“「俺は最近、ドナルド・トランプに励まされているんだ」と、私の不安を知ってか知らずか、大統領選挙のニュースを見ながら父が言う。その顔に憂いはまるでなかった。「あいつは四度も破産してるだろう？ それでも毎度毎度立ち上がってきたんだ。すごいよなぁ」と父が微笑む。トランプの政治手腕や、問題発言にはまるで興味がないようだ。斜陽を否めぬ自国の現状に息苦しさを感じるアメリカの特定層は、トランプのこういうところを支持しているのかもしれない。
「トランプには愛嬌があるんだ」と父が続けた。「商売でもなんでも、あきらめないで前向きにやることは大事だよ。でもな、それだけじゃダメなんだ。愛嬌がないと。トランプには愛嬌がある。愛嬌のある奴は、夢を見せる。人に夢を持たせるんだ。そういう奴は、何度でも立ち上がれる」”