解剖学は構造を研究する学問である。そして自意識の謎。

医学部の最初の講義。

生理学は人体の「機能」を研究する。
解剖学は「機能」の裏付けとなる「構造」を研究する。
「機能」には必ずその裏付けとなる物質的「構造」がある。

養老先生が講義で言っていたことを覚えている。ぼそぼそ言っていた。
「構造」とは何か、次の数式で示される。
「生きている鳥」-「すりつぶした鳥」=「鳥の構造」

最近は「構造」研究は細胞内解剖に向かっていて、細胞内での物質伝達や代謝の研究になっている。一方ではDNAからタンパク質、そして細胞構造へと「組み立て」タイプの研究が盛んである。「解剖」の側と「DNA・タンパク質」の側と、挟み撃ちにして研究しようというわけだ。
解剖といえば、一般にはそんなイメージだと思う。

一方、なぜ指が5本あるかについては、進化論的に考えることができる。進化論であり、「系統解剖学」と呼ぶ。なかでも不思議なのは「自意識の発生」である。進化の中で何が起きたのか、大きな謎がある。
心療内科・精神科の臨床現場では、その「自意識」の機能不全を目の当たりにする。そこから逆に、「自意識」の謎を推定することができる。残念ながら推定にとどまるのが現状である。