることができないようだとの指摘。確かにそうかもしれない。
そこで、「ながらテスト」を考える。大脳高次機能テストとして、「かな拾いテスト」と類似の発想。
たとえば、テレビを見ながら机で何かの作業をするのはよくある風景である。テレビを見せながら、クレペリンテストをやる。作業能力をはかると同時に、テレビの内容理解を尋ねる。集中しすぎるよりも、注意力を分配できる能力を評価する。

1656
本質的欠損と廃用性機能障害とを区別するテストはないか、考える。

1657
本質的欠損の場合にも、周辺の神経細胞が代償性に機能を肩代わりするから、やはりリハビリが有効だとの考え方もあるだろう。
機能障害があるとき、神経細胞ネットワークが
1)つながっている。→廃用性機能障害。廃用に対するリハビリ。
2)切れている。代償の可能性もない。→本質的欠損。良肢位への固定のためのリハビリ。
3)切れているが代償回路ができている。→代償回路形成・定着のためのリハビリ。
一応このように分類できるのではないか。

1658
精神科入院は「罰」ではない、治療なのだと教育する必要がある。ここのところを分かっていない患者が多い。また、病棟のアメニティの低さはまさに「罰」であるとも思えるようなものである。

1659
障害児は養護学校の帰り道に落ち葉を拾ってはいけない。その理由二つ。
1)障害児は道に落ちているものを、誰かの所有物かそれとも誰のものでもないものか、識別する力に欠けている。ときどきは他人のものを持っていってしまうことがある。状況判断ができなのだから、「道に落ちているものは決して拾わないように」と教育することになる。
2)地域住民は障害児が歩いていて何か拾った場面を見た時、「障害児だから識別力がなくて、人のものをとったかもしれない」と疑う。そのように疑われないようにするためにも、道で落ち葉を拾ってはいけない。

1660
課題
サラリーマンの精神医学をもっと考える。

1661
まず地域全体に施設を利用したい人が何人いて、どのような施設がどれだけ足りないのか、明確にする必要がある。
また利用者が必要を感じたときに、社会資源の性格、内容、場所などについて分かりやすく説明する必要がある。初回の総合相談では、現段階ではここから利用していきましょう、次はこのような計画です、と提示できるようにする。
どこかの施設が受け入れたとして、その後の連携をシステムとして組んでおく。

情報提供できるキーステーションが必要である。これは同時にケースワーク活動の拠点になる。施設が増えるほど、こうしたケースワーク・キーステーションは重要である。

ネットワークを作ることと情報サービスの窓口を作ることの両方を実現しなければならない。

1662
各施設の悩みとしては、病院やクリニックにつながっていないと不安であることがあげられる。たとえば作業所での過度の抱え込みがあげられる。

1663
登校拒否についてのひとつの見方(吉川武彦)
社会に対する抗議は
1950年代・大衆運動として国家権力に・労働者
1960年代・学生運動として権威機構に・大学生
1970年代・校内暴力として権威象徴に・高校生
1980年代・家庭内暴力として親たちに・中学生
と変遷していて、これは?抗議の担い手が若年化し、それに伴い抗議対象も変遷する傾向を示している。さらに?都市部から周辺部へと遅れて拡散する水平的拡散傾向もみとめられる。
?に対しては権力側の対策が、強攻策と懐柔策を合わせて成功しているからである。

1664
ハビリテーション
リハビリテーションではなく、ハビリテーション。療育(医療と教育)。
もともと教育が欠けている場合には教育が必要。
養護は教育・療育をおこなう。
分裂病者の場合、元来あったものが病気によって失われたものか、あるいはもともと育たなかったものなのか。病気によって失われた場合、陰性症状(本質的欠損)なのか廃用性機能障害なのか。
陰性症状と廃用性機能障害の区別は容易ではないように思う。結局、訓練をしてみて、比較的早期に回復するなら廃用性であるというくらいしかいえないのだろうと思う。つまり、どの場合でもリハビリは行うべきであるということだ。どうしてもだめなら本質的欠損であるということになる。そして良肢位での固定を考える。

1665
良肢位固定の例
「どうも」というあいさつは大変よい良肢位固定の例である。活用場面が広い。状況を正確に判断する必要がない。

1666
その人の実際の生活時間を追跡してみて、再発要因を探る作業が必要である。

1667
施設症
廃用性萎縮
ホスビタリズム
Hospitalism
Prizonization
Institutionalism

1668
ビジョンと実行

1669
社会の中で癒されることが大切。
デイケアが中止になったら働き始めた人がいた。施設から出て社会の中で癒される。それが本当の社会療法である。

特殊施設がひとつもない状態が社会療法のもっとも理想的な形ではないか。

1670
成人するまでは親の責任。成人したら本人の責任。ということは、成人してからの精神病者の保護者は親ではなくて社会全体が引き受けるべきなのではないか。
この考え方に一理あるような気もする。

1671
セルフ・ヘルプ・グループの形成
常時開放されていて、そこに行けば誰かいるだろうという、大学のサークル部屋のような環境。

1672
社会療法の最終地点はコミニュティの再生である。

1673
性感染症から慢性疾患へと疾病構造が変化した。それに伴って健康観が変化した。

1674
病院は個性を無視する場所である。一律処遇は苦痛である。
それでも許されていたのは、精神病院が社会防衛の道具にされてきたからだ。社会も家族も見捨てたい人を収容してきたからだ。そこにあったのは医療でも福祉でもなく監禁であった。

1675
精神医療の問題点。治療開始への抵抗。ここを突破できないと非常にこじれてから治療が始まり、結局治療は長引いて予後も悪いということになる。

1676
その患者特有の危機のサイン。サインの出し方。

1677
精神科リハビリ
・前段としての生活臨床の蓄積
・?能力障害の改善?環境調整
能力回復のために過重な負荷をかけると再発の危険が増す。しかし現状の能力に見合った環境を与えるのでは本来あるはずの発展可能性を阻害する。バランスのとれた介入が必要。つまり、その人の潜在能力を正確に評価し、最大限のQOLを引き出す。
・?能力向上と環境調整の両面作戦。包括的アプローチ。?ユーザーの意思尊重。動機付けの問題。?入院と地域生活を包括するプログラム。?他職種チームアプローチ。?集団の活用。?アセスメント、プラン、実行、評価、これらプロセスの重視。
・SST
・患者心理教育と家族教育
行動療法的家族指導、心理教育的家族マネジメント、家庭訪問家族療法、複合家族療法、家族教室
・職業リハ
退院後の成功は作業能力だけでは測れない。地域で生活する能力、対人技能、精神症状などが独立の変数として関与する。
訓練後就労よりも実際の職場で訓練する方式がよい。
過渡的雇用(transitional employment)……複数のものがひとり分の仕事を請け負う。
援助付き雇用(supported employment)……スタッフは企業で雇用主と障害者双方への援助を行う。期間修了後に就労に結びつけばよい。
分裂病者の場合には獲得されたよい適応が次の職場で必ずしも発揮されない。援助付き雇用のほうが職場への定着期間が長い。
仕事探しクラブもある。
前職業的訓練で何を獲得目標とするか。野津は基本的な職業人としての機能をwork personslityととらえる。
獲得目標の明細化。
・地域支援プログラム
「地域における積極的な支援継続チーム」(PACT)……訪問などの積極的働きかけ、日常生活の場での援助がある、個別化されたプログラム、24時間の危機介入サービス、ケースマネジメント。……これはしかし援助終了後18か月後には効果は消える。つまり期間限定援助ではなくて継続的地域ケアシステムが必要である。
・居住プログラム
専門家の関与の程度、居住者の自由度
・ケースマネジメント……事例のアセスメント、サービス調整とモニター、訪問指導、入院部門との連絡、地域社会資源情報
デイケア
陰性症状改善、再発率低下、過度の退行を防止などの効果があるが、何がその要因かわかっていない。
デイケアの機能分化……危機介入、入院から外来への移行のケア、能力開発や職リハ、地域デイサービスなどを区別する。
・共同作業所

1678
リハの課題
・機能障害と能力障害の区別、機能障害を視野に入れたリハ
・疾患→機能障害→能力障害→社会的不利というモデルは精神科疾患では適合しない。結局、状態像のモデルがまず大切。モデルが違うから、医師・心理・OTなど各部署で話が通じないのではないか。
分裂病の経過とモデル
慢性進行の予後不良型は少なく、再発寛解型が多い。
10年の不安定期、特に最初の5年の不安定期にもっとも再発率が高い。再発防止のため服薬教育などが大切。早期からのリハは有効かどうかデータがない。
不安定期後の10余年はストレス脆弱性モデルが適切。能力障害介入に重点。
安定期には環境調整。

1679
1990年 Anthony のリハについてのまとめ。「Psychiatric Rehabilitation」。

1680
精神科救急システム……総合的精神科救急プログラム
患者のいる場所に出向いて救急介入を行う「Mobile Crisis Team」。
トリアージュ」救急場面での振り分け。

1681
外来プログラムの細目
・短期
部分入院プログラム
集中的精神科リハビリテーションプログラム
・長期
外来クリニック・プログラム
継続的デイケア治療プログラム

1682
ニューヨークで、社会復帰を促進し、QOLを向上させる「地域に根ざした総合的ケアシステム」。

1683
IRP:Intensive Rehabilitation Program
IRU:Intensive Rehabilitation Unit
CIPRP:Comprehensive Intensive Rehabilitation Program
期間を限定して包括的なプログラムを組む。いろいろな資源を結合させる。

1684
デイケア治療ガイドライン作成のための検討課題(池淵1995)
?精神科リハビリテーションの中でのデイケアの役割と目的
?対象選択:効果が期待できる対象の選び方
?デイケア治療の動機付けと導入の方法
?デイケア治療目標の設定
?集団運営の方法とスタッフの関与の仕方
?デイケアにおけるプログラムのあり方・工夫と活用の方法
?社会生活における機能の障害(生活障害)に対するデイケア治療の方法
?再発予防におけるデイケア治療の方法
?家族へのアプローチの方法
?デイケア終了後のアフター・ケアの方法
?精神科チーム医療の技術論

1685
患者サークル結成があってもよい。

1686
全体をケースマネジメントとして考える。
ケースマネジメントのなかに医者の利用、リハビリの利用、社会資源の利用なども含まれる。患者の自己決定権の補助をする。治療に自己決定プロセスを持ち込むことで患者に本質的な変化をもたらすことができるだろう。

1687
OT……個別作業、役割作業、話し合いによる自己決定を含むプログラム、リーダー育成
集団精神療法……聞く参加、話す参加、相手を受けとめる参加
SST……
セルフヘルプ・グループ……
各プログラムの中にもステップがある。

1688
リハビリの評価。能力開発と環境調整の同時進行。
?まず、現在の能力曲線と潜在的に達成可能と考えられる能力曲線を評価する。潜在的に達成可能な能力が最終目標である。
?短期目標を設定し、プログラムを考える。
?短期目標に適切な環境を調整する。
?一方で、最終目標に適切な環境の用意をめざす。

1689
ながら作業テスト
テレビを見ながらよくなれた作業をする。この能力をテストしたい。

1690
外来クリニックプログラム
集中リハ
継続リハ
などを適切な時期をとらえてアレンジする。

1691
デイケアの機能別の効果判定
時期 回復期 リハ 維持療法

治療目標 機能障害からの回復 生活障害改善 帰属集団提供
外来への移行 QOL向上

プログラム例 ストレス対処技能 SST OT
家族療法 職リハ レク
自助グループ

効果判定指標 精神症状 特定の生活障害 医療からの自立
陰性症状 再発率
再発率 再入院率
再入院率

1692
地域リハビリテーションの重要性が叫ばれるが、病院リハも大切ではないか、との指摘。

1693
江畑「分裂病の病院リハビリテーション
12章の内容
近年の精神分裂病理解の変遷
慢性分裂病の治療論
病院リハビリテーションの展開
教育的家族療法
職業リハビリテーション
各種病棟でのリハビリテーション
デイホスピタル(昼間病院)
看護の役割
チーム医療
地域リハビリテーションとの連携
21世紀の精神病院におけるリハビリテーションに向けて

1694
リハの各側面
廃用性機能障害……能力再建
もともとの欠損・教育欠損・体験欠損……能力開発
代償可能な欠損……能力再開発
代償不可能な欠損……良肢位の固定、「どうも」とあいさつ。

1695
医療、リハ、福祉が並行して包括的に実施されること。アレンジの技術が医師にあるか。包括的プログラムの大切さ。ケースマネジメント。

1696
心理社会療法部

1697
地域精神医療の問題点。分裂病者と、性格障害者・薬物中毒者とを同一の枠で処遇するのは間違いだと思う。
生活保護の問題も同様である。本当に必要でよい使われ方をする場合と、その逆の場合と。難しいものだ。
制度には必ず難点がある。

1698
集団療法担当者の工夫
医師カルテに記載していて、アピールしている。気に入っている医師もいる。
レポートを各部に配っている。これも目立つ工夫である。

1699
医学は疾病を対象とし、看護学は「疾病に対する人間の反応」を対象とする。したがって精神科看護学は一段と高次の反応研究になる。反応する部分が病んでいるからだ。

1700
障害者の福祉を視野に含むようになって、医学から福祉へと精神科医療の領域は変化しつつある。
精神医学では従来から生活障害が問題であった。その点では先取りしていたといえる。