成年後見制度(adult guardianship)

成年後見制度(adult guardianship)

 成年後見制度とは、高齢者認知症患者(アルツハイマー型、脳血管型など)、知的障害者精神障害者などの場合において、判断力が充分でない利用者が、たとえば不利な契約を結んで財産的不利益を被ることなどのないように、「保護者」が判断能力を補い、利用者の権利を擁護することを目的とした制度である。成年後見制度は法定後見制度と任意後見制度とから成り立っている。従来の「禁治産・準禁治産」を改めたものが「法定後見制度」であり、補助、保佐、後見がある。準禁治産が保佐、禁治産が後見にあたる。一方、自分自身の意思であらかじめ後見人を専任することができる制度を「任意後見制度」としている。
 基本理念は「保護偏重」ではなく、「自立優先」である。「自己決定の尊重」「残存能力の活用」「ノーマライゼーション」を目指しつつ、同時に旧来の「本人の保護」も目指している。

以前の制度と問題点

 明治31年に発足した禁治産・準禁治産制度の問題点として、戸籍に禁治産・準禁治産と記載され、選挙権も剥奪されるなど、人権上の配慮が必要ではないかと指摘されていたことがあげられる。また精神鑑定に多大な時間・費用を要していたことも問題であった。現実には本人の利益を守るためではなくて、家族間の財産争いの道具とされた場合があった。

新しい制度の要点

 申し立てできるのは、利用者本人、配偶者、四親等内の親族である。申し立て時に、補助については本人承諾が必要、保佐・後見については本人承諾の必要はない。配偶者、親族なく、必要と認める時は市町村長が申し立てを行うことができる。
 申し立て時には申立書、戸籍謄本、住民票、診断書が必要である。保佐、後見の場合には診断書とは別に精神鑑定が必要となる。
 家庭裁判所は調査、査問を行い、保護者、監督人を選任する。利用者本人の財産や権利を守る人を保護者といい、保護者がきちんと保護者としての仕事をしているかチェックする人を監督人という。保護人、監督人について、補助においては補助人、補助監督人、保佐においては保佐人、保佐監督人、後見においては後見人、後見監督人と呼ぶ。任意後見制度においては、任意後見人、任意後見監督人と呼ぶ。
 判断能力の程度によって分類し、精神上の障害により、判断能力不充分な人については補助、判断能力が著しく不充分な人については保佐、常に判断能力を欠く状態にある人については後見を適用する。
 「不充分」「著しく不充分」「常に判断能力を欠く」の文言について、あいまいと感じるかもしれないが、症例・判例の蓄積があり、医学的判断と同時に、利用者の置かれた立場を全般的に考慮ることが前提であるから、これで充分な定義となっている。例を挙げると、重要な財産管理をひとりで行うには不安である場合は補助。重要な財産管理はできないが、日常の買い物はひとりでできる場合は保佐。日常の買い物もひとりではできない場合を後見。それぞれの場合に、同意権、取消権、代理権の及ぶ範囲が定められている。

判断力 制度 保護人 監督人
不充分 補助 補助人 補助監督人
著しく不充分 保佐(旧準禁治産 保佐人 保佐監督人
常に判断力を欠く 後見(旧禁治産 後見人 後見監督人

統計数字

 急激な高齢化に対応するため、2004年4月に新しい成年後見制度が介護保険制度と同時に施行され現在に至っている。2005年には心神喪失者等医療観察法施行が施行されている。介護保険が大いに利用されているのに比較して、成年後見制度は普及はまだ充分ではない。

年  全件数   禁治産 禁治産
1990年 2097    1513    566
1999年 3707    2960    747

十年間で1.8倍となっている。新制度開始後は以下の数字。

年度       全件数   後見   保佐 補助 任意
2000-4〜2001-3 9007    7451   884  621  51
2001-4〜2002-3 15151    12746   1521   734   147
2002-4〜2003-3 17086    14462   1627 805   192

ひとこと

 簡単に言えば、昔は中年の統合失調症や精神発達遅滞の人で、財産問題や離婚問題が発生した時の制度だった。現代では老年期認知症における諸問題のための制度になってきている。地価が高騰し、子供達はバラバラに生活することが多くなった。この変化が大きい。長年介護を続けている人はため息をつきながら成年後見のことなどを考えたりするのではないでしょうか。
 民法精神保健福祉法の整合性が問題だとの指摘もあるようです。