700
うつ状態の患者さんのご家族の方へ
?対応の仕方
脳の中で何かが起こっている病気です。「怠け病」や「気持ちの持ちよう」ではないので、ご本人を責めないで下さい。また、励ましの言葉や外に連れ出すことに対しても、患者さんは期待にこたえようと気をつかい、体力も消耗します。とにかくゆっくり休ませて下さい。飲みに連れていったりする人もいますが、今の時期にはお勧めできません。
心が風邪をひいたと考えてください。充分な休養が一番の治療です。風邪をひいた人は無理をしないで寝ているのが一番です。それが本人の自己治癒力をひきだすのです。うつ状態も同じです。
?自殺
命に別状はありませんし、後遺症もありません。ただ、自殺は心配です。ご家族の方は充分に気を配ってあげてください。できれば一人にしないことです。
?職場や学校
三ヶ月から六ヶ月ですっかり元にもどります。必要に応じて診断書を提出して休職や休学もできます。しかしときに患者さんは退職、退学、離婚、財産処分などを急ぐことがあります。大きな決断をしようとしていたら、「まず元気になって、それからよく相談しても遅くない」と説得しましょう。
事情を知らない人が、上のような決断について文面通りに受け取ってしまうことがあるかも知れませんので、ご家族の方が支援してあげてください。
701
ストレス脆弱性モデル
ストレスに対する反応が幻覚妄想状態である場合。これがヒステリーである場合もある。うつ状態である場合もある。
ストレスに対する反応がドーパミン過剰であり、それが幻覚妄想状態になる。→傾きの理論でよい。
傾きの理論……処理しきれない部分が幻覚妄想になる
空想産生機能障害(単純型)と照合・棄却機能障害(妄想型)
時間遅延理論……自我障害
これらの関連。整合性。
さらに集団機能。プレコックス感。
702
うつ状態を精神病型と神経症型に(つまり病態レベルで)分類すべきだろうか?意味があるか?
微少妄想は意味があるか?
このあたりすっきり整理できないか?
703
てんかん性格。
棟方志功の爆発性。躁状態とてんかんの爆発性・陽気さとの違い。棟方がねぶたで踊っている様子。祭りのさなかの爆発性と躁状態の違い。イントラ・フェストゥム。
704
十一月になって患者さんたちが調子が上がってきた。なぜか?夏が終わり、秋も深まった頃。収穫、冬眠など関係があるか?
705
ラピッドサイクラー
rapid cycler
両極性うつ病または単極性うつ病で、躁病相またはうつ病相を年に四回以上繰り返すものをいう。病相が頻発する理由は不明である。臨床的観察としては、女性に多い、甲状腺機能低下症が関連している場合がある、リチウムに反応しにくいなどがあげられる。経過が長期になるほど再発頻度は高くなる印象がある。甲状腺障害があればリチウムは使いにくいなど、薬剤調整は難しい。甲状腺ホルモンを調整するに際しては、内科的な調整レベルである80〜100%ではなくて、100〜140%のレベルをすすめている論文もあるが、循環器などの状態も勘案する必要がある。
706
アイデンティティ
identity,self identity
=同一性、自己同一性
心理的・社会的自己定義。自分が何者であるか、何に属し、社会の中でどんな役割を担っているか、などについての自覚。家族アイデンティティといえば、自分はどんな家族の一員であるかということについての意識と、そのような者として他人や社会にどのようにかかわるかについての意識。職業アイデンティティといえば、自分はどんな職業の人間であるかを意識し、さらにそのような役割の者として社会にかかわろうとする意識。性アイデンティティといえば、自分がどの性に属する人間であると考えているか、それによってどのように振る舞うのが適切かということ。
こうした個々のアイデンティティを自己(self)として統合して考えるのが自己同一性である。たとえば、自己同一性=鈴木一郎の子供+鈴木和子の夫+バッハが好き+一級建築家+ボランティア団体副代表+元ボート部+……。
亡命や国際結婚でこれまで抱いていた自己同一性を捨て、新しい自己同一性を獲得する必要に迫られることがある。これを同一性危機(identity crisis)という。子供から大人になるとき、実家から婚家に嫁ぐとき、退職して別の身分になるときなどにはややマイルドな形で起こっている。
昭和20年を境とした社会の変化は多くの人に同一性危機を強いたようである。昭和一桁後半から十年代生まれの人々が中年になってから自殺する例が数多いと報告された。敗戦に伴い価値観の大きな変化にさらされ、自己同一性危機を経験し、それに対して執着性格形成によって適応しようとし、中年に至ってうつ病を発症、その一部が自殺したとの解釈が提出されている。
自己同一性を明確に自己決定できないために社会参加が滞る場合には同一性拡散(identity diffusion)と呼ぶ。この心理的・社会的自己定義の不能は現代青年を理解する鍵であるとエリクソンが提案した。自己同一性の自己決定を延期している期間をモラトリアム(猶予期間)という。
707
自殺
警視庁によれば1995年の自殺者総数は2万2445人である。ここ数年2万2000人台である。年齢別では65歳以上の老年者の割合が多く、全体の25.4%を占めている。老年者の自殺率の高いことは先進諸国に共通している。従来日本の特徴とされてきた青年期の自殺の多発は最近はそれほどでもなく、他の年代との差は出ていない。自殺統計の数字はいろいろな都合で実数が反映されていないことがあると考えられる。
708
二重見当識
double orientation
妄想と客観的現実が矛盾しているにもかかわらず、分裂病者の内部で両立している事態を指す。たとえば、「自分は国連事務総長でとても忙しい」という妄想と、「自分は病棟で火曜日の××当番だ」という客観的現実が両立している。二重記帳(double booking)ともいう。
709
ダブルデプレッション
double depression
DSM分類で大うつ病エピソードと気分変調性障害と両方に該当するものを指す。ただし、DSM分類では「両方の診断が与えられる」と注にあり、ダブルデプレッションの言葉は使わない。二年以上続く慢性の抑うつ状態の上に、うつ病相が出現した場合である。気分変調性障害とうつ病は疾患としては別のものと考えられるが、ダブルデプレッションではそれらが同時に現れることで興味が持たれている。
710
自閉
autism
現実との生き生きとした接触を失った状態。自分の内面的主観的世界が外的客観的現実に優先している状態。現実への関心が失われた状態。現実からの遊離。精神分裂病の客観症状のひとつ。
711
無為
abulia
分裂病で現れる自発性の減退。
712
分裂病者の思考
ユングは「精神分裂病者は目覚めながら夢を見る人だ」といった。正常人も夢の中で分裂病の思考様式をもつことがある。前論理的思考、音韻連合。連想弛緩、支離滅裂。
713
ブロイラーの4A
ブロイラーは分裂病の基本症状として以下の4Aを重視した。陰性症状が分裂病の根本的な障害であるとする見解である。
Autism:自閉
Ambivalence:両価性
disturbance of Affect:感情の障害(平板化、無関心、不安定など)
loosening of Association:連想弛緩
714
強迫
・本当はやりたくないという意識はある。しかし何かに強制されてやらざるを得ない。→意志のレベルで、「誰の意志」なのか。他人がそう「強制」する。それを「自分の意志でやらざるを得ない」。
・自分にそう強いるものは何なのか?→他者の意志であろう。他者が現れていなくても、「自分の意志ではない」、それははっきりしている。
・決意については自分の意志ではない。むしろ自分はそれをやめたい。しかしやめられない。
・「しかしやめられない」というとき、レトリックではないかどうか、吟味する。
・「やってしまうのも自分」かつ「やめたいと思うのも自分」。
・実行者は自分である。いやいやではあるが自分がやっている。行為の所属は自分。
・意志決定者は自分ではないような、少なくとも薄まっている。自我異質的な部分で決定され、その決定が押しつけられているような。考えが浮かぶ、イメージが浮かぶ点では自生的である。
・自生体験は自生的であるが自我異質性がない。自動性である。能動性だけ自動性に傾いている。
・能動・自動・被動・他動の系列と、自我親和・自我異和の系列で考えればよい。
自分がしている。
勝手に……している。
……される。(他者の存在は前提されていない。)
……に……される。(他者の存在が前提されている。)
自我親和的思考・行動・感情→自我親和的motor
離人は? 能動性を失った感覚体験 sense
自我親和 自我異和
能動 1通常行動
自動 2自生体験 3強迫体験
被動 4強迫体験
他動 5させられ体験
1→5に向かう。自動の部分だけは境界領域である。
自我障害なかでも能動性障害の分類。→時間遅延理論で説明できる範囲。感覚の能動性は離人症になる。
715
破瓜型
hebephrenic type
分裂病のひとつの型。思考障害と感情の平板化が特徴である。妄想型ほど妄想の体系化は見られず、むしろ断片化が特徴である。ゆっくりと始まり慢性に進行する場合が多いといわれる。解体型(disorganized type)ともいう。
716
緊張型
catatonic type
緊張病性興奮や緊張病性昏迷が特徴である。運動面での症状が特徴で、理由もなく無目的に衝動的な動作が生じたり、逆に動きが極端に少なくなったりする。混迷状態のときにも、周囲の状況についてはよく把握していることが多い。最近はあまり見られない。なぜ少なくなったかは不明である。
717
妄想型
paranoid type
幻覚妄想状態が主体である。感情障害や自閉性は目立たないことも多く、社会生活はそれなりに保たれていることが多い。破瓜型よりは発病は遅く、人格は保持されることも多い。
718
単純型
simple type
目立った症状が少なく、極めてゆっくりと現実から遊離し、他者との交わりがなくなる。性格障害と区別しにくい。陰性症状純粋型である。
719
残遺型
residual type
=欠陥治癒型、分裂病性欠陥状態
分裂病はシュープを繰り返すごとに感情平板化、連想弛緩、自閉などが進行し固定化する。シュープ状態ではないが、元の水準での精神活動は失われている状態である。人格水準低下状態ともいう。
720
分裂病の晩年寛解
remission
分裂病の一部は人生の晩年に至れば病勢も衰えて、寛解状態となることを指す。
721
パラノイア
paranoia
=妄想症
人格は保持され、連想弛緩も感情平板化もなく、妄想だけが問題となる病的状態である。妄想は体系的で持続的、治療に抵抗する。意味の変遷としても複雑な歴史をもった語であるが、現在はこのような限定した意味に用いている。妄想という不思議な現象が純粋な形で結晶している点で興味深い。内沼にパラノイア中核論がある。
722
境界型精神分裂病
borderline schizophrenia
=偽神経症性精神分裂病
pseudoneurotic schizophrenia
神経症症状で来院し、精神分析療法を施すと精神病症状を呈するに至るもの。一部分は潜在的精神分裂病であると解釈すべき例であり、前景には神経症症状があり、背景には分裂病がある。分析療法などで一次過程(無意識過程)を賦活すると、本来の分裂病症状が出現する。
また一部分は境界型性格障害と解釈すべき例である。
723
接枝分裂病
graft schizophrenia
精神発達遅滞を基盤として精神分裂病状態となった場合をいう。
724
パラノイア (純粋妄想症状)
妄想型分裂病
破瓜型分裂病
単純型分裂病(純粋陰性症状)
725
顕微鏡で組織標本をのぞいたとき、はじめは分からない。形がくっきり見えない。勉強すると頭の中に図式ができて、突然くっきり見えるようになる。これがゲシュタルト。
視覚以外でも言える。パターン認識。
精神症状も勉強するとある時くっきりと見えてくる。症例報告を読んで、頭の中でくっきりピントが合う。
726
なぜ妄想型が中年になってから多くなるのか?
説明?
妄想産出力は弱まるだろう。照合・棄却のチェック能力は強くなるだろう。両者の兼ね合いの問題であるが?
727
時間遅延理論で、内部情報が外部情報よりも早いから、情報の照合と棄却が起こる。
遅れると一次過程は訂正されずそのまま出てゆく。そこで幻覚妄想が成立する。
728
時間遅延→自己モニタリング・照合・棄却ができない→他者推定ができない→集団機能の異常
729
モニタリングについて
?行動はずれていない。モニタリングができない。→外面的な行動は崩れていない。自己モニタリングができないので、他者について推定ができない。集団機能が失われる。→分裂病型
?行動そのものがずれている。自己モニタリングもできないので、行動訂正ができない。→性格障害型・分裂病型・境界型人格障害
?行動がずれている。自己モニタリングもできる。しかし内部情報がずれていて、訂正の必要を感じていない。(利益の階層がずれている。利益の天秤がずれている。)→典型的な性格障害。あるいは偏った性格。
730
若年者=妄想産生力(大)+チェック能力(小)→恋愛、青春の冒険
731
病理が表現されるとき、行動化する場合と、内面化される場合と。分けているのは何か?
732
若年の場合→産生力低下したら→破瓜型(単純型)・純粋陰性症状
中年の場合→チェック能力低下したら→妄想型(パラノイア)・純粋陽性(妄想)症状
晩年寛解とは何か?生産力低下と関係するか?
733
シュープ
病勢増悪
734
絵画において、
描くときのゲシュタルト喪失と
見るときのゲシュタルト喪失が
別々ではないかとの疑い。
このことを掘り下げられないか?
735
年をとるごとにREM期がだんだん減る。→妄想産生力と比例する。
736
妄想産生力=空想力、想像力、創造力、夢見る力
チェック力=照合・棄却能力
妄想産生力 チェック力 状態
大 大 ?多産的だが現実的・創造的・夢を見ながら現実的
小 大 抑圧強い・単純型分裂病
大 小 ?一次過程の突出・妄想型・子供時代
小 小 破瓜型
年をとるにつれて、妄想産生力は減少、チェック力は増大
総合すると、年をとるにつれて、?から?に向かう。
薬は妄想産生力を減少させる。
737
736の図
738
絵画のH型とP型の対比。
739
プレコックス感
臭さは日本語で、オランダ語は色彩と言う。これは日本人の特性ではないかと言っているが、むしろ日本語の特性である。心が先で言葉が後というだけではない。言葉が偶然選ばれて、それを習慣として受け入れていることが多いのではないか。
740
離人感は動いているはずである。感覚は「差異」をとらえるのである。離人も長く続いて固定していれば、違和感もなくなるはずである。従って、苦しいからには揺れ動いているはずである。離人症の場合に「物体が目に飛び込んでくる」「ものが急に大きく見える」などと訴えることがある。このように揺れ動いているはずではないか?
揺れていることが分からないのは何か理由があるのではないか?
741
医者だけが分かるサインが大切。
内科医でも外科医でも、医者だけが分かる専門知識がある。レントゲン、特殊検査。また聴診でも打診でもそうだ。患者にも分かるというものではない。
ところが精神科の場合にはそういったもの(患者を有無を言わさずに納得させるもの)が欠けている。問診は患者の言葉に頼る。眠れない、落ち着かない、‥‥患者の言葉に頼る限り、全部患者が情報をコントロールできる。医者にだけ分かる秘密がない。
その場合、たとえば絵画などが利用できそうである。しかし患者が「それで何が分かるんですか、どんな風に判定するんですか?」などと尋ねる。レントゲンのような分かりにくさがない。医者にだけ分かるサインが内科には沢山あるのに、精神科には少ないように思う。そして精神科にも医者にだけ分かるもの、それは医者にだけ分かるものだと患者にも納得できるものが必要だと思う。
742
Mセルと免疫、適応状態、
Aセルは固い殻を作る蟹のようなもの。現状を維持しようとする→現在の適応はよい。変化の必要を認めない。
執着器質は固い殻をかぶっているようなもの→しかしだからこそ機敏な変化はできない
適応良好→変化の必要なし→免疫良好→変化なし
不適応 →変化の必要あり→免疫不全→変化
743
能動性が失われ、被動〜他動になれば、自我異質的になるのは当然とも思われる。いや当然ではない。内容は関係ないはずである。→自我親和的な内容であれば、能動性の喪失を特に悩まないかも知れない。ある程度自我異質的であるからこそ、悩みも生まれるのではないか?
つまり、自我親和的かつ能動性喪失状態は存在するが、結局問題にならない。能動感喪失は意識されないで終わる可能性もある。
自我異質的な内容が能動性を保つことはあるか?→その場合には自我検閲機能が働いて、棄却するので、意識にのぼらない。
自我異質的な内容が被動的・他動的に出現する→自我検閲機能が働いていない。それは時間が早いので、すり抜けて、一次機能が突出する。夢、妄想が突出する。
自我異質的とは
内容に関すること・一次過程の突出→意識は検閲する。
時間遅延→検閲できない→一次過程の突出
非・自意識=他意識は一次過程(夢の原理・空想の原理)に従う
このようにして、意識・無意識・検閲機能と時間遅延を組み合わせることができる。
745
分裂病に関する三理論を組み合わせる。
746
分裂病質人格障害
schizoid personality disorder
内気、社会生活から身を引く。
747
分裂病型人格障害
schizotypal personality disorder
分裂病質人格障害の上に、数時間から数日に及ぶ一過性の精神分裂病的な思考障害や感情平板化が加わったもの。
748
妄想性人格障害
paranoid personality disorder
社会生活で非常に傷つけられやすい。猜疑的、防御的な性格。
749
境界性人格障害
衝動性のコントロールが不十分で自殺企図、性行動、ギャンブルなどの衝動行為に走りやすく、感情が不安定である。部分的に精神病レベルの病態水準を呈する。
750
社会復帰療法
急性期が終わった後で、自閉性を打破し、社会との接触を回復するために社会復帰療法を行う。院内作業、レクリエーション療法、生活療法、デイケア、ナイトケア、コミュニティケアなど。
751
分裂病の予後に影響を与える因子
いつとはなしに発病して陰性症状なかでも思考障害が中心、分裂気質でシュープを繰り返すものは予後不良である。急性発病で幻覚妄想状態が中心、非分裂気質のものは予後良好である。→表(笠原、116)
752
寛解
remission
分裂病の場合には治癒とは言っても再発の可能性を含んでいる。従って、治癒と言わず寛解と呼ぶことがある。
753
社会寛解
social remission
少々の症状が残遺していても、社会生活が可能なときをいう。社会生活を継続することは何よりの治療である。
754
思春期と妄想
人間はいつでも発情期=いつでも創造的=空想産出的
動物は脳内で試行錯誤しないから、空想産生的でなくてよい。
妄想的になるから恋愛もできるし、新しいことも考えつく。
発情状態を持続することは空想産出状態に固定することであり、利益がある。
755
?まず、S→脳→R
?次に、それをモニターする部分。ここで時間先取り・遅延が生じ、自由意志の錯覚が生じる。
?自己状態のモニターが社会性機能の発生につながる
内的感情体験のモニター
756
?仮説生成
↓
?照合・棄却 ←?現実世界の像(reference data)
?の障害=単純型(陰性症状・精神運動貧困)
?の障害=破瓜型(時間遅延型・自我障害型・一次過程の突出・まとまりがない)
?の障害=妄想型(体系的・まちがった参照世界像をもっている)
757
執着の意味
横着、愛着、などと同じで、着は著の意味で様子、さま。
(自由国民社p.573)
758
几帳面
平安時代の几帳の両側の柱をきれいに仕上げていたことから。
(自由国民社p.579)
759
バリント……基底欠損
フーバー……純粋欠陥
760
甘いレモン
本当は価値を否定したい・不本意な状況について、自分に納得させるために、この状況も思ったほどは悪くないと考えるメカニズム。レモンは酸っぱいと思ったが、思ったよりも甘かったと自分を納得させる。
761
恐怖症と妄想
外部現実についての訂正不可能な誤った確信は妄想であるが、「内部現実」に関しての訂正不可能な誤った確信については何と呼んでいるだろうか。たとえば「私は胃ガンだ」と言うのなら、調査の結果「心気妄想または疾病妄想」などと言える。しかしたとえば「私は電車が恐い」と言う場合にはどうなるだろうか。
電車の性質について何か言うのならば、真偽を判定することもできる。しかし、電車が自分の内に呼び起こす反応について語っている。
本当に不安反応が起きているかどうか、循環器系統をはじめとする身体の検査によって確認することはできる。
「不安・恐怖」ならば検査の方法も少しはあるが、「苦手」程度のレベルでは何ができるだろうか?
自分の心の中について何かを主張する場合には客観的な検証は拒否されるのではないか?
自分の心の状態について妄想を抱いているときには、他人はそれを妄想と言うことはできない。「頭を冷やせ」と言えるだけである。たとえば、恋愛の場合、また、宗教的確信の場合がそうである。
「自分は愛している」「自分は信じている」と言うことにたいして、他人は「妄想」と判定することはできない。
内部状態についての言明で、「私は‥‥が恐い」と言う場合、これも検証ではない性質のものである。本当に恐いかも知れない。しかしそれは妄想かも知れない。恐いと決めつけている妄想があるから、予期不安が起きて、回避行動に至るかも知れない。
恐怖症とパニック障害の類似点がある。
恐怖症と妄想の類似点がある。
恐怖症と強迫症の類似点がある。
762-1
現実と照合すると言うけれど、それは結局「集団で共有しているもの」に統一するということでしかないように思われる。
現実という場合に意味の多重性があり、?科学的真実、?集団的合意事項の二種がある。
未開人が考えていること。子供が考えていること。大人が考えていること。このように並べてくると、結局、大きな集団の一員として生活するために、個人的な特殊な考えは一応伏せておいて、集団の大多数の合意に同調することが必要となるのではないか。
集団の合意事項に自分を合わせることは「照合・棄却機能」である。ここのところの障害が集団機能の障害となる。自分の中からでてくる個人的な体系を捨てることができない場合である。
集団がある程度大きくなり、教育が普及し、人間は共通に分かり合えるものであるという前提があってはじめて、分裂病も成立する。共通規範が成立するから、同時にその規範を内在化する機能の障害が成立する。
近代社会と分裂病の同時成立である。
照合・棄却機能の純粋障害は「さまざまな妄想が体系化されずに出現する」ものである。破瓜型はこれに近い。一次過程・無意識の突出である。
?妄想型で「単一の妄想が体系化される」事態は?うまく説明できない。照合・棄却機能に一部分穴があく印象である。
空想産出機能の純粋障害は単純型分裂病である。破瓜型はこれにも近いが純粋型ではない。
連合弛緩・支離滅裂型の思考障害と自閉と両価感情は照合・棄却機能の障害である。
感情鈍磨、無為(意欲低下)は空想産出機能の障害である。
空想産出機能の障害と照合・棄却機能の障害は結局は相伴うことが多い。なぜか?
762-2
照合・棄却ができないで苦しんでいる間に、空想産出を制限するようになると、目的論的に考えるか?
しかしこのようなことが起こる脳のメカニズムはどう考えるか。
照合・棄却機能が壊れていると空想産出能力に障害が及ぶ。ここのメカニズムをどう考えるか。ドーパミン系など。→シュープを繰り返すと人格水準低下する。
シュープは照合・棄却機能のブレイクダウンである。
人格水準低下は空想産出機能の低下である。
強迫的行為は創造性を必要としない。空想産出機能低下に対する適応行動である。防衛である。
分裂病で強迫症が防衛になると解釈される理由。
ドーパミンは空想産出機能に関係している。ドーパミン遮断薬は空想産出を抑制する。逆にドーパミン過剰は空想過剰であるが、照合・棄却機能がしっかりしていれば、問題はないだろう。潜在的な分裂病が、ドーパミン増加刺激(薬剤など)によって顕在性の幻覚妄想状態になるのは、もともと「照合・棄却機能が脆弱」なところに、許容範囲を超えた「ドーパミン増大・空想過剰」が与えられるからだろう。
ストレス脆弱性モデルに接続できる。
しかし本質的には照合・棄却機能を再建することが治療である。
ブレーキが壊れたからエンジンを止める、それでは走らなくなる。
763
妄想型は中年に起こる。
空想産出力はやや低下している。その状態で、照合・棄却機能に障害が発生すれば、「さまざまな空想」ではなく、「単一の空想」が発生する。
若年でも、もともと空想産出力の弱い場合には妄想型になる。
しかしこれでは照合・棄却機能の障害がシュープとして発現し、次第に空想産出力を低下させていった場合に、どの時点かで妄想型の形をとることになるのではないか?そこが説明できない。
「空想産出力低下+照合・棄却能力の部分的(穴)低下=妄想型」という印象。しかし?
764
ストレス・ドーパミン直線で、傾きに相当するのが、空想産出力である。
わずかなストレスでもたくさんのドーパミンを出力するのが空想産出力大の場合である。
この線で、ストレス・ドーパミン直線と接続できる。
765
照合・棄却機能の実体は時間先取り機構である。
766
清く正しく生きて田園調布に家を建てられるだろうか?
767
空想産生機能→照合・棄却機能→内省化 =体験化
通常の行動=行動化
棄却→抑圧
神経症化 =神経症
自律神経化=心身症
体性神経化=転換ヒステリー
「感覚の能動性の消失」→詳しく言うと、「感覚体験の内省化の段階で照合・棄却の障害がある。」
感覚は体験となるときに内省化する。そのときに照合・棄却が働く。フィルターはここにある。
768
脆弱性→照合・棄却機能の弱さ
しかし空想産生機能が低下すれば妄想も起こらない→年をとると落ち着く
空想産生機能→ストレスに反応してドーパミンが増加することに関係。
769
右脳と左脳は似たものが二つあって、私の仮説にはちょうどよい舞台である。しかし‥‥?まともにそう考えてよいものかどうか?
770
仮説産生機能障害
照合機能障害
棄却機能障害
照合と棄却は分離して考えられるのだろうか?
771
比較言語学
・「気まぐれ」→意味の分化を探る。ドイツ語と日本語とラテン語。また、日本語の変遷。
・たとえば椅子の意味の分化‥‥chair,stool
772
履歴現象について‥‥どう解釈できるか?
773
不安障害
・不安発作(panic)とは。‥‥たとえばあなたが道を歩いていたら、大きな犬が向こうから歩いてきたとする。近づくにつれて心臓はどきどきする、息は詰まりそうになる、冷や汗がでる、口は乾く、だんだん血圧が上がるといった変化が起こる。飼い主もいるし、鎖もついているから噛みつかれることはないと思うが恐くてたまらない。一番近づいたときに犬は大きな声で「ワン!」と吠えた。何かにガツン!と殴られたような衝撃で、息が止まるかと思った。鳥肌が立った。脈拍は頂点に達し、失禁しそうになる。足がすくんで動かない。犬が通り過ぎてからも体ががたがた震えている。本当に死ぬかと思った。しばらくたってようやく歩けるようになって家に帰った。歩いているあいだめまいがした。「ただいま」も言えなかった。声がでなかった。鏡を見ると顔面蒼白だった。エビアンを一杯飲んでやや落ち着いた。強く握った手のひらは冷たくなって汗がへばりついていた。
このような事件が不安発作である。二度と経験したくないものだ。犬に吠えられるのも嫌だが、不安発作はもっと嫌なものだ。原因が分からないし、強度も強く質的にやや深い。
・このような激烈な体験であるから、また起こったらどうしようかと持続的な不安(anxiety)に支配されるようになる。panicよりは弱い。予期不安という。二度と同じ目にあいたくないと考えて危険を回避するために回避行動をとるようになる。
・パニック障害はこのような強烈なパニック発作があるもの。全般性不安障害は、予期不安が延長したような状態で、持続的な不安が特徴である。
774
解剖学の原理を考える人と実際の数字やメカニズムを検証しようとする人がいる。
科学の探究は具体的な事実とそれらを説明する概念とが両輪となっている。たとえば遺伝子科学でいえば、DNA分子が発見されて、それが遺伝情報の実体であるということになれば、あとの具体的な遺伝子配列に関しては力仕事で退屈な仕事である。退屈というのは、実際にはスマートな技術の開発や頭のいい推論がいくつもあり、探求はエキサイティングであるが、問題自体は局所的なものであるということだ。こうした基礎的な部分での確実な事実の集積が世界観の変革を生むのであるから、大切である。そのことは百も承知で認めつつ、なおくだらないという気持ちを捨てられない。はやいか遅いかの違いで、どうせ誰かが到達するのだ。どうせ誰かができることを自分もやるのは退屈である。
そのようなことに人生の時間を費やすことの愚かしさを忘れられないのである。どうせうまい仕組みがあってちょうど良くことは進んでいるのだろう。進化論のいろいろな疑問も、遺伝子の特性から発していることが多くあるだろう。そのあたりも自動的に副産物として明らかになってくるだろう。期待してはいる。
結局感覚を喜ばせることができるかどうかなのだろう。
「生きることなんか召使いに任せておけ」とまでは言わないが、私としては結果待ちである。酸っぱいブドウの論理と言われるかも知れない。そうかも知れない。
たとえば円周率の計算のようなものだ。どうせ何かの数字が並んでいることは確実で、それが何であっても大差はない。しかしそれを具体的に明らかにすることは意味がある。意味があるがやりたくはない。計算法を考えることさえあまり気乗りはしない。どうせ3と4の間の数なのだ。ただ、それがいつまでたっても終わらない数であるということには深く感銘する。すごいことだ。どうしてそんなことが分かったのだろう。
具体的事実、さらにその細部にこだわるのは科学のよい習慣である。百桁目が2なのか3なのかにこだわることは大切である。すぐに世界観や意味について論じるのはよい習慣ではない。しかしそれは好みの問題で、科学者の中の数パーセントはそのような大局的なことに興味を持ってもよいだろう。
病気の原因となれば、やはり具体的に分かりたいと思う。わかればそこから治療の道が開けるからだ。それは素晴らしいことだ。
775
フロイトが抑圧といい、検閲といったものの実体が時間先取り効果である。
検閲が弱い場合にはすり抜ける。変形はどのようにして起こるか?
変形されたものが検閲をすり抜けると考える。検閲部分で変形されるのではない。
776
防衛機制といっても、「機制」の意味ははっきりしない。「メカニズム」の翻訳語である。そのつもりで置き換えて読めばよい。
777
ストレスとは?
不適応信号である。
ではどう対処するか?いろいろな経路がある。
・不安反応→GABA系脆弱性
・妄想反応→ドーパミン系脆弱性
・外部現実変更→外部環境に働きかける
・内部解釈変更→自己内部に働きかける(防衛機制)
ドーパミン系は新しい系で、古いGABA系の上に乗って成立しているのではないか。その逆か?GABA系が抑制性にドーパミン系を調整しているという点から見れば、ドーパミン系の方が古い系で、されを後で上から抑制しているのがGABA系と見た方がよいか。
古いギャバ、ドーパ、新しいギャバなどと層的に考えた方がよいかも知れない。
778
アゴラフォビアについて
広場恐怖と訳しても空間恐怖と訳してもどうせ不十分である。勉強していない人には分からない。キツネうどんと言いながら、油揚げが乗っている。これはまあ、キツネと油揚げの因縁を知ればよい。タヌキそばについては何のいわれがあるものか知らないが、とにかくタヌキはのっていない。カモ南蛮とは言っても、のっているのは鴨ではなくて鶏のことが多い。かっぱはきゅうりが好きなので、きゅうりを巻いたものをかっぱ巻と言う。
アゴラは名前を提案したときには、街に行くことが主な意味だったようで(ウェストファル)、ギリシャ語のアゴラはマーケットの意味だった。しかし次第に病態の研究が進むと、街に行くことというよりは、特定の苦手な場所、自分が危険と感じる区域、さらには場所の限定も離れて、苦手な状況(一人になることとか、家から離れているとか)までを含むようになった。アゴラに代わるいい名前が提案できずに、アゴラのままである。
それを日本語に移すときに、また困難があった。アゴラと広場は明らかに意味の範囲が異なる。むしろ、ごく僅かしか重なっていないと言っていい。日本語の広場は草野球ができるところ、狭くても三角ベース程度はできるところである。そんなところが恐いなら行かなければいいだけである。大人は広場に行かなくても暮らせるものだ。空間恐怖でも事情は変わらない。真に意味するところとアゴラは意味がずれていて、日本語にするときにさらに意味がずれている。これでは初心者は意味が分からない。それどころか、そのままにして放っておいている人たちを信用しなくなるのではないか。
しかしながら、いい言葉も見つからない。こんなときは中国でどのような漢字に置き換えているか調べてみるのもよいだろう。
「不安発作が急に襲ってきたときに助けがないか逃げられないような場所や状況」恐怖である。ものが恐いのではなくて状況が恐いのである。対人恐怖の場合にも、人が恐いというよりは対人場面が恐いのであり、その点ではanthrophobiaよりもsocial phobiaが適切である。
social phobiaは社会恐怖と訳されることがあり、通常の日本語の感覚では受け入れがたい。対人場面恐怖でよいだろう。
779
内省化促進療法の開発
自己主張訓練など必要ない。欠けているのは超自我と内省化である。
自分の行動と感情体験を脳の内部で予行演習する(シミュレート)習慣を作ること。損をするとしても、頭の中だけで済む。
780
一次過程・無意識界からの圧力(ドーパミン圧力)に対抗できるだけの強さを持った照合機能が必要である。
もともと生まれ持った照合・棄却機能の強さと、ドーパミン量の問題である。
ドーパミンレセプターの増大。過敏性の成立。履歴現象。
薬は直線の傾きを小さくする。レセプターは二次的に増大する。レセプターが増えると直線の傾きは大きくなる。
781
妄想は一種類なんだろうか?
知恵遅れと妄想の決定的な相違はどこにあるのだろうか?
痴呆の場合の妄想と分裂病の場合の妄想はどのように違うのか。
うつ病で本当に妄想が起こるのだろうか?微小妄想は妄想と言うべきだろうか?
妄想にどんな種類があるのだろうか?
メカニズムとして。
訂正不可能のメカニズム。
照合不全。
棄却不全。→間違っていると分かっているのに棄却できない。→強迫症!恐怖症!
しかし強迫症の場合には「選択的な機能不全」が起こっているようである。
全般に渡ってではない。繰り返し起こるのはなぜか?→リカレントサイクルを形成している?心臓でのリカレント症候群。
脳でのリカレント症候群。神経系ならば当然起こりうる機能不全である。
心臓の伝達系の機能不全と脳の場合とを比較してみるのも有用である。
照合作業は一瞬のうちに、腱反射のように終わるのだろうか?多分、一種の反射である。
782
幻覚体験の違い
?「ああまた変なものが見えています。人の形に似ているけど、赤いみたいな色で‥‥何でしょうね」
?「人がいます、私に用があるみたい、‥‥」
体験と距離がとれている。
妄想に対する批判力が保たれている。
自我の中心が巻き込まれる。
「発生するのは末梢の感覚」「発生するのは中枢の体験」
だから、幻覚発生に関して、「知覚経路のどこかで誤信号が混入した」とするタイプの説は、?タイプの体験しか説明しない。
?は中心部分で誤信号が発生している印象である。
しかしながら、妄想知覚の例もあるように、体験が二節性になっている場合も考慮する必要がある。パレイドリアの原理。過剰相貌化。
783
酸っぱいブドウで防衛している人の治療。
「本当はブドウが食べたいんだ」と言わせる。
「その人に適切なブドウを設定してあげる」→目標の再設定。
784
「待ち伏せ」と「陰口」‥‥性格が悪い
785
患者さんにもある程度分かりやすくて、イメージが描けて、それなりに演繹が可能であること。説得力があること。
786
プレコックス感→図
普通ならばわき起こるはずの感情の欠如。
人格的影響と転移・逆転移は同じか否か?
むしろロゴテラピーや自己一致などの次元での影響。生きる態度の次元。
787
カウンセラー
自分は何を扱うのかを限定するセンスが必要。患者との間で何が起こっているのかを見るセンスが必要。愛があればすべては解決するとの信念は間違いである。
788
治療構造は人格構造になる
境界型人格障害は枠の不全であり、人格構造の不全である。
789
精神医学において確実なものは何があるのだろうか。
790
強迫行為は
照合・棄却機能の補強・代償であると考えられないか?反応であると考えられないか?
791
不安障害
パニック 外部刺激なし……パニック障害
外部刺激あり……恐怖症
パニックなし 対象明確しかし釣り合わない不安……全般性不安障害
単一ではない(さまざまなイベントで)
apprehensive expectations
(不安に思う理由はある、しかし釣り合わない)
792
強迫が自我異質的なのは、出てきてしまうから異質的、抑圧できれば知らなくて済むという事情ではないか。
つまり、抑圧し損ねたから異質的である。
親和的ならば抑圧しないで意識している。
793
図に書こうとするから、困難がある。文章だけで済まそうとすればごまかせるかも知れない。しかしそれではごまかしである。
結局、時間装置が、そのまま抑圧装置となっている。そして能動性の障害が発生する場となっている。
794
強迫の反復の理由が説明できない。
795
モラトリアムはさなぎの状態。さなぎのままで年をとる人がいる。
796
音によるロールシャッハ。
試してみてもいいはず。
797
純粋欠陥
reiner Defekt
G.Huberによる。純粋欠陥症候群、純粋残遺(reine Residuen)、純粋欠乏(reine Defizienz)。全体的な心的エネルギーの低下。心気症、体感異常、発動性欠乏、心身の易疲労性、決断不能、思考力と集中力の減弱、感情喪失の感情、刺激性亢進、興奮性、抑制欠如。一方、精神分裂病に特有の非疎通性、感情移入不能性、了解不能性、冷たい孤立性、プレコックス感、異質性は欠如する。患者は自分が変化したことを意識し、活動力の喪失に悩む。現象像の特徴はその非特異性である。
コンラートの「エネルギー・ポテンシャル減少(Reduktion des energetischen Potentials)」、ヤンツァーリクの「力動の空虚化(dynamische Entleerung)」は類似の概念である。(事典から・中谷)
空想生成力減少(→単純型)に近い考え方。
798
基底欠損
basic fault,Gruntsto”rung
M.Balintによる。「エディプス葛藤領域」が三者関係の葛藤力動形態をとるのに対して、「基底欠損領域」は排他的二者関係、マインドの歪み・欠損に発する力動関係である。両者は転移の型と治療技法が異なる。さらに一人関係を特徴とする「創造領域」を考え、マインドはこれらの三領域からなるとした。
障害は葛藤ではなくて欠損であるから、支持的・補完的アプローチが正しい。境界例の理解と治療に役立つ。
原初は「基底欠損領域」で、分化すれば「エディプス水準」、単純化すれば「創造水準」である。(事典から・中井)
799
課題集団と基底的想定集団
work group and basic assumption group
ビオンによる。課題集団は、集団の現実的活動の側面であり、期待想定集団は集団の無意識的・潜在的側面である。基底的想定集団は三種に分けられる。?闘争・逃避集団……敵が集団の内部または外部にいて、その敵とのあいだに闘争または逃避が行われるという想定があるかのように動く場合。?依存集団……ある対象に依存していることであらゆる危険から保護されていると想定しているかのように動く場合。?対集団……一対一のペアを作り上げ、その中に閉じこもることですべての困難を回避してしまえると想定しているかのように動く場合。
これらはクラインによって解明された精神病的不安、すなわち?妄想的不安、?抑うつ的不安、?躁的防衛、にそれぞれ対応するものとビオンは考える。(事典から・岩崎)
800
単純型
simple schizophrenia
連想障害と感情障害が主。幻覚妄想を欠く。潜行性で緩慢な経過。やがて人格の枯渇化、貧困化を来す。浅薄な情緒、冷淡、無情、無気力。破瓜病のような痴呆化には至らない。浮浪者、売春婦、非行者として暮らすこともある。類縁疾患としてカールバウムの類破瓜病がある。