NHK「ターシャ・テューダー 四季の庭 喜びは創りだすもの」2005年を見た。米国の国民的絵本作家ターシャ・テューダーは90歳である。23歳で結婚、最近の50年間はひとり暮らしだ。米国バーモント州の家に住み、30万坪、東京ドーム20倍の庭を営む。そのNatural Gardenはgardeningを好む人のあこがれだという。質素に心豊かに暮らし、生活は祈りと感謝に満ちている。彼女の描く絵本は100冊を超え、米国開拓者が入植した当時の味わいに満ちている。彼女はその当時に近い生活を続けている。雑草も好きという。「庭の設計はしない。ただ好きな花をいろいろ植えていくだけ。でも一応の形ができるまでは最低でも12年はかかる」と語る。ナレーションは「もちろん勉強を重ねて選び抜かれた花である」と解説していた。「はじめての植物を植えてみる時は、三カ所に植えて試してみる。一番適した場所を知るため」とのこと。光、水、風などの適合性を見るのだろう。Natural Selectionのprocessを人間の手で促進しているわけだ。野の花が咲き乱れる草原は「人間と自然との調和」を実現している。「Formal garden かたくるしい庭」は好きではないという。
花々の色の微妙さは興味が尽きない。光の当たり具合でも感じが変わる。知り合いの素人カメラマンは、朝日を浴びる小さな花を写すために機材を抱えて朝の一番電車に乗る。
番組では和名と英語名が紹介されている。名前は興味深い。
ある一群の病気で出現する「ヘリオトロープ疹」というものがある。現在ではヘリオトロープとは何かを改めて学ばなければならない。しかしこの言葉が作られた当時は、ヘリオトロープが身近にあり、ヘリオトロープのような発疹ということで分かりやすかったのだろう。Garden Heliotropeはカノコソウだ。両側あるいは片側の眼瞼部の紫紅色の腫れぼったい皮疹をヘリオトロープ疹と呼び、膠原病の一部を疑う。夏目漱石の「三四郎」にヘリオトロープの香水の話が出てくる。
アツモリソウはLady’s Slipperだ。朝日新聞の一面にある花の写真と短い解説が好評なのも、人々の花に対する愛を思わせて好ましい。
思い出したので、銀色夏生「庭ができました」角川文庫をとりだしてながめてみた。完成するまで1年以上かかり、そのあとはのんきにのび放題にしているとのことだ。Natural Gardenに近い部分も多くある。
庭はいいものだ。一種類の植物を三カ所に植えて違いが分かるほどの広さがあればなお望ましい。
そういえば、動物行動学者コンラート・ローレンツは水槽の中に自然を再現する方法を紹介していた。水槽の中に実現するNatural Gardenだろうと思う。