こころの辞典1501-1600

1501
きれいデイケアと安心デイケアでわけないと、安心はきれいを駆逐してしまう。

1502
ボランティアの活用。ボランティアの位置づけ。特にシルバーボランティアが使えるかどうか。

1503
病気ごとの標準治療手順を定める。どの職種がどの時点でどのように関わるかを標準化する。

1504
自閉症や多動障害で大人になった人の職場や昼間の居場所はあるか?大里君のようなタイプ。場所を考えてあげたい。

1505
地域精神医療としての社会療法を考える。
外来通院、往診、訪問看護、デイナイトケア、共同作業所、各種中間施設、ケースワーク、地域保健婦、福祉関係役所の地域ケースワーカーなどの連携。

1506
受け皿がないのに退院をすすめても結局結果は良くない。アメリカではホームレスを大量に生んだ。
退院後の受け皿の開拓がまず必要である。
社会復帰を動機づけるにしても、具体的な社会復帰の道筋が見えていないとやる気が出ない。ここに住んで、この仕事、経済的にはこうする、援助はこのようなものがある、先輩達はこのように成功している、などと具体的に提示できるようにする。
具体的に決まってくれば、何が患者の社会復帰を妨げているか見えてくる。そうすれば解決方法も見えてくる。
社会の治療(環境要因)とこころ・からだ(個人要因)の治療の両面から攻める。

1507
精神障害者を職場や地域で受け入れるとして、そのメリットは何か」
慈善の心だけが受け入れを可能にするのだろうか。そして受け入れた職場は資本主義市場経済の中で敗北を決定づけられているのだろうか。そうではなくて、障害者を受け入れる職場が本質的に強くて生き残る力があるのだろうか。
この点を思弁ではなく、事実で証明した例はあるのだろうか。
なぜ病院主義ではなく地域主義に変化すべきなのだろうか。経済的要因だけだろうか。
ノーマライゼーションの根拠は何か。
ボランティアの動きはどのように評価されるべきだろうか。個人ではボランティアを「エンジョイ」するが、会社では分裂病者をクビにするだろうか。結婚のときには精神病者を回避するだろうか。地域に共同作業所ができるときいて反対するだろうか。ワンルームマンションが建つと環境が悪くなるという意見と同じレベルの話であろうか。
子供の学校で、混合クラスがよいだろうか。
障害児を産んで育ててはじめて知った人間についての真実が本当にあるだろうか。

1508
来院拒否している患者へのメッセージを載せたパンフレットを作る。

1509
休息入院のすすめに応じてもらえるような「気軽」なベッドを作りたい。上尾の森診療所のようなもの。

1510
ノーマライゼーションでメリットがある産業に働きかけるのは良い手段である。建築関係、交通関係など。現実的な利益があれば人は動く。

1511
社会療法部会
OT、CW、訪問看護、地域保健婦(保健所)、行政(福祉課)
月に二回程度の割合で集まって話し合う。お互いの領域を知り合うことがまず第一。

1512
退院までに準備すること
・退院後の環境を整える。
・地域担当保健婦、福祉職員と一緒に考える。
・再発要因のチェック・対策は十分か。少なくとも、問題点は指摘する。

○通院先の検討
・再発要因がないか、調整できないか。デイケア、作業所やAAを組み合わせるか。ソーシャルクラブタイプのものはどうか。

○仕事
・仕事先と連絡して確認、継続させるために保健婦が職場と連絡を保つ。必要なら定期的な職場訪問。
・OTは作業能力の評価。仕事が決まっていれば仕事に向けての準備メニューを組む。
・仕事を探す場合には援助。時間を区切って具体的に。

○日常生活
・看護は日常生活能力を評価、欠損を補う訓練。
・退院後の生活の乱れ、不眠、不食、拒薬への対策を考えておく。
・アルコール、薬物の場合には断薬を支える仕組みを作る(AAなど)。
・経済面は大丈夫か、収入や貯金などをチェック。
・住居は適切か、大家の理解はあるか。
・友人のネットワークはどうか、メリット・デメリットをチェック。

○家族
・家族教育(状態の評価の仕方、薬、EE、病院との関係の持ち方)
・場合によっては家族調整。
・家族の援助についても具体的に指示する。

○本人
・充分な自覚があるか(病識、薬、病気など)

1513
OTは心理テストの一面もある。評価の方法は大切。

1514
退院時連絡票(外来通院先と地域保健婦に宛てての連絡)
○目的
・退院後の環境を整える。
・地域担当保健婦、福祉職員と一緒に考える。
・再発要因と対策の列挙。
・以上の事項について継続性のあるケアをおこなう。

○本人
・患者教育は成功したか(服薬習慣、病識、病気についての理解、再発防止対策の理解、適切な受診行動、社会資源利用の理解)
・症状は十分に沈静化したか。陰性症状はどの程度か。社会生活に支障はないか。

○退院後ケア体制
・通院先はどこがよいか、デイケア、作業所、AAなどを組み合わせるか。ソーシャルクラブタイプのものはどうか。
訪問看護保健婦のかかわりを決める。

○仕事
・仕事先と連絡して確認、継続させるために保健婦が職場と連絡を保つ。必要なら定期的な職場訪問。
・OTは作業能力の評価。仕事が決まっていれば仕事に向けての準備メニューを組み、その結果を報告。
・仕事を探す場合には援助。時間を区切って具体的に。

○日常生活
・看護は日常生活能力を評価、欠損を補う訓練。これらを報告。
・退院後の生活の乱れ、不眠、不食、拒薬への対策を考えておく。
・アルコール、薬物の場合には断薬を支える仕組みを作る(AAなど)。
・経済面は大丈夫か、収入や貯金などをチェック。
・住居は適切か、大家の理解はあるか。
・友人のネットワークはどうか、メリット・デメリットをチェック。

○家族
・家族教育(状態の評価の仕方、薬、EE、病院との関係の持ち方について充分に学んだか)
・場合によっては家族調整。
・家族や親戚がどう援助するかを具体的に指示する。

○以上から、再発要因は何か、対策はどうするか。

1515
退院までにCW,CP,OTは何を評価するか。チェック表にする。

1516
資本主義市場経済の好景気と不景気の波と躁うつ病は親近性がある。時代の波、マーケットの波、個人の気分の波がシンクロする。
これに比べれば、社会主義計画経済は分裂病的またはパラノイア的である。

1517
分裂病性興奮に対する低体温療法
低体温療法によって脳のダメージを防ぎ、ディフェクトを少なくすることができるのではないか。
エスキモーの場合、ディフェクトの率が低いのではないか。
また、クロールプロマジンは低体温麻酔によって効果が出るのではないか。

1518
精神科医心療内科医、心理士とケースワーカー
アメリカでは心理士に処方権があり、精神科医と変わらない仕事をしている。しかし精神科医と同じでオフィスで待っているからあまり活躍していない。ケースワーカーは動きが軽い。社会的な調整をするために身軽に出掛けて行ってくれる。したがって人気が高い。こんどはケースワーカーに処方権を与えようという動きがあるという。
心療内科という科目は日本独自のもので、教育体制を含めて問題が多い。

1519
「何でも言える」集団療法
「何でも言える」ことが治療的だとなぜ思うのだろう。そのような考え方はアマチュア精神療法である。何を語り、何を沈黙するか、それを判断する能力を養うのが大切であるとも言える。自己の内面と外的世界の間に垣根を作ることは治療的である。
集団精神療法のもっとも大切な部分は、どのようにして集団を構成するかであると思う。

1520
心療内科医や心理士の欠点として重度の患者を経験していないことがあげられる。重度の分裂病を見ていないから心因説に傾くのだろうといわれる。しかし単科精神病院の職員は「重度の精神病」を見慣れているのに、理解が進んでいるとは思えない。精神病の原因として心因を重く見る態度は変わらないようである。

1521
客観的科学が一元方程式とすれば、観察者とのインターラクションをも考慮する科学は二元連立方程式である。また、観察者の変化が対象物に影響することを考慮するなら、二元連立微分方程式であるともいえる。
また、精神病の場合、精神的不調に反応する精神が変調を来しているのだから、方程式は一段と難しくなっている。これは微分方程式のような構造であろうと思う。二重の変化を解く感じだ。

1522
患者を変えるのは何か。治療者の真剣で無私な関心が大切だ。

1523
私がその人にものをいうときに、どういうものの言い方をしたら、この人のどこに届くだろうかと考える。ガンの告知を「見放された」と受け取る人もいる。

1524
患者がイメージを外部に産出する、その手助けをする。解釈が問題なのではない。イメージを外に出してみることそのものが治療的なのであるから、産出を手助けすることが仕事である。

1525
緊張病性分裂病減少の理由
軽症化の理由
ヒステリー減少
日本で対人恐怖少ない
日本で二重人格少ない

1526
薬物の進歩
軽症化
ノーマライゼーション
これらが精神障害者の状況を改善しつつある

1527
(笠原の文章から)
有効な薬が出てきて、精神療法のあり方も問い直される。
?早く治すことを期待しすぎる
?生活史をおろそかにする、長期の経過の中で考える、人生全体への心配りを忘れる
?患者さんの出番を忘れる……患者は自分の力で治したいと思っているところがある。自分も何かしたいと思っている。薬を飲んでただ寝ていろでは納得できない。カウンセリング、鍛錬法、プラス思考など。治療の中で患者の演ずる役割のあることを考える。セルフ・ヘルプグループの生まれる理由はそこにある。

薬物療法の際にどのような精神療法がよいか工夫の余地がある。
過去にさかのぼって原因を探るのではなく、未来に向けての精神療法を考える。
病気をしたという体験そのものは異物として心に残る。それをどのように咀嚼できるか、手助けする。
最後の仕上げとしての「心の話」が必要な場合がある。
病気によって断裂した生活史を病人が今一度縫い合わせるのを助けることが精神療法だ。
「締めくくり療法」は常識中心の方法がよい。
「できるだけ小さく切って治す」のが心の名医である。
立ち止まって過去を自分の中に取り込む作業。人間の成熟に関係する。

1528
リハの原理
○ターゲット
S……P→薬
  N……欠損→SST(良肢位での固定)
    廃用性機能不全→思い出し・慣れるためのリハ
      発達障害→育てるリハ
○ジャクソニズムの原理からリハのプログラムを考える……モデルは四肢麻痺
○プログラムカテゴリー
レクリハ
職リハ
ADLリハ
趣味リハ……現状ではこれが多い(手芸・陶芸など)
○別のカテゴリー
良肢位での固定
思い出し・慣れるためのリハ
育てるリハ

1529
コンピュータの利用を推進できるか考える。

1530
精神分析の原理
?無意識の存在(無意識内容を言語化することで症状は消える)
?言語を使う
?幼児体験の重視(過去による決定論
?症状は過去の体験の反復であり、治療場面でも反復される。

人間は人生早期に書き込まれた台本を繰り返して生きている。患者の人生において過去から繰り返されている台本を読みとることが精神分析である。

1531
医者が患者に手渡す薬は移行対象である。医者の分身である。それを薬局からもらうのでは意味が違う。院外薬局はその点で問題があるのではないか?

1532
多重人格
層状に積み重なるいろいろな自己を統合して、どの場面でどの自己を出すかをコントロールしている部分をセルフアイデンティティと呼ぶ。
状況に合わせていろいろな自分を出せるわけだから、それだけの手持ちの自己はあるはずだ。
それらが不適切な状況で外にあらわれるのが(軽度の)多重人格であると考えられる。記憶障害まで伴うようになれば本格的な解離性障害であるが。

いろいろな人格があるのが病的ではない。それらは誰にでもある。しかしそれらが内的な統合を失っていれば病的である。解離とはそのあたりの事情を指している。つまり、内的な複数の自己が解離し統合されていない状態である。

統合部分があり、その部分が壊れていると考えるべきか。
あるいは、(流行に乗って)ネットワーク組織になっていると考えるのがよいのか。
統合部分をセルフアイデンティティと呼ぶ。
アイデンティティ拡散とは、統合部分の不全のせいで各種の自己がまとまりなく混在している状態である。

1533
視覚障害を診察するのか、「目の見えない人」を診察するのかの違い
医学・疾病モデルと障害者モデル
MEDICALとCASE WORK

B=P×D×E

B:Behavior
疾病行動

P:Personality
性格
コーピングの特徴

D:Desease
病気
薬、副作用

E:Environment
スタッフとの関係
家族との関係
友人、職場、他患との関係
社会・文化背景(所属集団、宗教など)

1534
全人的医療
臓器ではなく人間を診る
身体・心理・社会・実存を包括的・全人的に理解する。

目標はQuality of Life の向上
Cure から Care へ
Science art
分析  統合
客観的  相互参加的
急性疾患モデル 慢性疾患モデル

社会
中間施設
病院
この縦軸がCureの軸。横軸はCareの軸で、QOLの向上をめざす。病院内でも、中間施設でも、それぞれに可能である。

1535
QOLの評価法
つまりはいきいきと生きているかどうかということだろう。

○項目
食欲
睡眠
便・尿
痛みがない
心理的安定
社会的役割
生きがい

性生活
心気傾向
家庭の幸福
生活の充実感

その他のチェック項目
性格
コンプライアンス
アルコール
タバコ
スポーツ

1536
リハの主体は患者である
Patient’s will sa a medicine
本人の自覚
自立への意志
QOL向上への意欲が「くすり」である

1537
Doctor as a medicine
患者をサポートする。(「病気」ではなく「患者」)

1538
共感と同情
受容と迎合
区別がわかるようでありたい
同情されれば人はいやな感じを持つ

1539
なぜ病気に?ではなく、どうしたらよりよく生きられるか?と問う。

live with disease
あるがまま・ユーモア

1540
Care には
medical care
nursing care
family care
social care
self care
などがある。

1541
QOLについて実存のレベルで大切なもの。
病気の意味付け
生きがい
希望
世界観・死生観
愛の対象の有無

1542
治療過程での同伴者が大切
significant other

1543
闘病生活でなにが支えになるか
家族
仕事
同病者の励まし
医療スタッフの励まし

1544
受容と指示の使い分け

1545
○リハ部
レクリハ
職リハ……外勤作業リハを含む
芸術リハ……趣味リハ
ADLリハ
PT
ST(Speech Therapy)

○社会療法部
DC
訪問看護
CW
職業支援
住宅支援(障害者に便利な設計の援助も含む)
家族教育
地域啓蒙
社会資源整備・社会資源情報整備

○痴呆社会療法部
予防と早期発見
施設間連絡

名称としては作業療法よりもレクリエーション、それよりも社会療法が良い。方向を明確化しているから。

1546
病院精神医療から治療共同体へ

1547
リハでもやはり治療構造が大切である。

OTでは現実検討が向上する。竜宮城状態ではなくなる。これが最大の効用である。

1548
OTの治療過程の指標
?意欲の向上
?技能の向上

1549
作業を媒介とした精神療法
?治療関係の手段
・症状や生活歴の聴取でつながっているのとは別の治療関係ができる。

?作業自体の持つ力
・芸術療法と似た意味……表現のひとつであり、しかも自由度が低いために安全である。
・作業は仕事に、仕事は社会につながる。この点で未来への希望である。

1550
ラジオに雑音が入って困るというので修理に出した。ところが何も聞こえなくなって戻って来た。雑音は消えたけれど、これが修理なのだろうか?

幻聴を消すために意欲のない人間を作っているという批判がある。しかしそれは病気の自然の経過であり、治療のせいではないかもしれない。

1551
作業療法批判
?低次元の批判をいう人は無賃労働、搾取であるといいたいのだろう。それは確かにひどいことだ。このような低次元の批判があたるような低次元の病院もあるだろう。
どこにも働く場所がないから病院内で工夫して仕事を作っている面もあるが、厳格に批判する人はいる。それは正しいと思う。社会の中で働く場所と住む場所を是非用意して欲しいものだ。それさえあれば病院で無理をする必要はないのだ。
?作業療法は、治療共同体の方向の改革が進んで、病院に長期入院する必要がなくなったら、あまり重要ではなくなるだろうと思う。それは人間として普通の、趣味やレクリエーション、能力に見合った仕事などに置き換えられてゆくだろう。健常者の中に混じって活動するようになるだろう。それまでの過渡的な存在であると思われる。だから本質的には消えるべきものである。作業療法が消えたときが社会療法としては完成したときなのである。

1552
理論に基づいたプログラム。
疾病モデルと治療理論。
理論背景が違えば、薬の意味も違う。

1553
治療目標の明確化。
欠損補完か……SST
QOL向上か

1554
基本的態度
?楽天
?自己選択のチャンスを増やす、意欲が向上する。
?全人的・包括的観点。
身体の部分にのみかかわるのではない。身体と心、実務と芸術、現実とファンタジー
?人間は成長可能な存在である。
?対人関係、治療関係を大切にする。
?奥には無垢の魂がある。窓が曇っているだけだ。
?人間は、「にもかかわらず」選ぶことができる存在である。環境にもかかわらず、選ぶことができる。

1555
医療に要請されている倫理。
医療は、倫理の砦である。医療にも倫理がなくなったら、もう人間に倫理はない。

1556
「精神病とは内的拘禁反応である」と考えたらどうか?
?精神的変調により、内的拘禁状態が発生する。
?拘禁状態に反応して精神症状が起こる。
?観察される症状は?の変調と?の反応の混合物である。

1557
精神病の症状には必ず神経症が混入している。
?心理的にショックなことが起こったとき、神経症になる。
?精神病は精神的に非常に大きなショックである。
?精神病の症状は、精神病固有の症状と、反応性の神経症症状とが混合したものになる。

ふだん神経症を多くみている心理士は、精神病者をみても神経症の延長とみる傾向がある。それは無理もない。たしかに神経症成分が前景に見えるからである。そのような人たちは前景に精神病症状がくっきりと出てきた場合には、気がついて医者に紹介する。
しかしそれでは不足で、奥にある分裂病性変化を見逃さないで欲しい。

1558
分裂病者の精神機能評価
○対物技能
認知・処理・運動

○対人技能
二者交流技能
グループ内交流技能

○自己
自己同一性
性的同一性

1559
ケアプランの作製
開始→(評価→目標設定→プログラム→)【()内ループ】→終了

1560
障害のタイプ
?病前障害(教育、性格、知能など)
?一次的障害
?二次的障害

1561
分裂病者の特有の傷つきやすさを理解する。

被害的になったとき、スタッフ間の連絡が悪いと混乱が生じる。患者の発言は被害妄想なのか、本当にあったことなのか、発言の真意は何なのか、スタッフ間でのミーティングを密にしないといけない。
これは精神科医療のあちらこちらでみられることである。

1562
家族の心得
?批判的でない受容的環境
?適度の社会的刺激
?具体的現実的な目標
?病識の動揺に対する対処法
?妄想への対処法
?社会資源利用
?落ち着いていることに満足する。高望みしない。急がない。
?意欲、自発性を引き出す。

1563
OTによる評価にあたっては、現在の能力と、潜在能力(訓練により達成可能なレベル)との両者を評価する。そのようにしてはじめて、プログラムができるはず。

1564
環境刺激が少なすぎると無為・自閉・無気力。
環境刺激が多すぎると混乱と興奮。
しかし最適環境刺激のセッティングは難しい。
少なくとも急性期と慢性期では最適刺激レベルは異なるはずである。

こう考えると、急性期患者と慢性期患者を同じ病棟に置くのは間違いである。(自分もあのように落ち着いてゆくのかとイメージできる点ではメリットがある。)

1565
薬とデイケアの挟み撃ち

1566
S=病前因子+病気+病後因子
病前因子……性格、知能、家庭、教育(生育歴)
病気……陽性症状と陰性症状(治療はそれぞれ薬と働きかけ)
病後因子……二次障害(壊れた人間関係、廃用性機能障害)、欠損による体験欠落・教育欠落

例:「引きこもり」は病気によるものか、病後の二次障害によるものか、それによって働きかけ方は異なるはずである。

S=(発達障害+欠損+廃用性機能障害)+二次障害+(性格・教育要因)
対策はそれぞれ対応させて、
(教育 +SST+再訓練) + SW +(SW+教育)

もっとも素朴には
S=P+N
Pに対して薬
Nに対して働きかけ である。しかし、ドーパミンからみれば、挟み撃ちになっている。

1567
「人間を行動させるには、適した良い環境を与えるのがもっとも効果的である。」

1568
OTは自己治癒作業である。ここが本質的に大切。導入時・動機付けの時にここを強調する。
「自分の力で治療に協力できる」「自分が治療の主人公である」この感覚は大切である。

1569
「役割」の治癒能力を作業の中に取り入れられないか。役割は社会への導入となる。

1570
人間はもっと不思議なもので、もっと偉大なものであると信じている。

人間はもっと倫理的であることができると信じている。

1571
社会的入院の判定基準

?医療としては問題ないこと
薬は安定している・コンプライアンス良好
陽性症状はあっても日常生活を妨げない状態が一年以上続いている
陰性症状はあっても日常生活を妨げない
病識あり
日常生活自立可能
仕事ができる(またはデイケアや作業所に通える)
再発危険時に受診相談できる

?退院先の確保ができないこと
家族の受け入れが整わないこと

?ホステルなどで試してみて、自立生活が可能であることが実証されていればなおよい。

1572
長期入院者社会復帰促進プラン
・いわゆる「社会的入院」にあたる人のリストアップ。レベル・状態に応じて分類する。
・使用可能な社会資源の検討。不動産屋・大家と懇意になれるか検討。
・具体的な社会復帰のめどがないのに社会復帰療法をすすめることは努力を傾ける先が間違っているのではないかと考え直してみたい。
・具体的なケース検討会。参加は医師、看護婦、OT、PSW、担当保健婦、可能なら家族。社会復帰計画を立てる。……この作業を社会療法部会でおこなう。生活歴、現病歴、性格、治療経過、検査結果、日常生活能力、職業能力、暮らしの状況について情報を持ち寄る。
・社会復帰計画に従って実行。結果をフィードバックして、次からのプランに生かす。

・以上の作業のための書式を作ること。
・退院後の通院先と担当保健婦訪問看護担当者、福祉ケースワーカーに手渡すデータの書式を整える。入院時から情報収集を開始する。医師、看護婦、OT、PSWの分担を明確にする。大きくわけて、薬・体・心、日常生活、職業能力・特性、暮らし全般のそれぞれを担当する。

1573
ソフトな救急……病気の種類としては何があるのか。関係者を巻き込むために起こす騒ぎとケア開始が必要な状態との区別をうまくつけられるか。巻き込む目的で起こしている騒ぎならば、巻き込まれる体制を作ることによってますます頻発するようになるだろう。分裂病系統と性格障害系統の区別を的確につけたい。
往診……精神科初診往診は難しい。

1574
医療に乗りにくいケースに対して対策を考える。
・家族にも力がない。
措置入院になるほどでもない。
・本人・家族に病識がない。
・結局制度からもれてしまう。

→さらに具体的な像が欲しい。

1575
「大家さん安心プラン」計画
障害者が部屋を借りる場合に、バックについているCWが大家に信頼してもらえれば、話は進む。Key Personが明確に決まっていて、大家の不安をケアしてゆけるようなら、可能性はある。大家に安心感を与えるシステムを作れるかどうか、検討。

1576
「地域リエゾン退院カンファレンス」
退院時カンファレンスを制度化する。その場に地域担当保健婦、生保ワーカーなども参加してもらう。

1577
医療は倫理を実践できる幸福な場所である。
そして、自分が倫理から遠い存在であることを痛感させられる場所である。
しかしまた、医療の場所にいればそのような自分にも倫理的存在となるチャンスは与えられている。

1578
ヒットエンドラン   ヒットエンドラン型連携と外野フライ型連携
チーム医療とは、野球でヒットエンドランを決めるようなことだ。バレーのAクイックのようなものだ。ただ単に分担を決めて自分の仕事をするのではない。それでは時間をかければ一人でもできる仕事になってしまう。連携して一人ではできない仕事をするのだ。ヒットエンドランはどうしたって一人ではできないことだ。

外野フライがあがったとして、中間領域の場合に誰がとるかという問題がある。これも連携として大切であるが、要するに連絡をとって取り決めしておけばいいだけの話で、ヒットエンドランとは質が違う。

外野フライ型連携は守備範囲の明確化である。これさえできていないようでは組織といえない。
ヒットエンドラン型連携は一体となって動き、目的を達成する点で組織としてひとつ次元の高い動きである。

たとえば集団精神療法と個人精神療法、薬物療法の連携。また、病棟看護婦の教育的側面と保護的側面の役割分担。

1579
分裂病性興奮の際に、暑いからと裸になってしまう人は多い。実際にオーバーヒートしているのではないか。コントミンは低温麻酔の原理で分裂病シュープを鎮めるのではないか。だとすれば、低体温療法は有望ではないか。

1580
遺伝子の相同組み替え
遺伝子は、部分的によく似た遺伝子がそばに行くと似た部分同士がそっくり入れ替わることがある。この過程を促進するのがウィルスである。
なるほど。このようにしてウィルスが適応者の遺伝子部分を切り取って、不適応者に運び入れることが予想される。

1581
適応と免疫・遺伝子組み替え
不適応状態に対する個体のレベルでの対応はうつ状態である。種としての対応は遺伝子組み替えである。→精密に描写することができる。

1582
単行本は原稿用紙三百枚。(7枚×7つの山)×6章=300枚
つまりひとつの「いいたいこと」を7枚で書く。それを7つ集めて章とする。全部で6章として一冊になる。

1583
精神科医療の問題点」現場の悩みを報告する
○外来
敷居が高い。
汚い。サービスが悪い。
心療内科神経科と精神科の違いがわからない。
すぐに薬や注射をされそうだ。強制入院させられたら困る。
待合い室に変な人がいそうだ。
心理相談室、カウンセリングとの違いがわからない。
デイケアは重度の人に占領されている。神経症レベルの人のデイケアがない。
偏見はまだなくならない。
内部情報が開示されていない。何をしてくれるのか、料金は?期間は?どんな治療者がいるのか?

○入院
措置入院や精神科救急体制からもれてしまうような人をケアできるような「ソフトな救急」がない。
一次入院に適したベッドがない。
うつに適したベッドがない。
社会的入院が多い。社会の受け皿作りが進んでいない。
家族として充分にケアされていない。どのように協力すればいいのかわからない。
退院後のケアはどうなるのか。アパートの大家の心配は誰が受けとめてくれるのか。

○老人医療
・制度の全体が理解できない
・予防対策を進めて欲しい

1584
前景症状(精神病成分と神経症成分がある)
・現在症、現病歴などから
背景病理
・生活歴、家族歴(遺伝負因)、病前性格などから

1585
老人性痴呆の見立て
?意識は異常ないか?
せん妄は?薬の副作用などないか?
?うつ状態はどうか?
?現在状態=自然な老化+痴呆+廃用性機能不全
または
D=痴呆以前の問題+痴呆+二次的問題
・痴呆以前の問題……性格、知能、教育
・痴呆……どの機能がおかされているか、
・二次的問題……家族関係、廃用性機能不全

1586
精神科の治療=身体療法+心理療法+社会療法
・身体療法=薬剤+電気けいれん療法
心理療法=個人+集団+リハビリ
・社会療法=ケースワーク+リハビリ
・リハビリ=職リハ+芸術リハ+レクリハ+ADLリハ

1587
リハビリの効用
・リフレッシュ……レクリハ、芸術リハ
・技能向上……職リハ、ADLリハ
・対人関係……指導者との信頼関係、集団内での役割を通しての社会参加

1588
老人性痴呆の早期発見とリハビリにならって、分裂病でも何か対策はできないか?
若者を対象とするスクリーニングは難しいだろう。

1589
社会療法部

○リハビリ課
・入院リハビリ係(OT)
精神リハ
痴呆リハ
・通院リハ係
精神デイナイトケア……外来、地域、訪問看護との連携
老人デイナイトケア

○地域リエゾン
・退院時地域リエゾンカンファレンス係
・長期入院患者社会復帰促進プラン係
社会的入院患者評価
退院準備作業(ホステルで評価するなど)
社会資源受け皿整備(アパートや外勤先開拓など)
・社会資源情報整備係

○患者・家族教育課

1590
下町70人デイナイトケアの試みの総括
・計画の意図……神経症とうつのデイケア……彼らはケアの場所がないから
・結果……結局分裂病、性格障害、生活保護者の場所になった。
・反省……共存は難しいと知っていながら、分離しきれずある一群を追い出す格好になった。また、スタッフ間の連絡・理解の難しさも思い知らされた。
・竹村先生は「アイディアは良かった、しかし十年早かった。ものごとには適切な時期というものがあるようだ。しかし良い経験だったと思うから、大切にしなさい。今後きっと役に立ちますよ」と評価してくれた。

1591
精神科クリニックとして他にない魅力は何か。……工夫が必要
ターゲットを絞る……診療内容の広報(何をしているのかわからない場合が多い)
カウンセリング力
薬剤の便利さ……待ち時間の短縮
雰囲気……建物、人、サービス、人に会わなくてすむ
場所……駅前、駐車場、送迎車など
(職員のアメニティも大切)

1592
組織 案
東京海道病院臨床業務部分
院長 医局
  臨床心理室
社会療法部
  医療相談課
  リハビリ課
     地域リエゾン
 家族教育課
 社会療法部広報課
   看護……総婦長、各病棟婦士長
薬剤
臨床検査
訪問看護ステーション
   栄養
事務

社会療法部

○リハビリ課
・入院精神リハビリ係
・入院痴呆リハビリ係
・通院リハビリ係
精神デイナイトケア……外来、地域、訪問看護との連携
(将来)老人デイナイトケア

○地域リエゾン
・退院時地域リエゾンカンファレンス係
・長期入院患者社会復帰促進プラン係
社会的入院患者評価
退院準備作業(ホステルで評価するなど)
社会資源受け皿整備(アパートや外勤先開拓など)
・社会資源情報整備係

○家族教育課
患者・家族教育の実施と効果判定のアレンジ

○医療相談課
各種CW業務

○社会療法部広報課
印刷技術を生かす

職員構成は医師、OT、PSW。しかしこれらは本来の所属があるので、おおむね兼任の形をとる。

1593
本人と家族に手渡す「退院時指導書」
または本人・家族教育修了後のパンフレット。
これらを作製する。

1594
外来通院、デイナイトケア、訪問看護、クライシスラインを一体のものとして組織し地域の患者を支える。

1595
リハビリ参加増加、また保護室不使用の程度にしたがって、服薬自己管理、面接自己管理、タバコ自己管理、外出許可、外泊許可など、患者の自主独立の活動を増やす。自己責任部分を増やして意欲と自発性を引き出すことができないか。

1596
精神科リハビリテーション病棟
「心のケアホーム」構想……生活支援・福祉的居住施設。介護保険制度の対象となる。老人保健施設に対応する施設。

1597
社会防衛的医療、処遇困難例、触法患者は公的施設でケアして欲しい。

1598
明るく身近な精神科施設。
予防的精神保健活動。→ここを工夫できないか?考える。
地域精神保健は保健・医療・福祉の連携・統合である。

1599
社会復帰のために看護婦のする仕事。
○評価の仕事
症状評価……BPRS,SANS,WPRSなど
日常生活状況評価……チェックリスト……不足なら適切な訓練
患者教育の成果評価……チェックリスト

○働きかけの仕事
意欲・自主性
協調性
現実検討・現実性
これらを引き出すための工夫を考える。

1600
社会的入院のピックアップ基準

?医療としては問題ないこと
薬は安定している・コンプライアンス良好
陽性症状はあっても日常生活自立を妨げない状態が一年以上続いている
陰性症状はあっても日常生活自立を妨げない
病識あり
閉じこもりきりにならず社会生活を送れる(仕事ができる、またはデイケアや作業所に通える)
再発危険時に受診相談できる

?退院先の確保ができないこと
家族の受け入れが整わないこと(なぜ?)

?ホステルなどで試してみて、自立生活が可能であることが実証されていればなおよい。