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アダルト・チルドレンと家族」斎藤学学陽書房
・「彼は父とそっくりだ。危ないと思った」「でもその後、一緒にいないとたまらなく寂しい」。社会生活では不器用な、プライドの高い、危険でマッチョな男を、哺育し、自分だけを愛する成熟した男に仕立て上げることは、彼女にとって一生をかけても悔いのない大事業である。これに成功すれば、良心との生活の中でひび割れた部分を補修することができると無意識のうちに考えている。「普通の男」ではもの足りない。
●欠けた部分の補修を人生の目的とするタイプ。それは実際には多いかもしれない。
●事柄の本質は逆ではないか。上の記述は目的志向であるが、進化論と同じで、結果的に彼女は多くの報酬を得る(誤った報酬ではあるが)ので、その行動パターンが固定化するということだろう。
・機能不全家庭。その意味の範囲は広い。
アダルト・チルドレン。忘れられた子供。静かでいい子。問題を起こさない。注目をあびない。
・子供にとっての安全な基地であること。その中で子供が十分に自らの「自己」を発揮することができること、これが健康な家族の機能である。
・言葉にされないルールにからめ取られ、子供の心の発達はある段階で停止する。
●なるほど。秘密のルールというわけだ。見たことも見なかったことにする。口にしてはいけない。感じたことも感じなかったことにする。そのような家庭というもの。
大日本帝国というシステムも、そうしたものの一つに思える。

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アダルト・チルドレンと家族」斎藤学学陽書房
・子供たちは機能不全家庭を維持するための役割を担うようになる。
・自分の都合ではなく、家の中の雰囲気、母親の顔色、父親の機嫌などを優先して考える。
●このような人は多いだろう。特に受動的で女性的で、なんだかんだといっても家庭にとどまるようなタイプの人たちには多いのではないか。自分の経済的社会的立場を確保する点でも、必要な戦略なのだろう。たとえば自民党・官僚・大企業のもたれあいの中で、自分が生きて行くにはやはりその末端に連なるしか方法がないようなものだろう。既存の権力に対抗できない場合は、結局、権力を補強するのだ。また、対抗していたとしても、かつての社会党のように、結果的には権力の補強に手を貸していたと注釈をつけていい場合もあるだろう。反逆しているように見えて結果的には権力者の権力維持に貢献している場合が、家庭でもあるだろう。
・彼らは自分の感情を感じることができない。自分の欲望を持つことができない。自分の欲望を棚上げしたまま、他人の欲望を自己に取り入れ、それを自分の欲望のようにして生きている。それが共依存である。
・このような人たちはアルコール、薬物による酩酊に頼りやすい。それらは本来の自己、欲望をもった自己を取り戻せたような気にさせる。
●利他的生き方と共依存の生き方との違いを明確にすればよいだろう。共依存の場合には、何か強制的で支配的な側面がある。完全な利他の立場で接していますかと点検し直すことが必要だろう。「あの子のために」といいながら、「それがわたしの生きがい」となってしまっている。その息苦しさを分からないのは利他主義ではない。

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アダルト・チルドレンと家族」斎藤学学陽書房
・周囲が期待しているように振る舞おうとする。それは彼らが「見捨てれられる不安」に脅かされているからだ。
・治療を受けるようになってから余計に抑うつ的になる場合がある。治療者に見捨てられるのが恐いから、自分を病人とみなす治療者の視線に迎合する。
●診察室で、患者として扱われることの心地よさはあるだろう。
・ACは極端に自己評価の低い、自尊心の損なわれた人である。それが彼らを完璧主義に導き、その結果、かえって何もできなくなっていることが多い。
・何かをすると自分の中の完璧主義の声がその成果を批判する。だから恐くて何もできなくなる。
・他人からの批判は、たとえ暖かいものであっても、手ひどい非難のように聞こえてしまう。たたきのめす。
・尊大で誇大的な傾向もある。真の自分を知られたくないところに由来する部分もある。
・自己愛性。自分が場の中心に置かれないと、寂しくなったり、怒りが湧いてきたりする。
・孤高を気取って高慢に振る舞い、周囲を下俗、無知などと罵るのは、自分に従うものだけを周囲に集めようとするから。
●そうしておけば、自分は批判されないですむ。無批判のまま賞賛に包まれるという幻想を続けることができる。その代わり、現実の変化には対応できなくなる。地震の前に地殻に蓄えられるひずみのように、徐々に破局が用意されてゆく。