1801
しかしながらリハビリはドーパミンレベルを低下させることが仕事ではなく、ドーパミンを適正なレベルに保つことが仕事である。
薬を使って脆弱性を押さえ込みながら、生活を広げてドーパミンを上昇させる。この一見矛盾する仕事をしなくてはならない。
1802
病棟で看護婦は社会的入院に対して何もできずに見ているしかない。
1803
入院が有効であることは認めるが、職場や地域での日常生活から全く切れてしまうのはよくない。生活の場の変化に対応するだけで疲れてしまう。
1804
精神病院の生活はドーパミンの観点から見れば、まったく異常な環境である。
1805
完治するまで院内生活を続けていたら、精神病院という特殊な施設の環境に適応した人間としての治り方しかできない。
1806
精神病院が生活の場となってはいけない。治療の場である。
その点では、急性期を病院で乗り切ったら、回復期には地域医療に早急につなげるべきだ。現在の精神病院での回復期ケアは問題がある。
しかしまた、病院内での回復期ケアは、患者のストレス状態を精密に把握できる利点がある。短期間でも院内回復期ケアは有効かも知れない。そこでは「生活の場で自然に回復する」のとは全く別の、専門的で特殊なプログラムを進めるべきだ。→IRC(集中リハビリケア)、IRP(集中リハビリプログラム)。ドーパミン制御法とレセプター遮断薬を使って、レセプター量の操作をする。分裂病の場合にはレセプターを正常量に戻し、過敏さを解消する。
1807
院内でもケアマネージャーをおいて、種々のケアをどのようにミックスさせるか、工夫する(ケアミックスの促進、技法化)。
1808
リハに関するコンの理論(過激なドーパミン一元論)
IRU(集中リハビリユニット)
IRC(集中リハビリケア)
IRP(集中リハビリプログラム)
ドーパミン制御法とレセプター遮断薬を使って、レセプター量の操作をする。分裂病の場合にはレセプターを正常量に戻し、過敏さを解消する
急性期にはドーパミン>>レセプターとなり、陽性症状が出現する。これをレセプター遮断薬を使って見かけのドーパミンを少なくする。急性期にはこれでよいが、これを続けていると、見かけの上ではドーパミン<<レセプターとなり、時間がたつとセルフレギュレーションにより次第にレセプターは増加する。これは根本的に過敏さが増大するということである。この状態で薬を勝手に中止したりすると、少しのストレスで再発してしまう。
従って、急性期が過ぎて回復期になすべきことは、増えすぎたレセプターを減少させることである。そのためには計画的にドーパミンと遮断薬をを制御してレセプター量を減少させるようにすることだ。
相対的にドーパミンが少なすぎるとレセプターはセルフレギュレーシュンにより増えようとする。相対的にドーパミンが多すぎるとレセプターはセルフレギュレーシュンにより増減少する。しかしドーパミンが相対的に多い状態とは、分裂病再燃状態に接近しているということでもある。
1)相対的にドーパミンが少なすぎるとレセプターはセルフレギュレーシュンにより増えようとする。……これは過敏さを増すだけだから避けたい。しかしこの状態は再燃にもっとも遠い状態であり、再燃は確実に抑えられる。病院内で無為自閉を続けていればこの状態である。過敏さを増し、潜在的に再発準備している状態といえる。この悪循環ループは切らなくてはならない。
2)相対的にドーパミンが多すぎるとレセプターはセルフレギュレーシュンにより減少しようとする。しかしドーパミンが相対的に多い状態とは、分裂病再燃状態に接近しているということでもある。再燃にいたらない範囲でドーパミンを増大させ、セルフレギュレーションによりレセプターを減少させる。レセプターがある程度減少したら薬を一段軽くして、いままで遮断されていたレセプターを操作可能なレセプターとし、さらにレセプター減少操作を続ける。
ここの難しいコントロールが上手にできるかどうかが問題である。これは病院内リハビリテーションを進める強力な論拠になる。院内リハの方がストレス量を精密にコントロールできるからである。
ドーパミン>=レセプター 程度で維持する工夫を続けることが大切である。
ストレス脆弱性とストレスの図。発病と快適ストレスと退屈の三領域。
シナプス前ドーパミン量はストレスに、シナプス後レセプター量は脆弱性に対応する。
1809
中脳辺縁系、特に側坐核に向かう系を特異的に遮断する薬があれば副作用は少ないはず。それはできないか。
1810
→没
陽性症状は ドーパミン>>レセプター
陰性症状は ドーパミン<<レセプター (……×)
治療に適した設定は ドーパミン>=レセプター。これを維持して、徐々にレセプターを減少させようという方針。
というように単純には実はならないだろう。陽性症状と陰性症状は背反しないからだ。むしろ、ドーパミン系とノルアドレナリン系またはセロトニン系など、別の系を考えるのが正しいかも知れない。
しかしあえて単純なモデルで考えてみようということだ。一元的な原因を仮定したい。
1811
シンデレラナース
まじめにこつこつよいことをしていれば、きっといつか誰かが評価してくれると信じている。もうそのようなシンデレラみたいな態度は捨てよう。
1812
時間遅延理論と、リハビリプログラムドーパミン理論とはどう結合するのか。
つまり、時間遅延理論とドーパミン理論はどうつながるのか。
1813
地域ケア論
必然的に、人の社会や生き方の見直しにつながる。
1814
はみ出し者をどのように処遇するか。排除の圧力と抱擁する力。
多様性を包み込む社会が実は競争力のある強い組織なのだという認識はどうか。進化論的観点。
社会の周辺部に位置する人たちをどのように処遇するか、社会の態度。
1815
陰性症状は、多分、脳神経細胞が失われることによる症状である。シュープのたびにレベルダウンがおこる。これはちょうどてんかん発作のたびに神経細胞が失われるのに似ているだろう。最終的に痴呆状態に到ることも似ている。
神経細胞消失症状といってもいい。実際に死滅しているか、神経細胞間の連絡が失われただけ、つまり機能的に死んだだけかは分からないが。
これは「足を失った」タイプの障害に分類されるだろう。従って、治療はギブスを使うこと、良肢位で固定することである。SSTタイプの対処が有効である。
陰性症状は、老人性痴呆の場合の、細胞機能停止と同じである。ただ、場所の限定はある。分裂病では運動面の障害などはあまりでないから、どこでも均一に神経細胞機能が失われるものでもないらしい。
陽性症状とは全く違うものであり、陽性・陰性と対にして呼ぶのもおかしなくらいなものである。症状の性質として考えようによっては対になるが、原因としては全く対にならない。
原因を考えたときには陽性・陰性の分類が妥当な分類線なのかどうか、怪しい。
1816
陰性症状はそれ自体、患者にとってストレスになる。したがってストレス軽減のためにSSTなどで対処すべきである。
1817
陽性症状シュープが細胞機能消失を引き起こし、陰性症状(レベルダウン)をもたらす。このしくみはどのようなものか。
似たような事態が他にあるか。→てんかん発作による神経細胞消失。脳出血後の周囲細胞の死滅。
こう考えれば、すっきりする。
シュープは「火事」や「爆発」のようなものだろう。
この考え方では単純型分裂病と陰性症状とは、別物と結論される。
単純型分裂病は、レセプターが大変多く過敏であるが、陽性症状を呈して破綻するほどではない程度のものである。性格の偏りの範囲で考えてもよいが、シゾイド、シゾタイパルとの違いが問題になる。
陰性症状は、シュープの後の細胞消失による症状である。ジャクソニズムの原則により、細胞機能消失に伴い、陽性症状と陰性症状が生じる。ここで用語の混乱がおこる。
陰性症状は、いずれにしても、細胞機能停止を原因とする通常機能の消失を意味する。
陽性症状は、一方では相対的ドーパミン過剰による症状であり、ジャクソニズムでは、抑制機構消失による下位機能の突出である。……ドーパミン抑制機能の消失と考えればつながらないことはないものの、やや無理がある。そこでこの二つを分けた方がいい。たとえばドーパミン過剰症状と下位機能突出と呼ぶ。……考えてみれば、結局幻覚妄想の成立をどちらも指しているわけだ。ドーパミン抑制系が消失することによって幻覚妄想状態がおこるのであれば、ドーパミン過剰症状と下位機能突出とは問題なく一致するわけだ。……当面、それでいこう。
ドーパミン過剰を抑制するメカニズムは何か、それはどのようにして失われるか。……多分生まれつき失われていて、児童期までは性格として表現されている。そして青年期になってストレスにさらされて発病する。
1818
能力開発と環境整備
相矛盾する側面がある。
1819
分裂病者には、人に嫌われる何かがある。そこが精神発達遅滞者と違うところだ。何か違う。そこを基本にして出発しないと、現実を無視した理想論になってしまう。
1820
ドーパミン仮説と分裂病の病型
妄想がドーパミン>>レセプターのアンバランスによりおこることは共通。
ヘベ(解体)型……最初はドーパミン少なく、レセプター多い(内気で孤独な病前性格)。思春期にドーパミンは普通量にまで増大>>もともとレセプター増加しているため過敏、そして発病。
妄想型……もともとは普通のタイプ。何かのきっかけでドーパミン絶対量増加>>レセプター普通。これは「ドーパミン抑制機構の欠如」が突然おこったと推定される?結局妄想はなかなか消えない。
緊張型……?
解体型……弱力性
妄想型……強力性
緊張型……身体転換型、ヒステリー型
1821
ジャクソニズムに従って下位機能から順次機能再建することを考える。運動機能に関してはまだ原則が分かりやすいのだが、精神機能はそんなに分かりやすくない。
そこで手がかりとしては、
1)子供時代の発達の仕方を参考にする。発達の順序は階層構造の提示のものから高次のものに向かっているはずである。
2)系統発生を参考にする。どんな動物がどんな精神機能を持っているかを見て、参考にする。
3)分裂病になって壊れるときの始まりの様子を精密に見て参考にする。
しかしどれも簡単ではない。
1822
幻覚妄想は異常膝蓋腱反射と同じである。脱抑制の結果である。
1823
馬鹿は、馬鹿を隠さないから馬鹿だといわれる。馬鹿を隠していればそう言われないですむ。そんな人は馬鹿ではないのだろう。
1824
中国人が異常な様子で来院していた。明らかに不安で不穏である。怖い世界になっている。
1825
低体温療法を分裂病急性期患者に
・分裂病急性期の興奮状態のときに、裸になることがある。
・昔から水に浸けたり、滝に打たせたりしていた。
・ディフェクトは神経細胞死滅に原因すると思われる。てんかんと似ている。興奮時に眠らせて低体温療法に導入すれば、ディフェクト発生率を減少させられるのではないか。
・エスキモーなど、寒冷地でのディフェクト発生率はどうか?低いか?しかし、人間が生きている状況の中での寒冷だから、あまり効果はないかもしれない。
・脳血管障害、脳外傷、てんかん、分裂病と、それぞれ原因は違うが脳神経細胞に損傷が起こる。その周囲の細胞にも害は及び、被害が大きくなる。そこで低体温療法に導入して、周囲の細胞に被害が及ぶのを防ぐ。
1826
分裂病は「神経細胞死滅毒素」が急激に無秩序に放出される病態ではないか
てんかんに似て、シュープがあるとそのあとでディフェクトになる。ディフェクトはどう見ても細胞の消失である。どのようにしてそのような大量細胞死滅が起こるのか。てんかんならば電気によるダメージ、血流、酸素などの観点から考えられる。
人間の脳は正常でもかなりの数を毎日失っている。これは細胞を整理して必要な回路だけを残すためだ。ここで積極的に神経細胞を殺す「毒素」が出ていると考えたらどうだろう。
何かのメカニズムで、シナプス形成に不必要な部分の細胞を積極的に消去するのではないか。
その仕組みが「暴走」すると分裂病になる。暴走とは何か?
そのように細胞を攻撃する物質は何か?ドーパミンでもよいが、本当にそうか?
シュープの発生とディフェクトの発生は別に考えた方がいいだろう。ディフェクトは、上記のような「細胞攻撃物質の大量放出」によるものではないか。シュープはドーパミンとレセプターのバランスの問題としてもよいような気もする。
ドーパミンが細胞毒放出の引き金になっているのではないか。
あるいは、ドーパミン過剰状態はターゲットとなっている神経細胞の死滅をもたらし、死滅に伴って周囲の細胞を傷害する毒素が放出される。
あるいは、毒素ではなく、充血とか疎血とか、そんなメカニズムかもしれない。酸素欠乏が効いているかもしれない。
あるいは、正常時にも神経回路を整理するために細胞毒素が放出されているのではないか。それが大量放出される。
例えば、神経毒素産生細胞がある?「掃除屋細胞」。マクロファージとかそんなものではなく、ケミカルな仕組みでシナプス形成に不要の細胞を殺す。
まず正常の掃除屋の仕組みを考える。そして分裂病急性期の病態を考える。
ある一部分の回路が活発に動くと、その隣の細胞は酸素欠乏になり死滅するのかもしれない。それは主要なシナプスのみを残すことになり、有利である。これは正常のシナプス形成である。よく使われるものだけが残る。
分裂病性興奮期には特定の回路が活発になる。それに伴って周囲の神経細胞が消滅する。……しかしそれだけではディフェクト発生には至らないだろう。
てんかんも分裂病も、躁うつ病の一部も、ディフェクトが発生する。細胞が失われる仕組みがある。それを防止すれば発作後のレベルダウンが防止できる。
神経細胞が失われるとはいっても、運動麻痺などは起こりにくい。この点は脳梗塞などと異なる。
1827
精神科医療は医療の名に値しない。刑務所の実態はどうなのか知らないが、多分これ以上にひどくはないのではないか。やむを得ず人権を一部制限するのなら、それなりの配慮があって当然だろう。
1828
精神科医療に我慢できるのはそれなりの鈍感さを持った人だけである。
例えば、視力の悪い人が住んでいる家はどうしてもほこりが積もっていたりする。そこに視力のよい人が訪ねてきたりすると、ほこりがとても気になるだろう。これは感覚の差である。
例えば、冷蔵庫を開けてしょうゆ差しが倒れていたとする。何にも感じないでドアを閉じる人もある。すぐに拭いてきれいにする人もある。さらには誰がこぼしたのか問題にする人もあるだろう。思いきり鈍感な人だけが精神科医療を長く続けられない。
結局、ディフェクト患者をディフェクト医者とディフェクト職員が見ている。それしかない。それ以外はうまくいかない。
1829
分裂病が未知の病因に対する反応であるとする考え方。
もしそうなら、ストレスマネジメントが役立つだろう。未知の病因というストレスに対して、精神病を起こして反応するのではなく、別の反応経路を用意するのである。
これはストレス脆弱性モデルにも適合する。過剰なストレスがかかったときにどう反応するか。一つは過剰なストレスを抑えること。一つは反応経路を変更することである。
ドーパミン過剰説。未知の病因に対する反応としてのドーパミン過剰であると考える。ドーパミン系は緩衝系だという解釈になる。幻覚妄想状態は反応に過ぎないことになる。神経遮断薬は反応を抑えているだけである。
拘禁反応で幻覚妄想状態が起こる。
拘禁時には外来刺激が極端に少なくなる。この変化に反応してレセプターが増える。これで幻覚妄想準備状態が成立する。
分裂病の病因は一種の「内的拘禁状態」を成立させる。
神経遮断薬を投与すると、反応する人と反応しない人との二群に分かれる。反応群では遮断薬投与後に一時的にドーパミン放出が増える。そのあとは投与前よりも低いレベルに落ち着く。これは血中ホモバニリン酸で確認できる。
薬が引き金となってドーパミン系が賦活される。ドーパミン系は修復系である。このように考えることができるとの指摘がある。
しかしながら、実験の内容、解釈の可能性、と考えると、真実の確定は容易ではない。
1830
分裂病の原因
・脳病説
・心因説(ユングなど)
・未知の脳障害に対する心理的な反応(E.Bleurer)
1831
幻覚妄想状態が相対的ドーパミン過剰であるとすれば、神経遮断薬でレセプターに蓋をして、保護室に入れて刺激低下させ、ひいてはドーパミン低下させることは理にかなっている。
しかしそれが分裂病の本質に対する治療かどうか、疑わしいといわれる。
1832
生活保護者と同じ食事をしていた頃。
結果はただ憎しみと絶望だけが募ったのだった。
1833
1)
院内で労働能力を高めてからの就労か、援助付き就労か。最近は後者が優勢。
院内労働に適応しても仕方がない。援助付き就労により、その職場の仕事に慣れて、その職場の人間関係や職場習慣に慣れることが、長期就労につながると考えられる。
2)
また、院内リハビリか、地域リハビリか。最近は後者が優勢。
院内生活に適応してしまうのは退院を遅らせてしまう。急性期が過ぎたら、なるべく早く地域リハビリにつなげることが大切である。地域生活に慣れること、通院生活に慣れることが大切である。そのためには、地域生活の指導者をおいて生活全体を配慮してもらうのがよい。例えば、生活支援センターを中核として、ケアマネジメントの考え方で、外来診察、デイケア、訪問看護、訪問リハ、就業援助などをミックスさせる。
従って、急性期が終わったら、すぐに地域リハビリシステムにつなげるのが正しいと考えていた。OTの院内での仕事は縮小され、デイケアと訪問リハビリに拡大するだろうと考えられた。
3)
しかし、院内リハビリにはさらに重要な意義がある。分裂病の本質に対する治療の可能性がある。ドーパミンレセプターコントロールの仕事である。薬剤とストレスコントロールによってレセプターをコントロールし、分裂病者の根本的な過敏さを「治療する」可能性がある。
4)
レセプター量をコントロールして、その一方で、生活環境を調整し、生活スタイルを調整することによって、ドーパミン量をコントロールする。
これは単なるギブスではないし良肢位固定でもない。根本療法である。
5)
これはドーパミン仮説に偏りすぎている。それが根本的な弱点であるが、まずは物事を単純化してモデルとして提示しようというわけである。
たとえばピッチャーが腱の移植手術を受けた後のリハビリは、休みすぎてもダメ、練習しすぎてもダメ、その中間で上手に負荷をかけなければならない。休んでいれば勿論、肘痛は再発しない。しかし元に戻ることもない。負荷をかけすぎれば再発する。
1834
敏感で良心的な医者は、その良心のゆえに業界を去る。鈍感でディフェクトを抱える医者は、気がつかない、かつ他にどこにも場所がないことによって、業界にしがみつく。
何というくだらない世界だろうか。
嫌気がさして「やめる」といったら、鈍感な愚か者達の勝利である。しかしそれでは私の人生はどうなるのだ?一度しかないのだ。
1835
クロルプロマジン
分裂病の未知の病因に対して、激烈な反応が起こる。それが陽性症状である。それに対処するために、人口冬眠療法が有効ではないか。クロルプロマジンが有効なのはそのせいではないか。
低体温療法は人口冬眠療法の再来である。
激烈な反応を押さえ込むことができる。
1836
精神病院とは、ディフェクト職員のためにある。患者のためにあるのではない。
社会的入院とは、ディフェクト職員のためのものである。
1837
1)
院内で労働能力を高めてからの就労か、援助付き就労か。最近は後者が優勢。
院内労働に適応しても仕方がない。あるいは作業所などの中間施設の労働環境に適応してもむだである。一般的労働能力の向上について野津が論文を書いているが、就労が持続しないのは労働能力のせいばかりではなく、職場でのコミュニケーション能力が原因であることも多いと考えられる。
援助付き就労により、その職場の仕事に慣れて、その職場の人間関係や職場習慣に慣れることが、長期就労につながると考えられる。
2)
また、院内リハビリか、地域リハビリか。最近は後者が優勢。
院内生活に適応してしまうのは退院を遅らせてしまう。OTやレクをしても結局は社会的入院者のための暇つぶしでしかない。
急性期が過ぎたら、なるべく早く地域リハビリにつなげることが大切である。地域生活に慣れること、通院生活に慣れることが大切である。そのためには、地域生活の指導者をおいて生活全体を配慮してもらうのがよい。例えば、生活支援センターを中核として、ケアマネジメントの考え方で、外来診察、デイケア、訪問看護、訪問リハ、就業援助などをミックスさせる。
従って、急性期が終わったら、すぐに地域リハビリシステムにつなげるのが正しい。OTの院内での仕事は縮小され、デイケアと訪問リハビリは拡大するだろう。
しかし現状では受け皿に乏しい。住宅と就労場所、さらには生活支援センター、ここまでを含めて地域ケアを増進することが根本的に重要である。
病院の役割は、急性期医療に限定される。または社会防衛のための施設となる。
3)
しかし、院内リハビリには重要な意義がある。地域リハビリでは不可能なことが病院リハビリでは可能になる。それは分裂病の本質に対する根本治療である。薬剤とストレスコントロールによってドーパミンレセプターをコントロールし、分裂病者の根本的な過敏さを「根治する」可能性がある。
レセプター量をコントロールして、その一方で、生活環境と生活スタイルを調整することによって、ドーパミン量をコントロールする。
SSTは良肢位固定であるが、それとは全く異なる。根本療法である。
4)
基本的仮定は、
?ドーパミン>>レセプター により幻覚妄想状態が起こる。
?レセプターは、ドーパミンが多すぎると減少する。逆にドーパミンが少なすぎると、レセプターは増加する。D×R=一定。ドーパミンはカラオケの声の大きさにたとえられる。レセプター量はステレオのボリュームにたとえられる。声が大きければボリュームを小さくする。声が小さければボリュームを大きくする。分裂気質の子供はボリュームが大きいから声を小さくしているようなものだ。
?分裂病者(特に破瓜型、または解体型)は、子供の頃からレセプター過剰であり、ドーパミンの少ない日常生活を生きている。それが分裂気質である。ドーパミン量に直接影響するのは、集団性の興奮状態であると考えられる。分裂気質の子供は経験の中で集団性の経験が欠如している。また、色、金、面子、健康といわれるような各分野も、個人により、大きな要因となる。
?思春期になると性的興奮や仕事のストレスが始まる。内気で孤独好きな分裂気質のままではいられない。ドーパミンは急激に上昇する。レセプターはそれに応じて減少しようとするが、変化が急激すぎると、幻覚妄想状態となる。……このあたりの事情については、たとえば、過剰なドーパミンがこぼれ落ちて別のシナプス回路に影響を与えると考える。またたとえば、過剰に強力な信号に対して、異常放電が起こり、たのシナプス回路にまで影響すると考える。
?幻覚妄想状態に対して、神経遮断薬を使う。レセプターの見かけの量(有効レセプター量)は減少する。ドーパミンがどんなにたくさんあっても、反応しなくなる。そこで、幻覚妄想はいったんおさまる。
?この状態で落ち着くと、ドーパミンはもともとの状態にまで低下する。分裂気質の人はドーパミンレベルが低い。また、入院生活の場合にはドーパミン低下状態が続く。すると、有効レセプター量が少ないので増加しようとする。結果として、発病前よりも全体レセプター量は増大する。結局、神経遮断薬によって蓋をされたレセプター分が新たに増大する。有効レセプター量は、発病前の全体レセプター量に等しい。
?この状態で退院してしばらくすると、薬をやめて試してみたくなる。薬を急にやめると、発病前よりも過敏な状態であるから、容易に発病する。
?再燃状態になると、神経遮断薬を使用するが、初回よりもレセプターは増えているので、薬はたくさん必要である。
?初回と同じ原理で、興奮が落ち着いてしばらくすると、蓋をされたレセプター分だけレセプターは増えている。結果としてさらに過敏になる。
?このような悪循環を繰り返さないためにはどうすればよいか、考える必要がある。
5)
入院して薬を使い、落ち着いた時点ではレセプター増加、ドーパミン減少となっている。治療の目標はレセプターを減少させることである。
6)
まずドーパミンを少しだけ増大させる。時間がたつとレセプターが少しだけ減少する。この時、ドーパミンを増大させ過ぎると、再燃状態となってしまう。また逆にドーパミンが少なすぎると、レセプターを減少させることができない。過激ではなく、退屈でもない、充実感のあるストレスがよい。
薬の量と、院内でのストレス負荷量の微妙な調整である。
ドーパミン増大→レセプター減少→薬減少→ドーパミン増大→以下繰り返し。ドーパミン一粒、レセプター一個、という感覚である。このように調整していけば、最終的にはドーパミンとレセプターを正常域に設定することができる。
そのためには、環境調整と生活スタイル調整により、ドーパミン量を調整することが必要である。特に、集団性の興奮、色、金、面子、健康によるドーパミン増加状態に対応できるだけのストレス耐性を身につけることが必要である。
7)
ストレスレベルと薬の二つのつまみがある。それらを上手に動かしながらレセプターを減らす。これが分裂病の根本療法である。
8)
異常のこととは別に、シュープのときに神経細胞が失われたことによる陰性症状の問題がある。こうしたディフェクト症状に対しては、SSTやケースワーク技術により、生活障害が少なくなるように配慮するしかないだろう。
9)
Sの根本障害→ドーパミン系の反応→ディフェクト症状
として、上記の仮説では、Sの根本障害として、ドーパミンレセプター過剰状態を仮定している。
しかしそれは別として、レセプター過剰が二次的に引き起こされたものとしても、過剰となったレセプターを正常にまで戻す操作は必要であろう。
10)
急性期に比較的大量の薬剤を使用し、薬を漸減しながら社会生活を広げる方法で、完全に治るケースもある。これは期せずして以上のドーパミンレベルとレセプターの調整がうまくいった例である。これを意識的に行うことで分裂病の根本的な解決ができるのではないかと考える。
11)
こうしたドーパミンレベルと薬剤レベルの調整を行うには、地域リハビリでは無理である。ここに病院内リハビリの積極的意義がある。生活全部のストレス量を把握し、状態に応じてきめ細かく薬剤とストレス量を調整するには病院内リハビリが適切である。そして、病院内リハビリの環境としては、種類としても深さとしても多様な刺激を用意できる場所であるべきだ。豊かなリラクゼーション設備と、深い感情体験を呼び起こすことのできる環境が必要である。
12)
難点は、何を指標としたらよいのか、見当がつかない点である。何となく状態を見ながら、慎重にかつ大胆になどとわけの分からないことをいう羽目になる。
病前性格の程度。興奮の程度。鎮静に要した薬剤量(これは体重やP405にも関係する)。これらがレセプター量の推定に役立つ。レセプターの反応性によるのだが、一週間刻み、一ヶ月刻み程度で試験的に試してみる必要がある。
13)
ストレス量は変えずに、薬だけを減らしていったらどうだろうか?あるレセプター量に対して、一個のレセプターを減らすのにちょうどよいストレス量があるはずである。だからやはりストレス量の調整は不可欠である。病院内生活はストレスが少なすぎる。その延長として、日常生活につなげるには不適切なレベルである。
14)
ストレスの個人差も大きな問題である。個別に様子を見るしかない。「様子」とは何か。難問である。
1838
集団精神療法の適応患者
自己を開示し、これまでになかったタイプの人間関係を築くこと。こうした集団精神療法は、たとえばガンの末期患者の場合にとても有効だろう。精神分裂病の場合にはあまり有効ではないかもしれない。
親密さ、正直さ。連帯感。モデル。ミラー。共感。
1839
精神病者も疾病利得に逃げ込んでいる
精神病者は大きな心因に苦しむ。精神病は巨大なストレスであるから、当然その症状には神経症成分が重畳する。そしてその一部分には疾病利得の問題も見えている。
1840
RRR:Receptor Reduction Rehabilitation
R3 Program:R cubed Program
レセプター減少を目的とするリハビリ。
1841
リハのあり方の三次元
1)QOLの向上……それぞれの環境での生活深化……図で水平方向
2)社会復帰の促進……図で垂直方向
3)レセプター減少……根本療法として。これは医療モデル。上記二者は障害モデル。
A)十年後のリハビリと病院組織
急性期は病院で医師と看護部が担当する。リハビリ期に移ったら、すみやかに地域リハビリシステムに乗せる。生活支援センターを核として、外来診察、デイナイトケア、訪問看護、ソーシャルクラブ、などをミックスしてケアを構成する。従って、OTやPSWはおもに地域担当として活躍する。
療養型病棟は過渡的な産物であり、消滅する。
B)二十年後のリハビリと病院組織
R3プログラムにより、一部の分裂病に対して、積極的なレセプター操作治療が行われる。病院リハビリはこの操作の場として、再建される。
1842
ドーパミン × レセプター =16
普通状態
4 4
と仮定する
分裂気質の人は
2 8
で生まれてくる。8に合わせて、2の環境を選択する。
思春期になって
6 8 =48
位の刺激が入ると、パンクして、発病する。40を限界点とする。
入院すると薬を使う。
6 (4+”4”)=24
レセプターの半分をブロックした状態である。
これで入院環境で落ち着くと、
2 (4+”4”)=8
レセプターは最終刺激として16を保とうとするので、レセプターを増やす。
2 (8+”4”)=16
この状態で落ち着いて退院すると、刺激は少し高くなる。
3 (8+”4”)=24
まだ発病レベルではない。このままでうまくいけば、
3 (5+”4”)=15
程度にレセプターは減少する。このサイクルに入れば、治癒の方向に向かう。
しかし途中で薬をやめたりすると、
3 (8+4)=36
で、大変危険である。ここで何かの強い刺激があると、
6 (8+4)=72
これで発病する。
再入院して薬を使うと、
6 (4+”8”)=24
ここで前回は4だけブロックしていたのに、今回は8だけブロックしないといけない。
入院していると
2 (4+”8”)=8
となる。16レベルを保つためにレセプターは増加して、
2 (8+”8”)=16
となる。ここで退院すると
3 (8+”8”)=24
何かの刺激があるとまた再燃、薬を使ってレセプターは増える……と悪循環を繰り返す。
ではどうすればよいか。
まず、入院後の
2 (4+”4”)=8
から始める。まず薬を減らして、
2 (4+2+”2”)=12
このままだとレセプターは増えてしまうので、院内リハビリで、環境ストレスを調整して、
3 (6+”2”)=18
位の環境を作る。16になろうとするから、レセプターは減る。負荷するストレスが強すぎると、40を超えて再燃する。刺激が少なすぎると、レセプターは増加してしまう。再燃しないように、レセプターが増加しないように、この例でいえば、16と40の間で、うまく調整する。結果として
3 (5+”2”)=15
となる。そこで薬を減らして(勿論、ここでドーパミンを4にしてもよい。便宜的に薬からの例を挙げる。)
3 (5+1+”1”)=18
時間がたつと16に近付く
3 (5+”1”)=15
環境調整をして、
4 (5+”1”)=20
16に近付いて、
4 (4+”1”)=16
薬を減らして
4 (5)=20
最後は
4 4=16
これで普通の人と同じになった。
陰性症状(ディフェクト)はこれでは解決できない。しかしレセプター量については調整できる。
ドーパミンについては、1から4まで。同じストレス負荷に対しても人によって反応が違うので、一律の扱いはできない。
レセプターについては、薬で蓋をすることができる。蓋をされているレセプターは操作できない。
かけ算の結果として、16に近付く性質を仮定する。40を超えたら幻覚妄想状態である。結果が16以下だとレセプターは増えようとする。16と40の間であれば、レセプターは減少しようとする。つまりかけ算の結果が16と40の間となるように、薬とストレス量を調整することである。
薬の調節。
副作用は指標になるか。昼の眠気やだるさは昔から指標になっている。
ときどき薬を休んでみるのも悪くないといわれる。
この例で具体的にいえば、4だけのレセプターを残して、あとは一時的に蓋をする。それがぴったりである。そのあとは、蓋をはずしては減らして4に戻す、これを続ければ理想的である。
たとえば、環境を病院内でなにもしない2に固定したまま、薬を減らしたらどうなるか。
2 (4+2+”2”)=12
これではレセプターは増えてしまう。もっと一気にやめれば、
2 (4+4)=16
しかしこれでは元に戻っただけで、治療にはなっていないわけだ。
病院内の環境は1だとすれば、
1 (16)=16となる。
精神病院と自宅の引きこもり生活は、どちらが1でどちらが2か。いずれにしても、レセプターは減少しない。
単純型分裂病
これは2×8=16のままで、思春期危機も回避して生きてしまう人である。
小児自閉症
2×8=16が起こっている。
顔を背けるのも、アイコンタクトがないのも、刺激を回避するためである。
治療は、むりやりでも刺激を送り、アイコンタクトも強制する。そのようにして、3×6=18程度になる、よい方向に向かう人と、依然として2×8=16を続ける人がいるだろう。刺激を回避する力が強い弱いはある。頭が良ければ、また性格が強力性が強ければ、回避を続けるだろう。いずれにしても、刺激を送り、レセプターを減らす努力をする。ただし、強すぎる刺激に対してはパニックで反応するので、それは超えないようにする。
多動児
8×2=16である。自分で強い刺激をつくり出そうとする。リタリンで興奮させれば、動き回って刺激をつくり出す必要はない。しかしいつまでたってもレセプターは増えない。治療は、少しだけ低レベルの刺激環境を作り、レセプターが増加するように配慮する。
1843
拘禁反応
これはドーパミン過少で起こる幻覚妄想状態。ドーパミン過剰とは逆。メカニズムが違う。外来刺激性のドーパミンが少なすぎるときには、内部由来のドーパミンが増えるのかもしれない。あるいは、急速にレセプターが増加するのだろう。後者を考えれば、分裂病類似状態として説明がつく。
1844
精神病者で貧しい人は疾病利益がある。精神病になって病人として生きた方が得だと判断する。
社会復帰したくない。
病気は治したくない。
1845
たとえばMRの子供にとっては学校はストレスの大きい場所である。身体的に不都合があったり、いじめられたりしても同様。
同じ環境でも、人の特性によってストレス度は異なる。これはレセプター量とはまた別の要因である。
1846
組織 案
東京海道病院 精神科 臨床業務部分
院長 医師部(外来、急性期病棟)
臨床心理室
社会療法部(回復期病棟)
リハビリ課
地域リエゾン課
患者・家族教育課
社会療法部広報課
医療相談部
看護部……総婦長、各病棟婦士長
薬剤
臨床検査
訪問看護ステーション
栄養
事務
社会療法部
○リハビリ課
・入院精神リハビリ係
・入院痴呆リハビリ係
・通院リハビリ係
精神デイナイトケア……外来、地域、訪問看護との連携
(将来)老人デイナイトケア
○地域リエゾン課
・退院時地域リエゾンカンファレンス係
・長期入院患者社会復帰促進プラン係
社会的入院患者評価
退院準備作業(ホステルで評価するなど)
社会資源受け皿整備(アパートや外勤先開拓、援助付き就労など)
・社会資源情報整備係
○家族教育課
患者・家族教育の実施と教育効果判定
○社会療法部広報課
印刷技術を生かす
職員構成は医師、Nrs、OTR、PSW。社会療法部は回復期病棟担当である。
急性期病棟担当チームと分担を明確にする。病棟も明確に分ける。医局は解体し、病棟の一部に職員の部屋を置く。
1847
社会的入院の判定基準
?医療としては問題ないこと
薬は安定している・コンプライアンス良好
陽性症状はないか、あっても日常生活自立を妨げない状態が一年以上続いている
陰性症状はあっても日常生活自立を妨げない
病識あり
閉じこもりきりにならず社会生活を送れる(仕事ができる、またはデイケアや作業所に通える)
再発危険時に受診相談できる
?退院先の確保ができないこと
家族の受け入れが整わないこと(なぜ?)
?ホステルなどで試してみて、自立生活が可能であることが実証されていればなおよい。
長期入院者社会復帰促進プラン
・具体的な社会復帰のめどがないのに社会復帰療法をすすめるのでは不十分である。
・いわゆる「社会的入院」にあたる人のリストアップ。レベル・状態に応じて分類する。
・使用可能な社会資源の検討。さらには不動産屋・大家と懇意になれるか検討。「大家さん安心プラン」。
・具体的なケース検討会。参加は医師、看護婦、OT、PSW、地域担当保健婦、通院予定施設PSW、生保ワーカー、作業所指導員、グループホーム指導員、可能なら家族など。社会復帰計画を立てる。……この作業を社会療法部会でおこなう。生活歴、現病歴、性格、治療経過、検査結果、日常生活能力、職業能力、暮らしの状況について情報を持ち寄る。
・社会復帰計画に従って実行。結果をフィードバックして、次からのプランに生かす。
・以上の作業のための書式を作ること。
・退院後の通院先と担当保健婦や訪問看護担当者、福祉ケースワーカーに手渡すデータの書式を整える。入院時からそれぞれの担当の分野の情報収集を開始する(ここでシステマティックに動けるようにすることが大切)。医師、看護婦、OT、PSWの分担を明確にする。大きくわけて、薬・体・心、日常生活、職業能力・特性、暮らし全般のそれぞれを担当する。
1848
トランスパーソナルの視点。
「からだ・こころ・くらし」に加えてたましい。現在の科学的常識以上の何かを想定する。
1849
Sの根本変化→ドーパミン上昇(陽性症状)→神経細胞消失(陰性症状)・神経症性症状
Sではうつ状態を始め、いろいろなことが起こる。なかにはSの根本変化に対する反応としての症状があるだろう。
ドーパミン上昇は、反応ともいえるし、防衛反応といってもいいかもしれない。
神経細胞消失については、何か積極的な神経細胞消去装置がかかわっているかもしれない。シナプスは自分以外のシナプスを消去することによって自分が安定化する。
ある神経回路が盛んに活動すると、その他の回路については消去してもかまわないと判断し、消去物質が放出されるのではないか。ドーパミン過剰は、その回路だけを活性化・固定化し(これが履歴現象)、周囲の細胞を死滅させる。例えば、セル・キラー物質を放出する。これが繰り返されると、脳は萎縮し、脳室拡大などの所見となる。
1850
病院組織案
医師部・看護部、OTR、PSWなどは病棟に振り分けて解体する。急性期病棟専属、回復期病棟専属、外来専属として組織する。そのようにすれば、各病棟での収益が明確になる。ちょうどクリニックビルの方式を想像すればよいだろう。
回復期病棟は、現在の仕組みのもとでは、次第に消滅するだろう。デイナイトケア、援護寮、グループホーム、訪問看護などに解消してゆく。急性期が終わったら、すぐに地域リハビリチームに引き渡される。
ケアマネージャー部門をつくって、患者の意志決定を援助するのがよいと思うが、経済の裏付けがないのが難点である。
病院組織
・精神急性期病棟
・精神合併症病棟……これは立川共済に送ればよい。
・精神回復期病棟……将来は精神保健施設(福祉施設・療養型C、心のケアホーム)
リハビリ(作業療法、SST、患者・家族教育)
(しかしここでRRRプログラムを実行する可能性を考慮すれば、単純に精神保健施設になるとも言い切れないのだが。)
・精神外来
・デイナイトケア
・援護寮、グループホーム
・訪問看護
・生活支援センター……クライシスライン、就労維持支援(職親、援助付き就労)、家族会支援、自助グループ支援
・老人性痴呆病棟
・老健施設
・痴呆外来
・老人デイサービスまたは老人デイケア
職種ごとにわけるのではなく、儲けがはっきり分かる単位ごとに組織して、権限を下に降ろして、経営意識を持ってもらう。儲けた分をもらえばいいのだ。そのためにも、請求業務のまとまりごとに組織するのがよいだろう。
たとえば、検査部は、SRIなどの検査会社に似たような意識で取り組めばよいのだ。緊急検査の経済効果を経営者は考えて決めればよい。
経営者は仕事の単価(どのような患者の場合に報酬いくら)を表示する。その単価が気に入らない場合には交渉するか、辞めるか、どちらかである。レセプト収入のうち、医師、看護婦、検査、PSW、OTRなどの寄与分を定めることが経営者の責任になる。あるいは、包括で支払いをして、その内部での分配はまかせることにしてもよいだろう。このシステムでは、クリニックビルの方式に似てくる。
個人でクリニックを開業すれば当然このような経済システムを前提とすることになる。そして健康保険システムのもとで医療を行うのであればこうして経済システムに従うほかに道はない。
1851
デイナイトケアの場合、形を変えた収容主義にすぎないのかどうか、点検する必要がある。
ソフトな収容。罪悪感の起こらない収容ではないか。
1852
閉鎖が必要な患者は数人にすぎない。あとの大半の社会的入院患者は、「つきあい」で閉鎖に入れられているだけだ。患者は抗議ができない。拒否ができない。
1853
RRRプログラム
分裂病の自然経過として、治ってしまう人がいる。一方で、シュープを反復して、段階的に悪化していく人がいる。何が違うのか?
悪循環と良循環の二つがあって、何かが少し違っている印象である。それを説明したい。
さらに、悪循環を良循環に変換できないか、テクニックを考える。それがRRRプログラムである。
1854
RRRプログラムは解体型・破瓜型分裂病のための理論である。妄想型はメカニズムが違う。
1855
解体型の、薬を使わない寛解状況
ドーパミンとレセプター
2 8
6 8……発病
収容または閉じこもり
1 8
このままでは
1 16
のパターンに向かうが、そのうちにふだんの生活に戻ると
2 8
これからあとは「引きこもりの生活」で、2を維持する。発病がなければ単純型といってもいい。性格と見えることもある。
1856
寛解という言葉は、レセプターは増大して過敏なままであることを表示している。
1857
ドーパミンを出させる刺激は、近代社会とそれ以前では全く違っていたものであろう。
村社会のような状況では、レセプターが多くても破綻せずに暮らせる程度のドーパミン量だったのだろう。これが近代社会になるとドーパミン量の多い生活になった。そこで破綻が多くなる。
軽症化についてはどう考えるか。?
ふだんの生活でドーパミンが多い状況だと、破綻しやすい一方で、レセプターが減少に向かう状況もできやすいのではないか。薬とドーパミンの微妙な関係がうまくいってしまう例も多くなるのではないか。
しかし分裂病の軽症化は、うつの軽症化やヒステリーの減少、カタトニーの減少などと一括して考えられることが多い。
1858
神経遮断薬は、投与直後にはドーパミンを増大させている。ドーパミンは修復系と考えられる。従って、薬剤は、修復系の賦活であると考えられる。
このような考え方もある。
1859
クローの一型、二型の分類。
一型はシュナイダーの一級症状を持つような、陽性症状タイプで、典型は妄想型分裂病。薬がよく効く。二型は、ブローラーの基本症状が中心の、陰性症状中心のもので、薬に反応しにくい。単純型分裂病が中心である。
一型は、反復するごとに二型の要素を増す。一型と二型の混在が破瓜病では典型的に見られる。
一型はドーパミン系の過剰活動。二型は脳の器質性変化。
例えば、「ひきこもり」の場合、過敏なために引きこもる人と、陰性症状として「ひきこもる」人(意欲欠如)を区別したい。
単純型はどうなのか?二型の純粋型は、何が原因で引きこもるのか?
1)ドーパミン過剰
2)レセプター過剰
3)神経細胞消失
この三種を区別して議論すべきではないか。
1と2はまとめて、「相対的ドーパミン過剰状態」であるが、これを分けることに意味がある。
私見によれば、
妄想型は1)であり、破瓜型、単純型は2)である。
3)の典型はディフェクトであり、ディフェクト純粋型は極端になれば痴呆状態につながる器質性の病態である。
1860
思春期発病
分裂病破瓜型の思春期発病については、刺激の増大のせいでもあるが、一方で内部ホルモン環境の問題もあるだろう。どう考えるか?性ホルモンが上昇すると、脳では何が起こるのか?
男性の場合、外部探索行動が加速される。このように、性ホルモンが行動を変え、それによって発病危険性が高まることが考えられる。
しかしまた、妄想発生と性的欲動の比例が予想されるような状況もある。恋愛に関する妄想回路が人間にはもともとある。「自分があの人を愛している」という妄想は妄想とはなり得ず、親は説得不可能とあきらめてしまうことなどから考えても、妄想の「原器」は脳に埋め込まれているのだろう。
幻覚妄想状態はその「原器」が誤動作する状態なのではないか。
幻覚については、それが幻覚であるか、妄想であるか、区別が難しいことがあるのではないか。従って、妄想の側で考えてよいのではないか。
1861
ドーパミン仮説の難点として木下潤が指摘している点について
1)薬が効かないタイプの妄想について。
何が起こっているのか?原発性にドーパミンが多い。あるいはドーパミン抑制物質の欠乏。しかしそれでもドーパミン遮断薬は効果があるはず。
ドーパミンレセプターサブタイプの問題?
ドーパミン以外の系の問題?
薬が効かない人は確かにいるのだ。
2)薬の効き始めが遅い。鎮静効果はすぐに出るのに。……薬剤とレセプターの関係は何か特殊?一週間くらいかかる何かのプロセスが関与している?
3)陰性症状には効果がない。……当然である。
1862
分裂病の逆耐性の問題は、レセプター増加による過敏状態成立で説明できる。
1863
レセプター量の操作にどれだけの時間が必要か。不明。
アンフェタミンに対する反応などが参考になる?
1864
錐体路と錐体外路
随意運動では錐体路が使われる。
例えば、何かを腕で持ち上げるとき、大腕二頭筋は縮む。これは意識の上でも縮めようと思っている。しかし同時に外側の筋肉は伸ばさなければならない。意識の上では「伸ばそう」という気持ちは起こらない。ここの調整をして、「外側の筋肉は伸ばせ」と命令するのが錐体外路である。
1865
状況認知は高次の判断能力である
頭のいい分裂病者の場合、脳の中にデータをたくさん入れることはできる。コンピューター的。たとえば地理のデータや自然科学のデータ。
しかし初めての状況で、その場の風向きを判断することは教えることができない。データを入れておいても、高級な判断は難しい。どのようなプログラム(判断手順)を組んでおけばいいのか分からない。何が確かな判断基準になるのか分からない。
そんな場合、彼らは自分なりにSST的な対応をしているようである。
自然に生きていれば自然に分かることである。
大脳の高次の統合機能障害というとき、状況認知能力などは該当するだろう。
1866
馬鹿は病気ではない、障害である。
つける薬はない。しかしケースワークはできるし、SSTはできる。
1867
美人とハンサムが好まれる理由
微細な身体形成は胎生三ヶ月までの発達を反映している。例えば、癖のある頭髪、外耳の低位置、狭く高い軟口蓋、手の第五指内湾など。
これらの微小な身体形成異常(MPA:minor physical anomalies)は中枢神経系疾患に高頻度に見られる。
美形が好まれるのは、無意識のうちに神経系なども含めた形成不全を排除しているものであろう。顔かたちの一部の特徴は、胎生三ヶ月までの成長の健全さを保証してくれる。
また、このあとで成長ホルモンにより骨の成長の程度が決定されるなど、ホルモン環境の推定ができる。
また、その人の表情は、普段の感情状態を反映する。
これらの要素の総合として顔かたちがある。
1868
人はなぜ手相を見るか
指紋と掌紋は13〜19週で発達し、21週で固定する。この時期に大脳皮質の基本的形態が形成される。皮膚紋理と大脳皮質は同じ外胚葉性であるから、発達分化の点で共通点がある。皮膚紋理に形成不全があれば、その形成時期に大脳皮質に何らかの障害があったと推定する理由がないこともない。
そこで、大脳形成不全を推定する根拠として、指紋、掌紋が有効になる。手相で未来のことは分からないが、胎生13〜21週のことは推定できるのである。
1869
SSTの前提
・その患者にはどんな技能が欠けているのか、診断すること。
・そのことと患者の動機付けが関連する。なぜこの訓練が自分に必要なのか、納得できたほうがよい。
1870
現在 現実神経症
エディプス期 精神神経症
depressive position うつ病
paranoid position 分裂病
1871
家族会
職親
就労援助(情報、援助付き就労、過渡的雇用)
1872
精神障害といっても、種類がさまざまである。それぞれの病理に対応して処遇しないと、くいものにされる。
せっかくの善意が食いつぶされて、本当に必要な人のところに届かない。
しかしこれが難しい。診断学が未熟であれば、自分も心の病気なんだと言い張っただけで、心の病気と認定されてしまうのだ。それを厳しく裁こうとすれば非難もされる。
1873
日本の現状では、患者の抱える障害を無視して、普通の人として遇してあげるのが優しい態度であるとの風潮がある。障害を抱える人としてみれば、それは差別や偏見につながるものとして考えられたりもする。こうした現状は、診断学が不十分な故に起こっていることである。
愚かな思い違いや思い込みによって処遇されていたのでは、患者はつらい。
あるいは、病気を否定し、さらには病気を否定することから生じる辛さをも否認し続けているのが、患者の病識の欠如ということなのだろう。この点では、「やさしい職員たち」は患者の病識欠如に巻き込まれてしまっていることになる。
1874
生活スタイル病
精神病院の生活は、脳に悪い。低栄養も甚だしい。最高度の脳委縮を作り出す場所といえる。
精神病院こそは、脳委縮からもっとも遠い場所であるべきだ。そして、脳委縮からもっとも遠い場所とは、愛のある家族であり、友のいる共同体である。社会そのものが精神病院となるべきである。
1875
脳の症状
・場所の特性……localization……傷害の場所に応じた症状。
・病理の特性……temporal profile……病理の特性に応じた時間経過の特徴。
1876
出生時に2×8と4×4の子供が産まれるのはなぜか?
ひとつは遺伝である。もう一つは、胎生環境である。胎児自身の感覚処理、胎児への感覚情報、母親からの何かの影響、血流を介してのホルモンや血糖の影響は間違いなくある。
1877
離人症とは脱実感症のことである。
1878
精神科医の二つのタイプ
ダメ医者と非常に良心的なタイプ。
自分は内科に行けないから、精神科と考える人。精神科の現状を見て、これではいけないと使命感を持って立ち向かう人。
1879
分裂気質の過敏と鈍感の同居
過敏はレセプターの過剰。鈍感は、感覚刺激がドーパミンに変換される途中で障害があり、充分なドーパミンが出ていない状態。見ていても感じない。これは「自閉」といえる。「現実との生ける接触の喪失」はこのような事態であろう。目には見えている、それなのに状況を充分に把握していない。状況意味失認といってもいいし、フィルター障害とイメージしてもいいかも知れない。
外部情報からドーパミンへの変換過程に障害があり、ドーパミンが少ない環境では、やはりレセプターが増えるだろう。この状態では、鈍感さと過敏さの同居となるだろう。
分裂病の始まりとして、「外部感覚情報をドーパミンに変換する過程に障害があり、ドーパミンが少なくなる、ひいてはレセプターが増える、このようにして2×8が成立する」と仮定したらどうか。
1880
表情認知テストを再度活用できないか。
1881
廃用型痴呆では感情平板化、意欲低下、自発性低下、計画性低下、機転消失、注意分配困難などの前頭前野症状が起こる。
血管障害でも、酸素欠乏でも、薬剤による傷害でも、やられやすいのは前頭前野であると考えられる。
ということは、分裂病の陰性症状も、特異的な傷害というよりは、分裂病性変化というダメージに対して、やられやすいところ(vulnerable)すなわち前頭前野がやられて、症状が出るという仕組みなのではないか。
分裂病に特異的な症状というべきではないのかも知れない。
分裂病の時に起こるのは、実際の神経損傷かも知れないし、あるいは分裂病の症状から「内的廃用」「内発性廃用」とでも呼ぶべき何かが起こるのかも知れない。
1882
「内発性廃用症状」
外界刺激はそれなりにあるにもかかわらず、一種の刺激遮断状態となり発生する廃用症状。つまり、感覚情報がドーパミンに変換されるまでの経路のどこかで傷害が起こる。これにより、レセプターが増加して、その後の反応が続く。
拘禁反応との類似も説明できる。
そして、廃用だとすれば可逆的である。どのようにして、感覚情報をドーパミンに変換する経路を再建するかが問題である。
1883
感覚情報……ドーパミン……レセプター
単純化して、この三者を軸に考える。
1)生まれつき、レセプターが多い。反応として、ドーパミンの少ない環境を選ぶようになる。それで固定する。分裂気質の過敏さ。思春期になってドーパミンが急上昇したときに、発病する。
2)生まれつき、レセプターが少ない。反応としてドーパミン過剰気味の状態を欲する。多動児の自己刺激状態。
3)感覚情報がドーパミンに変換される系が傷害されている。普通の生活ではドーパミンが少ない。反応としてレセプターが増えて、過敏な人になる。「現実との生ける接触の喪失」とは、そのような事態である。この人は普通に生きていても、脳の状態としては、「閉じこもっている」のである。……このことと、本当に物理的に閉じこもって、ドーパミンを減少させている場合とがあり、結果としてのドーパミン量は同じになる。
4)感覚情報からドーパミンへの変換が過剰である。普通の生活でドーパミンが多すぎる。反応としてレセプターは減少する。
1884
なぜ2×8パターンになるか?
レセプター形成期に、ドーパミンの量が多すぎたり、少なすぎると、レセプター量は標準的でない量に固定しそうである。つまり、レセプター形成される大切な時期に、ドーパミン量が少なすぎた場合に、レセプターは多すぎる量で固定されるだろう。
その時期はいつか、どのような場合に、ドーパミン過量になるのか。
1885
パニック発作
これもドーパミン×レセプター>40で解釈できないか。
1886
若年者はイライラする。中年になれば不安を訴える。このような変化があるのではないか。
1887
「よしよし、あなたはわたしから離れられない」
悪い母親と悪い精神科医、悪い心理療法家は同じセリフで悪を行う。
1888
レセプター量の決定……胎生期と出生直後
決定の時期はいつか?
決定後の可変域があるとして、どの程度の範囲か?
例えば、大量の性ホルモン。胎児期に母親の性ホルモンが大量に作用する。その時期にはレセプター量が変化しやすい。思春期になって性ホルモンが増大すると、レセプター量が変化しやすい時期になる。→レセプター量変化期?、レセプター量増加作用?
環境に適応してレセプターは変化するが、変化しやすい時期があるのではないか。生活の変化のときに、レセプター量が変化しやすければ合理的である。その点では、出生前と、思春期に変化期があるのは納得できる。
たとえば、嫁入り前と嫁入り後というように生活が変化する。
性ホルモンの中でも、男性ホルモンがよく効くのではないか。それゆえ、男性に破瓜型障害が多い。
1889
都会と田舎。文化の変化。
田舎暮らしで、レセプター設定が田舎の静かな環境にちょうどよいレベルに設定されている。都会に出てくると刺激が多い。そこでレセプター量の再設定が必要になる。うまくできればよいけれど、そうでない場合には不適応になる。
1890
過渡的雇用について
1891
思春期の妄想心理
レセプター量が増加することにより、まわりの女性にとりあえず好意を持つ。
男性ホルモンがもっとも強力なので、男性は惚れやすい。女性ホルモンの場合にはややマイルドである。
1892
レセプターが4なら普通。8なら分裂病タイプ。5ならイライラする若者。
5を4に変えるための方法があるか、検討。
環境刺激を6くらいにセットしてしばらくいれば、レセプターは減少するか。レセプターが減少することが、「慣れる」ということの実体だろう。
4×4=16
で、16のセッティングの異常も考えられる。
1893
感覚刺激→ドーパミン×レセプター=Z(Zが16に向かうようにレセプターは調整される。40を超えたら妄想状態。)
Zの設定が狂っている場合もあると思う。この設定を変える方法はあるのだろうか?
しかしこのように考えてくると、変数が多すぎる。
とはいっても、たかだかこれだけである。
1894
現代的人工冬眠法……低体温療法
これによって陽性症状を抑え、同時に陰性症状を予防する。陰性症状は、脳に起こった広範なダメージにより、前頭前野の機能が消失した状態である。これは低体温療法によって防止できる。麻酔薬で眠らせるのだから、陽性症状が消失するのは無論である。
クロールプロマジンは人工冬眠のために開発された薬であった。
1895
分裂病の三分の一は自然に治るとのブロイラーの見解。
これは本当にすっかり「普通の人」になるのだろうか。あるいは、過敏さを抱えたままで、過剰な刺激を回避して生きる人生を選択するから再発がないというだけなのだろうか?この違いはどうなっているのだろうか。
たとえば、単純型、分裂病型性格障害、などの性格の偏りを残しつつ、再発は避けられているという状態になるのだろうか。
1896
薬は本当に効いているのだろうかとの疑問。
陽性症状について……要するにぼーっとして眠くなり、何が何だか分からなくなるだけではないだろうか。
陰性症状……効いていないだろう。むしろ悪化させている可能性があることは注意しなければならない。
再発予防効果……本当に有効か?たとえば、薬をきちんと飲んでくれる人は、人の話を聞く、理解がよい、無謀なことはしない、人間への信頼がある、薬を絶対やめようと思うような嫌なストレス体験がない、などの良い状態があると考えられる。これは、薬のお陰というよりは、もっと全体のお陰で、そのお陰の一部として、薬を飲むことになっている。つまり、薬を飲むのが原因で良い状態が続くのではなく、良い状態が続くから薬を飲み続けてくれるのではないか。
逆に、状態が悪かったり、対人関係や職場でうまくいかない人は薬をやめて冒険してみたくなるのではないか。
1897
分裂病の軽症化
・薬のおかげかどうかは疑問
・栄養状態の改善が原因の可能性もある。たとえば、クレッチマーの体型との関係でいえば、やせ型は栄養不全の印であったかも知れない。
さらには栄養不全は対人関係の悪さに起因していたかも知れない。仲間関係が悪いから栄養が悪い。
クレッチマーの体型は、対人関係の質を反映していると考えたらどうだろうか。
1898
離人症
分裂病、うつ病、神経症などで、内容が同じなのか。厳密に同じ症状なのか。検討できないか。
表面的な認知の回路と、実感の回路が別々にあって、実感の回路が障害されるのではないか。
時間遅延理論で、時間が軽度に遅延して自己能動感が失われる事態。
1899
生物学系以外の人たち、特に心理やケースワーカーは、心理主義に傾きがちであるから、上手に修正してあげる必要がある。それは医師の役目であろう。
1900
十年後プラン
・組織は急性期、回復期、外来に大きく分ける。つまり、業種によって分けたりするのではなく、患者ごとに必要な治療はなにかによって、大きく分類する。
・病棟請負制。コスト意識が明確になる。チーム意識を明確化する。患者がとか、設備がとか、いいわけをすることがあれば困るので、徹底的にローテーションする。
・レセプター増加による過敏型と、触法型は処遇を分けて、病棟も分ける。
・回復期リハビリは地域リハビリの方が効果的で合理的である。従って、入院リハは消滅の運命にある。
二十年後プラン
・急性期治療は麻酔・低体温療法になる。人工冬眠、頭寒足熱、滝に打たれる。陽性症状は眠ってしまうから消える。脳のダメージを防ぐので、前頭前野細胞消失による陰性症状を抑える。薬の副作用で生じるレセプター増加を回避できる。この方法であれば、シュープのたびにレベルダウンが起こる分裂病独特の進行を防止し、非定型精神病やうつ病のような進行に変えられる。たとえば、てんかん発作にも応用できるだろう。
・維持期には、患者を慎重に選択した上で、RRRプログラムを施行する。これによって、分裂病の根本治療ができるようになる。分裂病の根本療法が試みられる時代になる。