バッハ

2005-7月17日
バッハ
この25年間、聴いてきた音楽の中心はバッハだったと思う。鍵盤曲は平均率、ゴルトベルク、イギリス組曲フランス組曲、パルティータ、そしてコラール変奏曲。147番はいろいろな場面で心に残っている。バイオリン、チェロ、フルートもバッハを聴いた。いろいろな演奏家がいて、それぞれにその人なりの頂点の演奏を聴かせてくれているように思う。
LPに替わってCDというものが発売された当時、わたしの周りはみんなそうだったが、わたしもグレン・グールドのゴルトベルクを雑音なしの澄み切った音で聴きたかった。そのためにソニーのCD再生機を買った。一番最初に買ったCDはグールドのゴルトベルクで、そのあとCBSソニーのグールドのバッハシリーズをそろえて、繰り返し聞いた。繰り返しても劣化しない、すばらしい製品だった。この頃からソニーを応援していると思う。

平均率はグールドが好きだけれど、いろんな人がそれぞれにいい。たとえばリヒテルの演奏。キース・ジャレットもよい。この人の演奏はどれも好きだ。
ゴルトベルクはこれもグールドが好きだけれど、最近はシフやペライアの演奏をよく聴いた。キース・ジャレットも好きだ。読書の集中力を高めてくれると思う。
キース・ジャレットはケルン・コンサートとかパリ・コンサートとか、愛と死の幻想とか、いいのだけれど、やはり結局、バッハ演奏が好きだ。フランス組曲など、よい演奏だ。
グルダもときどき聴くといい。わたしはベートーベンのピアノコンチェルトの3番がなぜか好きなのだけれど、グールドもグルダもいいと思う。聴く時にはたいていアシュケナージを好むけれど。
マリア・ジョアン・ピリスモーツァルトシューマン(たとえば子供の情景)のほうがいいと思うが、フランス組曲の演奏があり、とても良い。ブレンデルはあまり聴かない。フィツシャーもあるが、あまり聴かない。
アラウのパルティータ集があり、これもなぜか捨てがたい。リパッティはときどき聴く。ロスやヴルヒャ、コープマンなどチェンバロ演奏は最近聴いていない。ピアノの音が好きだ。キース・ジャレットチェンバロ演奏は別。ワイセンベルクブーニンホロビッツなど、もちろんそれぞれに良い。
最近よく聴くのはRosalyn Tureckの演奏だ。何となく聞きやすい。
日本人では園田が有名で評価も高い。わたしはあまり聴かない。熊本マリもCDを出している。昔読んだ話。間違っているかもしれない。熊本マリはグールドに教えを請いたくて、彼の住むカナダの家まで出かけた。玄関のベルを押して待っていると、グールドが出てきた。何しろ彼は犬と二人で暮らしているので、客の対応も自分がするしかなかったらしい。熊本は「自分はピアニストで、この先のことで迷っている。アドバイスが欲しい」といった。グールドは玄関の立ち話で追い返そうと思ったらしく、「自分を信じるしかないだろう」と素っ気なくいって、扉を閉めたそうだ。
すばらしい話だ。ピアニスト同士ならこれでいい。最初は熊本マリのCDはあまり聴かなかったが、最近では面白く聴いている。わたしが変わってきたのだ。「自分を信じなさい」それしかないでないか。そしてそれだけしか言わないグールドという人が好きだ。
グールドには著作もあり翻訳もあるがわたしは良く理解していない。

無伴奏バイオリンは、これもそれぞれによい。シュロモ・ミンツをよく聴いた。前橋さんも堀込さんも良いし、韓国のチョン・キョンファもすばらしい。パールマンも何度も聴いた。ハイフェッツは少し古い。クレーメルはなんだか独自。シゲティやスーク、ルカもあるが、あまり聴かない。ムローバは何度も聴いた。いいものと思う。わたしは最初友人の薦めでグリューミオを繰り返し聞いた。まだCDが発売されていない頃だ。最近ではRachel Rogersの演奏を聴く頻度が高い。何となく聞きやすい。

無伴奏チェロはマイスキーがやはり好きだ。シュタルケルも良い。ロストロポービッチは、個人的にあまり聴かない。カザルスも、いいものと思うが、あまり聴かない。ヨーヨーマは聴き始めるとずっと聴いている。とても良い。長谷川陽子もいい。今井信子ビオラで弾いていて、これもとても良い。
チェロ組曲はギターで演奏する人も多く、どれもすばらしい。イエペスセゴビアが大御所だけれど、山下和仁もよいしセルシェルも良い。

フルートはランパル、ニコレともによい。オルガンはあまり聴かない。バッハにとっては大切なジャンルであったに違いないが。音のすき間がないのはなんだか好まない。

受難曲はもちろんカール・リヒターで聴くが、CD版が二種類手元にあり、録音密度が違うらしい。家の再生機では特に変化はないと思う。カラヤンヨッフムも良い。ブリュッヘンや最近の鈴木もよいものと思う。ショルティもたまに聞いてみるとよい。手元にはフレーミヒの演奏もあるのだが、興味がなくてあまり聞いていない。
ヘルタ・テッパーやディスカウの全盛の頃の録音だから、やはりリヒター版が好ましいし、何しろこの音楽で長い間生きてきたのだから、やはり聴いている。