こころの辞典1301-1375

1301
高感情表出
high EE(Expressed Emotion)
家族が患者に対して批判的で敵意を含む感情的な言葉を投げかけていると分裂病の再発率が高い。このことを「家族のhigh EEは再発率を高める」といっている。分裂病男子長期入院患者が退院したとき、家族と暮らすよりも単身で暮らす方が再発率が低いことが見いだされ、その原因として家族のhigh EEが問題になった。これは家族に「患者を怒ってはいけないということか」とショックを与えた。再発しそうな状態のときには家族は感情的になるだろうから、統計の結果としてはhigh EEと再発が相関があることになるともいう。逆にすっかり諦めきった家族は指導もしないし感情もこもらないからlow EEになる。結局ピリピリ緊張せず前向きな家族がいい。

1302
家族療法
family therapy
広い意味では家族を対象とする集団療法全般を指すが、狭い意味では特にシステム論に強く影響を受けた療法を指すことがある。システム論では、家族の個々の成員には異常はないが、家族間の関係の仕方に問題があるために、家族の一部に精神障害が発生していると見る。この立場では、症状を呈している一人を治療しても意味がなく、家族全体のシステムを治療する必要がある。精神医学の世界では現在は主流とはいえない。システム論は別にして、患者の療養環境としての家族に問題がある場合、家族全体を精神療法の対象にする場合がある。

1303
ストレス─脆弱性モデル
stress-vulnerability model
ストレスに対して人はいろいろな反応をする。食欲が増進する人もいれば眠れなくなる人もいる。ストレスに対して幻覚妄想状態で反応する人たちもいて、そうした人たちが精神病者であると考える。またたとえばストレスに対して自律神経系の症状で反応すれば心身症である。
古くから体質か環境かという議論があるが、ストレス・脆弱性モデルでは、脆弱性すなわちストレスにさらされると幻覚妄想状態になりやすい体質に、ストレスという環境が加わって発症すると考える。つまり体質と環境の足し算で精神病が成立する。
対策としては、薬剤で脆弱な体質を補正し、SST(social skills training:生活技能訓練)などでストレスを回避する方法を身につけ、この両面から再発を防ぐことを考える。

1304
否定妄想
delusion of negation
=コタール症候群(syndrome de Cotard)
自分の身体(の一部)の死滅、非存在を主張する妄想。「脳がない」などと訴える。うつ病でみられる。

1305
敏感関係妄想
sensitiver Beziehungswahn
クレッチマー(Kretschmer)の提唱したもので、心因性の妄想。クレッチマーの三徴候すなわち?敏感性格?逃れられない困難な状況?たいていは屈辱的な「鍵体験」の三者がそろったときに関係妄想や被注察妄想、被害妄想が発生する。これを敏感関係妄想という。妄想が心因性で了解可能であることを示した点が意義深い。なお、敏感性格は次の二極で特徴づけられる。?弱力性(無力性)……内気、控え目、繊細、傷つきやすい。?精力性(強力性)……名誉を重んじる、負けず嫌い、疑り深い、頑張り屋。

1306
幻覚?
hallucination
外界に対応する刺激がないのに知覚を生ずる現象。周囲の誰にも声が聞こえないのにその人にだけ声が聞こえる場合など。刺激が存在し、別の何かであると知覚するのは錯覚である。他の人たちには電信柱に見えたものが、その人にだけ人影に見えた場合には錯覚と呼ぶ。知覚の正しさは多数決によるものではないのだが、実際上は多数決と常識によっている。クーラーのうなり音に混じるように人の声が聞こえる場合には、機能性幻聴と呼び、病的な場合も正常の場合もある。シャワーの音の中に電話の音が混じりあわてるケースなどは、病気ではない場合でもしばしば生じる。幻覚は様々な疾患で生じるが、幻覚体験自体が病的とは言えず、幻覚の内容や持続、さらに背景の病理を検討する必要がある。専門家に相談しておくほうが安心である。
またたとえば幻聴を体験している場合、実際に幻聴があることと、幻聴があると妄想していることと区別できるだろうかという問題があり、難問である。たとえば「ヒトラーが私に命令している幻聴が聞こえている」と訴える場合、ヒトラーはドイツ語で語っているのか、日本語で語っているのかと問題にすれば、あいまいになることが多い。この場合は「ヒトラーが私に命令しているという妄想がある」と記述した方が適切な場合もあると考えられる。

1307
幻覚?
hallucination
「対象なき知覚」、「知覚すべき対象なき知覚」または「対象なき知覚への確信(conviction sur la perception sans objet)」。「確信」を重くみれば、妄想に近づく。知覚は感覚から意味までを含むので、その幅に応じて幻覚も考えられる。
空間の特定の場所にはっきりと存在すると固く信じられるものは真性幻覚であり、ひょっとしたら自分のイメージなのかも知れないと思えるものは偽幻覚である。
単純な要素的な音が聞こえてくる場合(要素幻覚)から、メッセージを明確に持った言葉が聞こえてくる場合(幻声)まで、様々である。メッセージまたは意味がより明確に付与されているほど、妄想に近くなる。
入眠時幻覚、出眠時幻覚は寝入りばなと覚醒時に現れる幻覚である。意識レベルが低下しているときに現れるもので、必ずしも異常とは考えられない。
幻聴のなかでも幻声が精神分裂病に多い。患者は幻声と会話をしたり(二人称幻声)、幻声同士がひそひそと自分のことを言っていると悩んだり(三人称幻声)、自分の考えが声になって困る(思考化声)と言ったりする。行為批評幻声は、幻声が患者の行為について「便所に行った」「薬を飲んだ」などとコメントを加えるものをいう。
幻触は「性器をいじくられる」などという訴えとなる。
人間は他の哺乳類に比較すれば圧倒的に視覚の動物であると思われるのに、幻視は幻声ほど問題にならない。それは他者からのメッセージ伝達が音声による言葉を介して行われることが多いからであろう。人間が言葉を頭の中に思い浮かべるとき、文字で、たとえば明朝体の青い字でなどは思い浮かべないだろう。考えが文字になって見えるのは、考想可視と呼ばれ、まれである。時間の流れを伴った音声言語で、ちょうど喉を少し震わせて発音するくらいの調子で、言葉を思い浮かべるのではないだろうか。
幻視は分裂病よりは器質性疾患で目立ち、たとえばアルコール性の幻視では小動物(ネズミやゴキブリ)が見えたり、腕をアリやクモがはいまわっていたりする。またアルコール症では圧迫幻視=リープマン現象が有名で、閉眼させて上眼瞼を圧迫すると、幻視が誘発される。
頭のうしろにものが見えるというときは、視界の外に視覚が成立しているわけで、域外幻覚と呼ばれる。
幻嗅、幻味については幻聴、幻触、幻視に比較すれば診察室ではあまり問題にならない。

1308
分裂病の定義
分裂病は本質が分かっていないので、本質的な定義はできない。ただ、医者が「分裂病」の診断名を使うとき何を意味しているかは業界の習慣として説明できるはずである。ところがそれも国によって、流派によって違いがある。もっとも広義の分裂病から、もっとも狭義の分裂病までを並べて、その考え方を検討してみると、たとえば以下のようになる。
?性格傾向を判断材料とする。分裂病ではうつ症状も神経症症状も出る。
?現実検討の喪失を基準とする。これは病態水準を見ていることになる。
?現在症とくに自我障害を基準とする。
?経過の特性を重くみる。シュープを反復する経過。しかしこれでは何十年も経ってからでないと診断できないことになる。臨床的には決定的に不都合であるが、これがもっとも病理の本質と関係しているかも知れない。
以上のように性格傾向、病態水準、現在症状、経過と並べると次第に厳格になってゆく様子がわかる。もう少し具体的に示すと、広い順に
・分裂気質+症状(ほとんどあらゆる症状)
・遺伝負因+症状
・ブロイラー:4A(陰性症状の強調)
・シュナイダー:一級症状・二級症状(自我障害中心)
クレペリン:経過分類・シュープ(段階的増悪)
などがあげられる。DSMはブロイラーとシュナイダーの混合である。

1309
転移
transference
患者が診察室で治療者に対して、これまでの人生の重要な対人関係を無意識に再生して感じたり行動したりすること。内的対象関係を投影しているといってもいい。治療者が具体的にどんな人なのかはっきりしないうちは、患者の過去の経験の中から類推するはずである。したがって転移は、治療者自身がスクリーンになってそこに患者の内面が映し出されているようなものである。これは患者の内面を知る大切な情報である。患者が治療者の前で見せる態度は、治療者を現実に把握した上での態度と転移による態度の混合物となる。これを見分けるのが大切で、かつ困難なことである。観察する治療者側にも逆転移が起こるので一層複雑になる。自分一人で考えるのではなく、複数のスタッフの目で考える習慣を持っておくと、次第に自分を客観視できるようになるだろう。また、スーパーバイザーがいれば役立つ。転移には陽性転移と陰性転移があり、陽性転移は治療者を好きになる方向の感情、陰性転移は治療者を嫌いになる方向の感情である。

1310
逆転移
counter-transference
転移は患者が治療者に対して抱く無意識の心の動きであるのに対して、逆転移は治療者が患者に対して抱く無意識の心の動きである。無意識層のことであるからコントロールは難しいが、逆転移が治療の妨げにならないように自己点検する必要がある。そのためにスーパーバイジングや教育分析が役立つ。

1311
転移神経症
主治医との関係に限定された神経症のこと。現在の神経症に対して精神療法を始めると転移が発生し、患者の心を占めるのは現在の葛藤ではなくて過去の葛藤になる。この状態では現在の症状はいったん消えるので転移性治癒という。一方で過去の葛藤が活性化されることにより別の神経症症状が発生する。これを転移神経症という。フロイト精神分析療法では神経症を転移神経症に変換し、症状を診察室内に限定した上で治療を進める。

1312
生活技能訓練
SST:social skills training
社会生活技能訓練
ストレス・脆弱性モデルと認知行動療法社会学習理論を基礎として、ロールプレイなどを活用して生活技能や対人行動を身につける訓練のこと。たとえば服薬自己管理や症状の訴え方、また買い物の仕方などを身につければ日常生活のストレスを減らすことができる。結果として再発を防止しつつ生活を拡大することができる。しかし日本の各病院に本来の好ましいSSTが根付くにはまだ時間がかかりそうである。

1313
視床下部
hypothalamus
視床の下にある部分で間脳に属する。自律神経の中枢であり、内分泌のセンターでもある。視床下部ホルモンは下垂体ホルモンの分泌をコントロールしている。

1314
ヤロムの集団精神療法の治療因子
ヤロムは個人精神療法に比して集団精神療法が治療的である理由を考察してまとめている。
(1)よくなるという希望をもつこと:実際によくなっている人をみれば納得できる。
(2)普遍性:病気で苦しいのは自分だけではないのだと気付く。
(3)情報:病気、薬、治療についての知識を深める。
(4)思いやり:愛他的行為により、自己評価を高める。
(5)家族関係についての修正感情体験:これまでの人生で十分でなかった家族関係を補うことができる。
(6)社会適応技術の学習:これこそ集団の中で学べる。ときにはSSTなどを用いる。
(7)行動を模倣する:よいモデルを模倣することができる。
(8)対人関係の学習:社会の中では優しい人ばかりではないが治療的集団ならば対人関係学習に適している。
(9)集団凝集性:まとまりができて帰属意識が生まれる。アイデンティティ形成に役立つ。
(10)カタルシス:ひとりでいると発散のしようがない。
(11)実存的因子:人間は連帯することによって強くなるのだと感じ取ることができる。

1315
離人症
depersonalization
ものの実感が感じられなくなる状態。本人は病識を有していて大変辛い。しかもその行動を見ているだけでは他人からは異常が分からない。特有の不快さで言葉にすることは難しいと訴える。伝統的に次のように分類している。
?内界意識離人症=自己の体験や行動の能動感消失=人格感消失(狭義の離人症
訴えの言葉は「喜怒哀楽が感じられない。つまらないとも思わない。何も感じない。頭が麻痺している。自分がやっているのは分かるのに、自分がしているという実感がない」などである。
?外界意識離人症=外界対象の実在感の希薄=現実感消失または非現実感
「自分のまわりにベールが一枚かかったかのようだ。実感がない。生き生きとした感じがない。見慣れているもののはずなのによそよそしい。」
?身体意識離人症=身体の自己所属感の喪失・自己感覚の疎隔=自己身体喪失感
「自分の体ではない。暑さ寒さの感じがない。自分の体が生きている感じがしない。」
これらの離人症状は精神分裂病うつ病神経症などで起こり、治療は原因疾患の治療を進める。

1316
老年期痴呆 →図
dementia in senium
アルツハイマー型老年痴呆と脳血管性痴呆を代表とする、老年期の痴呆症。老年期痴呆、老年痴呆、老人性痴呆などがあり紛らわしい。老人性痴呆はもっとも広い呼び方。それを年齢で区切った場合、65歳以降に発症したものを老年期痴呆、それ以前に発症したものを初老期痴呆と呼ぶ。病気の原因で区別すれば、脳血管性痴呆(出血や梗塞)、変性症(アルツハイマー病、ピック病)に大別できる。

1317
老年痴呆
senile dementia
アルツハイマー
アルツハイマー病はもともとは初老期の痴呆を指したが、65歳すぎに始まる老年期タイプの場合も病気の本質は同じであるということで、初老期も老年期も、アルツハイマー型の脳変性がある場合にアルツハイマー病または老年痴呆と呼んでいる。記憶障害、見当識障害、感情障害、性格変化、思考障害、行動異常などの痴呆症状が、血管性痴呆に比して直線的に進行し、全般的痴呆を呈するに至る。初期から病識に乏しい。ピック病ほどではないが早期からの人格障害があり、神経学的症候や脳局所症候が目立たないことが特徴である。脳萎縮や脳室拡大がCTやMRIで確認できる。治療には脳代謝改善薬などが用いられる。

1318
コラム
痴呆は治るか?
「痴呆は治らない」という先生と「痴呆も治る」という先生がいるが、どちらが正しいだろうか。
医者の用語としての痴呆は脳の不可逆性の変化を指しているから、脳病理に厳密な先生は「痴呆は治らない」といわざるを得ない。治らないものを痴呆と呼ぶからだ。しかし臨床の実際では「ひどい物忘れ」から始まる一連の病態を広く痴呆と呼んでいるから、その症状の中には非痴呆性の可逆的なものも含まれている。そこで「痴呆にも治るものもある」ということになる。
もうすこし詳しくいえばこういうことだ。老人性痴呆の症状の中には、神経細胞の変性(これが不可逆的)による「中核症状」と、それ以外の「周辺症状」(これが可逆的)とがある。この見極めが大切である。たとえば尿失禁の場合、脳の排尿中枢の神経細胞が変性した結果の尿失禁であれば治らない。そうではなくて、反応性の症状であれば、環境調整したり薬剤を工夫すれば回復する可能性がある。物忘れにしても、中核症状として起こっているのか、それとも意識障害などの結果起こっているのかで回復するかどうかが違ってくる。意識障害を治療して結果として物忘れが治ったという場合、専門的には「痴呆が治った」とはいえないが、一般には「痴呆が治った」といっても間違いではないだろう。

1319
フォン・ドマールスの原理
述語の一致から主語の一致を結論したり、部分の一致から全体の一致を結論する思考法を古論理的思考あるいは述語論理、フォン・ドマールス(von Domarus,1944)の原理と呼ぶ。アリエティは「聖母マリアは処女である。私は処女である。だからわたしは聖母マリアである。」「スイスは自由を愛している。わたしは自由を愛している。だからわたしはスイスだ。」などを例としてあげ、このような形式の思考は古代人の神話、未開人の神話、幼児や分裂病者にみられるとしている。また、ただしこのことは未開人や分裂病者の劣等性の証拠ではないと注意している。アリエティによれば未開思考と分裂病性思考との類似点は分裂病者の妄想を理解する手がかりになる。ほかには決定論因果律に対する目的論的因果律分裂病理解の同様に手がかりになるとしている。

1320
自我親和的と自我異和的(または違和的)
ego syntonic and ego alien(またはdystonic)
欲求、思考、感情、行動、妄想、症状などが自分にとって親しみを持って受け取られるものか、逆に違和感を持って受け止められるものかを示す言葉。たとえば幻聴が自我異和的な場合には悩んで治療を求めるが、幻聴を自我親和的に感じるようになると病気とは考えなくなる。ある分裂病の人は「聞こえているのは幻聴ではないんです、耳の奥に子供がいるんです、聞こえなくなると寂しくてね」と自我親和的な幻聴を教えてくれたりする。

1321
添え木療法
急性期を過ぎて落ち着いた分裂病者に妄想を再燃させる刺激を与えると微小再燃が起こる。この賦活再燃現象を治療目的で引き起こし、再燃から回復に至る過程を経験してもらい、病気に対処するこつを会得してもらう。この過程で治療者は「添え木」の役割を果たす。社会復帰を目指す時期には患者が主体となり治療者が添え木になることを指摘していて特に意義深い。

1322
「すっぱいブドウ」で防衛している人の精神療法 →没
「あの人が好きだと思っていたけれど、あの人は奥さんとは別れられないと言った。そうしたら急につまんなくなった。本当は彼を好きじゃなかったことがわかった」と語りつつ、仕事に集中できないOLさんの場合。
「すっぱいブドウ」は防衛機制の中の合理化に属し、「甘いレモン」と対照的である。ブドウが食べたいと思ったのにかなえられなかったとき、あのブドウはすっぱいからむしろ食べなくてよかったと自分を納得させる。しかし心の奥底ではやはりブドウは食べたいのである。その欲求を抑圧するために理由をつけている。ときにはこれが成功せず葛藤に悩むことがある。その場合は治療として「自分は本当はブドウが食べたいんだ、あのブドウがすっぱいなんて言い訳だ」とはっきり悟ってもらう方法がある。また、「あのブドウを食べるかどうか、すっぱいかどうかにこだわらないで、もっとおいしいオレンジを探しましょう」と目標の再設定を勧める方法もある。前者は直面化の技法、後者は隠蔽の技法である。

1323
ストックホルム症候群
stockholm syndrome
ストックホルムで起こった銀行強盗事件の人質が、強盗に好意的になり警察に対して敵意と恐怖を示した。強盗の寛大さに感謝したりもした。このことから、強盗や監禁に際して被害者が加害者に対して陽性の感情を抱く状態をストックホルム症候群と呼ぶ。拡張した用い方として、家庭内暴力などの日常の暴力的関係の被害者が加害者に対して逆説的に好意を抱く状態を指すこともある。

1324
文化結合症候群
culture-bound syndrome
限定された地域の特殊な文化的背景のもとでみられる精神病状態で、マレー半島のラターやアモク、日本ではアイヌのイム、沖縄のカミダーリィなどがある。現地の人は病気とは考えていない場合がある。

1325
睡眠相後退症候群
人間の概日リズム(サーカディアンリズム)は約25時間であり、現代人はこれを24時間周期の社会生活時間に合わせて生きているのが通常である。社会生活時間に合わせられなくなる状態のひとつに睡眠相後退症候群があり、夜寝付きが悪く朝起きられない状態が慢性的に続く。たとえば午前2時に寝て午前11時に起きるので社会生活に支障が出る。出社困難や登校困難の一部をなす。治療は高照度光療法、ビタミンB12メラトニンベンゾジアゼピン系入眠剤、入眠覚醒時間を計画的にずらしてゆく方法などがある。

1326
セロトニン症候群
serotonin syndrome
主に抗うつ剤の投与中に発症する副作用で、下痢や自律神経症状が中心である。脳内のセロトニンが過剰になるためと推定されているが詳細は不明である。

1327
ラビット症候群
rabbit syndrome
抗精神病薬の投与中に出現する、口唇をすばやく規則的に開閉する不随意運動を指す。うさぎの口の動きに似ていることから名付けられた。薬剤性パーキンソニズムに近いもののようで抗コリン剤で改善する。

1328
対人距離
他人との心理的な距離のこと。分裂病の人たちは一般に人見知りで躁うつ病の人たちは一般に人なつっこい。このことを分裂病者は対人距離が遠く、躁うつ病者は対人距離が近いという。また別の観察によれば、対人距離の取り方が硬直していて、はじめは遠く、ある時点で急激に接近しすぎるといったようにぎこちないのが分裂気質の特性である。

1329
レム睡眠とノンレム睡眠
REM period,NREM period
睡眠はレム期とノンレム期のふたつに分けられる。レム期とは急速眼球運動 Rapid Eye Movement の頭文字をつなげてREMと呼んでいるもので、この時期にはまぶたの下で目がきょろきょろ動いているのがわかる。夢を見ていることが多い。眠っているのに覚醒型の脳波パターンを呈するので逆説睡眠とも呼ばれる。主に身体の眠りで、ノンレム期よりも系統発生的に古い。一方、ノンレム期は大脳の眠りである。

レム             ノンレム
逆説睡眠 正睡眠
急速眼球運動・夢多い
体動あり・動睡眠 静睡眠
ノルアドレナリン    セロトニン
自律神経全般に低下・不安定 副交感神経優位
体の眠り 大脳の眠り
古い 新しい
年齢によらず一定 赤ん坊で少なく・成人で多く・老人で少ない

1330
役割
role
精神分裂病者は社交技術が拙いため集団参加が苦手なことがある。世間話をしながらだんだん集団に溶け込んでいくことができない。その場合には治療者の側で役割や係を決めてあげたほうが集団参加がスムースにゆくことがある。

1331
頭蓋内脳動脈瘤
intracranial aneurysm
先天的なものが多く、脳底動脈に多い。大きくなると動眼神経を圧迫して動眼神経麻痺を引き起こすことがある。破裂して出血すると致命的なことがあり、40〜50歳代に好発する。脳ドックなどで早く見つければ死なないですむ。

1332
受容?
acceptance
他人を受け入れ、肯定すること。カウンセラーの患者に対する態度として用いるときには、患者の何を受け入れ肯定するかによって、違いが生まれる。いわゆる受容派は患者を人格として無条件に受け入れ尊重し、あるがままのその人全部を受け入れる。ここに価値判断はない。アンチ受容派は患者の心の健康部分を受け入れる。
ロジャーズは受容を「積極的・肯定的関心」と同義であるとしている。またカウンセラーと患者の両方が「私は理解され受け入れられている」と感じている状態が真の受容であるとする。
受容派と反受容派の考え方の違いは人間観の違いにもよるが、おもに対象としている患者の病理の違いによるとも考えられる。全面的に受容すれば育ってゆく患者は病理としては深くないといえる。病理の深い患者には受容と非受容の両方を適切に使う必要がある。
たとえば、母親は子供の全部を深いところでは受容している。しかし浅い部分では教育の方法として部分的反受容を用いるのである。治療者の態度としてもこの区別が必要である。
治療者が受容という言葉に縛られて、きちんと指導できないことがある。受容が必要な場面と指導が必要な場面とを区別する必要があるだろう。

1333
受容?
acceptance
カウンセラーのクライエントに対する態度として、受容がある。ロジャーズによれば「無条件の肯定的・積極的関心」と同義であり、クライエントをひとりの人格として重んじる態度である。しかしこのことはクライエントの現状を無批判に肯定することではない。カウンセリングとは批判することではないが無条件に肯定したり受容したりすることではない。無条件に関心を持つことと無条件に受容することとは全く違う。
受容すべきなのは患者の今現在外にあらわれているままの言葉や行動ではない。よく生きたいと願うクライエントの心を受容するのである。その人の健康な自我と同盟するという「自我同盟」と似たところがある。
クライエントの現状ではなく、可能性を受容すると表現してもよい。
このように見てくれば、よく生きるとは何か、現状よりも他の可能性がよいのかなどについて価値観が入り込む。治療にセラピストの個人的な価値判断が過剰に入りこむことのないよう、自己コントロールするのがプロである。
無条件の受容は治療的退行を引き起こす。それは治療効果を狙ったうえでの意図的な退行操作であれば許される。どのようなクライエントに治療的退行が有効であるのかを厳密に見極める必要がある。治療者によってまた施設によって方針が違うだろうが、我々としては生育の歴史の中に葛藤の根源があるタイプの神経症に限って、治療的退行が適応となると考えている。その他の場合には、退行操作は自我の脆弱性を亢進させてしまうので、禁忌である。このような事情から、受容的態度の前に、正確な診断が不可欠である。

1334
受容?
acceptance
カウンセラーがあるがままのクライエントを無条件に受け入れること。他者に無条件に受容されるという体験には人間を変える力がある。それまでの人生で、無条件の受容を経験してこなかった人の場合には特に大きな影響を及ぼす。
しかし一方で受容的態度は退行を促進することもある。退行が治療として有効かどうかを見極める力を持たないと悪い結果を招くこともあり、カウンセラーとしても危機に至ることがある。こうした見極めに専門性が発揮される。
退行的面接とは逆に、現実検討を高めるカウンセリングも大切である。これも受容的態度で可能である。

1335
カウンセリングの治癒因子
図を参照。?治療構造?専門知識?人格(自己一致)にわけて説明する。
?まず重要なのが治療構造である。時間、場所、その他いろいろな約束。治療構造がしだいに内在化されてゆく。それはクライエントが社会化されてゆくということでもある。
?専門知識はカウンセリングの中心である。薬、性格、行動、症状などに関するアドバイスであったり、ともに考える姿勢であったりする。
?人格の影響は患者の深層に浸透してゆく。患者の成長は実はこのレベルで起こる。ここで大切なのはロジャーズのいう自己一致(congruence)の原則である。治療者自身が言葉と行動、感情を一致させ、さらには本来の自己と現在の自己を一致させることである。この点での不一致を見てしまうと患者は治療者を信頼しなくなる。
?は意識のレベルへの影響、?は無意識のレベルへの影響と考えてもよい。治療者としても、?は意識的にコントロールできるが、?はコントロールできない部分もある。

1336
コラム
カウンセリング
カウンセリングで何が大事か、何が原則かという問題についてはいろいろなレベルで答えがある。ロジャーズはカウンセラーに大切な態度として?自己一致?共感?積極的関心?無条件の関心の四つをあげている。ここではカウンセラーの成長の度合いに応じてみていこう。
?もっとも低級の答えは、「自分の考えを押しつけず、クライエントの話を傾聴する」といったものである。カウンセラーの「自分」を消去することが求められる。しかしただ単に傾聴と受容になってしまう場合もある。
?受容だけでは務まるはずもないので、ときに対決・説得・助言の場面も必要になる。「自分を出す」ことになる。しかしこれと「自分の考えを押しつける」こととの違いを明確に意識していなければならない。これは難しいが、結局高いレベルの常識があるかどうかということになるだろう。しかしそのような世間の常識というものは、世間で世間並みに仕事をしているからこそ得られるのであって、診察室で話を聞いているだけでは充分に身につかないものかも知れない。カウンセラーはたとえばサラリーマン以上に世の中や人間について知っているかといえば、疑わしい。逆にカウンセラーは何も知らないが安定はしている、それだけでも価値があるのかも知れない。
?さらに高級になると、再びカウンセラーの「自分」というものが消える。
?さらに高次になると人間の深い部分での交流になる。これは実際の社会生活の中でもまれにしか存在しない。

1337
集団精神療法の言葉
集団を記述する言葉とメンバー間の関係を記述する言葉を我々は十分に持っているかが問題である。我々の現状では、個人の内面から見た対人関係を記述する言葉が多い。対人関係そのものに焦点を当てた言葉、集団そのものに焦点を当てた言葉が不足している。集団のことや対人関係のことは、個人の内面の記述に還元できないからこそ、集団の心理学がある。集団を観察し記述し介入するための前提として、必要十分な言葉を持つこと。たとえばビオンなどを勉強することから始める。
集団全体を記述することと、個々のメンバーについてカルテを書くこととの間には越えられない溝がある。力学でも熱力学は個々の粒子についてではなく全体の記述を工夫している。

1338
集団精神療法の技術
?集団設定
デイケアなどの集団精神療法では、集団を編成するにあたって、どのような性格の集団として設定するのかがまず第一に重要である。参加者は何人にするか、年齢、性別、疾病、病態レベル、社会機能レベルをどのように設定するか。時間、場所、休むときの連絡の要否、自由参加か限定参加か、参加の目的、結果の評価方法、家族との意思統一、途中参加の可否、卒業制か否か。集団設定としては、退行のレベル設定も大切である。どこまで現実的でどこまで空想的な集団であるか。
個々のメンバーについて参加の可否を検討するときに重要なこととしては、対人関係パターンの把握、集団内での振る舞いについての予測、患者の目的とそれがどの程度達成されるかの予測、目的達成のための必要条件と乗り越えるべき困難、患者にどんな役割を期待するかなどがあげられる。
治療者は自分でメンバーを選ぶことが大切である。集団精神療法で何をしたいかは、どんなメンバーを選ぶかということとほとんど同じである。
?集団運営
つぎに集団運営の問題としては次のような項目があげられる。プログラム内容はレクリエーション主体か訓練的か。リーダーシップのあり方。個人精神療法との組み合わせ方。患者への情報のフィードバックの仕方。治療者間の役割分担の仕方(A-Tスプリットなど)。特に、集団場面の指導と、個人精神療法での指導とを組み合わせる技術が大切である。それぞれを異なる治療者が担当するのがよいかも知れない。
?集団の無意識
集団の動きを把握するにあたっては、グループ全体の無意識が治療者に向かって反応を起こす場合やその逆の場合など、転移逆転移を個人の無意識と集団の無意識との間に考える必要もある。

1339
コラム
相貌化について
色盲検査の絵を見たときに、最初は何だかよくわからなくて、しだいにくっきりと絵が見えてくることがある。
よく見慣れている漢字なのに、何かの拍子に違和感を感じることがある。法律の法は「サンズイに去る」などと分解して考えると腑に落ちない。しばらくしてまたいつもの感じに戻る。
雲や木目をじっと見ているとアイスクリームや人の顔が浮かび上がってくることがある。しかし一瞬の後にはただの雲や木目になる。
こうしたことがらを「相貌化」という考え方で説明してみよう。相貌とは顔かたちという意味であり、相貌化は「形が意味を持つようになる」といったような意味である。
形+相貌化=意味のある形としての認知
と表現できる。リンゴのリンゴらしさを描く芸術はこの相貌化作用と深く関係している。
色盲検査の場合には、少しの時間をかけて相貌化作用が進行するわけだ。また、見慣れた漢字が意味のない形に分解してしまうのは、「脱相貌化」である。相貌化が戻って来ればまた意味のある普段の漢字になる。雲や木目が意味のある形に見えてしまうのは「過剰相貌化」である。通常の相貌化に戻るとただの雲と木目になる。
さて、相貌化作用が欠如している病気があるとして、どのような症状になるだろうか。机を見ても机という意味のまとまりとならずに木の板があるだけと感じられる。それが通常は机といわれているものだとはわかる、目的もわかる、しかしそれは頭で理解しているだけで「机の実感」が欠けている。テレビを見ても、色の粒子が見えるだけの感じだ。風景は絵葉書のように平板で、生き生きとした感じがない。目に見える形を実感を伴う生き生きとしたものとして把握する「何か」が欠けている。これが脱相貌化の状態であり、精神医学でいう離人症である。
逆に、相貌化作用が過剰になる病気があるとして、どのような症状になるだろうか。壁のシミは人の顔になり私をあざけり笑っている。鳥の鳴き声はスパイの通信になり私を陥れようとしている。家族のなにげない挨拶は世界の破滅の合図になる。ものごとに過剰な意味を付与している状態であり、精神医学でいう幻覚妄想状態である。
離人症や幻覚妄想状態のすべてを説明するものではないが、一部はこのような成り立ちをとっているものと思われる。特に、一人の患者さんが離人症と幻覚妄想状態の両方を体験している場合には相貌化作用の不安定として説明できる可能性がある。

1340
絵画療法
art therapy
言語チャンネル以外の表現のひとつである絵画を利用した精神療法。レクリエーションの意味あいが強いものから、診断的意義が強いもの、治療関係を作る方法としてのもの、カタルシスを狙うもの、さらにはイメージの世界の再構成を狙うものまで、幅広い。
具体的に紹介すると、
?空間分割法。画用紙に線を引いて画面を分割し色を塗る。
?なぐり描き法。スクリブル(scribble)法では、自由になぐり描きした線に色を付ける。スクイグル(squiggle)では治療者と患者が交互になぐり描きと色付けを行う。
?バウム・テスト。木を描いてもらう。
?人物画。グッドイナフ。人間の全身像を描く。
?風景画法。TPH(木、人物、家)をセットで描くものや川、山、田、……と順次描く風景構成法がある。
?家族画法。家族が何かしているところを描く。
このなかでも風景構成法が特に有用である。

1341
風景構成法の?方法
中井久夫の創案になる。はじめは箱庭療法への導入の適否を判定する資料としての意味あいもあったという。
B5のケント紙にサインペンでまず枠を描く。枠なしの技法もある。川、山、田、道、家、木、人、草花、動物、岩・石・砂、その他つけ加えたいものの順に描く。次にクレヨンで色を付ける。最後に味わいつつ、絵についてすこし話す。診断の意味もあり精神内界の再構成の意味もある。患者は解釈を聞きたがるが、一枚の絵ですべてが分かるというものでもない。中井はP型(paranoid)とH型(hebephrenie)に分けている。解釈はこの程度が妥当であると思う。
生活で観察される精神機能から推定される風景構成と、実際に描いた風景構成が著しく食い違うことがある。予想外に高く出る場合と、予想外に低く出る場合とがある。このあたりも診断的価値がある。
風景構成法の難点は、絵の上手と下手とでは所見の意味が違ってくることである。人が線画になったとして、書き慣れていない、または下手であるということなのか、人間に対する態度の何かが反映されているのか、線画という所見だけからははっきりしたことは言えないだろう。この難点を解消する技術が求められる。

1342
風景構成法の?解釈
治療者はクライエント個人に特有のイメージシステムを理解し、それを前提として解釈する。たとえばうさぎが描かれたとして、それは何を意味するのかと考える。その際に、昔の夢分析ハンドブックのように公式の当てはめになってはいけない。そのイメージはその人の心のどの層のどの部分から出てきたのか、その人の心に即して考察する必要がある。一般化しすぎることは危険であり、むしろ内容ではなく形式を解釈する態度が必要である。ロールシャッハの解釈に似ていると考えてもよい。
各個人の内部のイメージシステムを個人的意識、個人的無意識および集合的無意識に分類して考える。個人的無意識とは個体発生(生育歴)の途上で蓄えられたもので、集合的無意識とは系統発生の途上で蓄えられたものである。各アイテムがどの層から出現し、どの層の加工を受けたものかを考えることで、患者の病態レベルを推定できる可能性がある。
逆に、絵画などで表現することによって、イメージシステムが次第に明らかになる面もある。治療に伴って変化もする。その変化を患者治療者で共に味わうことが大切である。
風景構成法にも、陽性所見と陰性所見が含まれている。たとえば、他の構成度は高いのに、人が線画になっている場合。また、家だけが色を塗られず放っておかれている場合。これらはいったん高度に構成されたものが部分的に解体したものと見なすことができるだろう。これは強いサインである。

1343
風景構成法の?治療的意義
自分を表現する手段として言葉とは別の経路を使うことにまず意義がある。つぎに治療者との関係も言葉を解したものとは別のものになる可能性がある。さらには「風景構成の再獲得により、世界連関を再獲得する」ことができれば治療的である。しかしこれが可能かどうかははっきりしない。「世界連関の再獲得は風景構成の再獲得につながる」ことは確かだと思うが。

1344
風景構成法における?観察自我
自分で描いた絵を下手だとか、不自然だとか評価できる場合も多い。この場合には、描く機能としての風景構成(世界連関)は失われているが、それを観察して評価する部分の風景構成は失われてはいないことになる。これはまた考えてみれば、体験自我と観察自我の分離を前提とした場合、観察自我は解体されずに保持されていることを示している。従って治療も観察自我と共同すること(治療同盟)が有効であることになる。

1345
隔離
isolation
=孤立
本来は結びついているはずの思考、感情、行動などを別々に区切ること。たとえば屈辱感の記憶を感情を抜いた調子で語る場合など。決まり文句や儀式的行為にみられる。フロイト強迫症に特徴的と述べた。

1346
解離
dissociation
=分離
意識の一部分が全体から分離され、あとで健忘が見られること。解離性ヒステリーの場合の解離である。二重人格の場合など。
「分離」には文脈によってdissociation,isolation,splitting,separationなどの言葉が対応するので注意が必要である。

1347
被害妄想
persecutory delusion
妄想に基づいて、自分は被害を受けていると確信している状態。精神分裂病に多く、老年期痴呆でもしばしばみられる。
分裂病で被害妄想が圧倒的に多いのは、被害的な感じ方が人間心理の基底状態として存在しているからであると思われる。何かの妄想が発生する条件が整ったとき、人間は一般に被害的な内容を注入するものだということだ。そのくらい臆病であった方が身を守り、種を守ることができたはずである。しかしときにはその傾向が行き過ぎた形であらわれて被害妄想になる。
また別の考えによれば、分裂病状態のときには世界は見慣れない異様な場所として体験され、まるで言葉も通じない異国で一人さまようような心細さであると言われる。そのような場合に人は過敏で被害的・警戒的になる。この指摘によれば、被害的状態は反応性であり、了解可能であるとさえいえる。被害妄想は原発的に生じるのではなく、最初のプロセスは世界が混乱し意味不明となることで、それに対する反応として被害妄想が生じる。
このような考え方が生まれるのも、分裂病の症状として他の妄想に比較して被害妄想の出現が非常に多いからである。

1348
夢?
dream
夢の不思議さを経験した人は少なからずいる。人生の大切な決定を夢に後押しされた読者もいるのではないか。昔から夢のお告げは重要であった。年寄りは「夢見が悪いから何か悪いことが起こるかも知れない。気をつけるように」などと子供に言ったものだ。火事の夢を見たらどういう意味だとか、そのような夢判断の本は昔から盛んでいまも売れている。
1900年にフロイトが「夢判断」を発表して、新しい世紀が始まった。フロイトは夢は無意識への王道であると考えた。無意識の内容は普段は抑圧されているが、睡眠中は検閲がゆるんで圧縮、置き換え、象徴化などのメカニズムにより夢に加工される。これらのメカニズムの逆をたどれば夢から無意識内容にたどりつけるはずである。その後フロイトは夢よりも自由連想法を重んじたが、ユングは夢を積極的に治療に用い、夢には心のバランスを回復させる機能があると考えた。
現代の心理療法でも夢を題材とすることがある。夢は主にレム期に見るもので、大脳皮質機能が低下し脱抑制状態になり下位層の機能が出現する。ちょうどその層で問題が起こっている場合には夢を題材とすれば治療的である。
またタイミングがよければ夢はそれ自身がカタルシス効果を発揮する。
河合隼雄に「明恵 夢を生きる」の著書があり、夢に関心のある人には薦められる。

1349
トランスパーソナル心理学
transpersonal psychology
「超個心理学」と一応訳しておく。自己実現からさらに一歩進んで「自己超越」を視野に入れる。ユング集合的無意識を前個的無意識(過去の無意識)と超個的無意識(未来の無意識)とにわけて考え、超常体験や至高体験、宇宙意識などを単なる病気とせずに通常の意識以上のものとして扱おうとする。ケン・ウィルバーやスタニスラフ・グロフを吉福伸逸らが紹介している。宗教体験やニューエイジサイエンスをも取り入れている。

1350
比較文化精神医学
transcultural psychiatry,comparative psychiatry
文化と精神病の関係から始まり、異文化が出会うときの精神病の発生、さらには伝統文化と近代テクノロジー文化の出会いと精神病の発生などを研究する分野。精神病の病像理解には個人の脳病理を研究するだけでは不十分で、文化状況を含めた発病状況をみることが大切である。

1351
強迫症
obsessive-compulsive disorder(OCD)
強迫性障害強迫神経症
強迫症状とは、自分としては出てきてほしくないと思っている考えや感情、行動が意志の力ではやめられない状態を指す。確認強迫や手洗い強迫が典型であり、思考、感情、行動は自我異和的であることが特徴である。思考や感情の内容が不合理、反道徳、自分の趣味に合わないなどの点で自我異和的であることもあるし、思考の出現する時と場合が不都合でそぐわないことから自我異和的と感じられることもある。その出現は「圧倒的」であることが特徴である。
軽度の場合には一種の癖と思われている場合もある。爪をかむことなどがその例である。たとえば完全癖といわれる程度に薄まれば、症状というよりは性格傾向のひとつと考えられる。強迫性格は几帳面、完全主義、自己中心的、堅苦しさ、秘められた攻撃性などが特徴である。
ジュディス・ラパポート著「手を洗うのが止められない」(晶文社)は、強迫性障害にどんなに多くの人々がどのように悩んでいるかをいきいきと描いており、一読の価値がある。
清潔強迫の裏側には不潔恐怖がある場合があり、確認強迫の裏側には自己不確実性性格がある場合があるなど、症状の成り立ちの考察も面白い。
無意味であると一方では考えながら、一方ではそれをやめられない。しかもどちらも自分自身の考え・行動である。こう考えれば、一種の自我障害としてとらえることができる。
強迫症状がある場合、背景にうつ病精神分裂病がある場合もあり、また特にそういった背景はなく強迫症または強迫神経症と呼ぶべき場合もある。背景病理によって治療は異なるので、診断は専門医に相談すべきである。うつ病を背景に持つ強迫症精神分裂病を背景に持つ強迫症、さらにそれ以外の強迫症の違いがどこにあるか、同じものなのかという問題については、興味深いが確定的な結論はないのが現状である。
かつてはフロイトによる精神分析的理解が主であったが、クロミプラミン(商品名アナフラニール)などの三環系抗うつ剤ブロマゼパム(商品名レキソタン)などの抗不安薬がよく効くことが知られてからは、脳内神経回路の問題として考えられることが多い。特に、人類の歴史をさかのぼり、過去のいずれかの時点で適応的で有利であった行動が脳の神経回路として残存し、それが現在の生活には不適応であるのにひょっこり顔を出してしまったために強迫症状が生じるといったタイプの解釈がなされている。
人間社会に広く分布する儀式や迷信を考察するにあたっても重要な視点となる。特に宗教と倫理の方面では強迫性格者の果たす役割は小さくない。文学者倉田百三は、数字を加減乗除しないではいられない強迫症や、いろはを最初から最後まで何度も繰り返し唱える強迫症など、自身が体験した多彩な症状を書き残している。

1352
コラム
強迫症の診断
「何度も皿を洗ってしまうんです」と訴える人を単純に強迫症と診断してよいわけではない。
ただ単にある行為を反復するだけでは強迫行為とは言えない。?不合理性の自覚?行為や思考の自己所属感がある?自己能動感が希薄になり自動性が高まるなどの指標が必要である。
例えば、皿洗いや手洗いを反復している患者について、「皿が何回洗っても本当に汚れているから」とか「洗い終わって水切りかごに立てるときに汚れてしまう、気のせいではなく本当に」といえばそれは妄想に属する。
「皿が何回洗っても汚れているような気がする」「そばにいる人にもうきれいになったよといってもらうと安心して皿洗いをやめられる」というなら、自信欠乏者である。
「皿がきれいになったことは分かっているけれど、何となくやめられない、十回だけ洗おうと決めている」「まだ汚いという考えがひとりでに浮かんできてしまう。本当はきれいになっていると感じてはいるが、その考えが浮かんでしまうとまた洗わなくてはいけない」などというなら、強迫症である。
「洗ったかどうか忘れてしまう」という場合もある。これは記憶の病理である。
実際に洗い方が悪くてきれいにならないから何回も洗う場合もある。これは不器用。
また、強迫症で「まだ汚い、また洗わなくてはならない」という考えが浮かぶ状況の中で、その人の洗い方が実際に下手で汚れがいつも残るとしたら、思考内容と現実は偶然一致しているわけである。この場合には強迫症は隠蔽される。
用語の厳密な用い方の一方で、体験の構造をあまり問題とせずに行為の外観だけで強迫行為と名付けていることも実際の臨床場面ではあるので注意を要する。
強迫は脅迫とは全然違うけれども、診察室で「わたし脅迫症なんです」「息子は脅迫的になってしまって」などと語る人たちもいる。これも注意を要する。

1353
不安障害
anxiety disorder
神経症性不安を共通項としてまとめて考えて、次のような疾患を不安障害と呼ぶ。?不安神経症(パニックディスオーダー)、心臓神経症過呼吸症候群、?恐怖症。たとえば対人恐怖症、空間恐怖症、単一恐怖症、強迫神経症など。?全般性不安障害
不安には現実不安と神経症性不安がある。現実不安は現実の状況に対する相応の反応であるのに対して、神経症性不安は現実の状況とは相応しない過度の不安である。パニックのときの不安には、死ぬほど怖い、我慢できない、自分をコントロールできない、人に分かってもらえないなどの特徴があり、呼吸困難、心悸亢進、胸痛、窒息感、めまい、手足のしびれ、発汗、ふるえ、気が遠くなるなどの身体症状が伴う。
神経症性不安にはパニックと全般性不安がある。パニック発作を引き起こす明確な外部刺激のある場合には恐怖症であり、外部刺激なしにひとりでに起こる場合はパニック障害である。
パニックはないものの、普通少しだけ不安になるようなさまざまなイベントに際して、釣り合わないほどの不安を抱くのが全般性不安障害である。たとえば子供のピアノ発表会や会社の朝礼などに対して過度の不安が起こる。人生はさまざまなイベントの連続であるから、不安が持続する結果になる。

1354
パニック障害(パニックディスオーダー)
panic disorder
=恐慌性障害、不安神経症
不安障害の中で、パニック発作が主徴となるタイプのもの。パニック発作に類似の体験を探すと次のようなものである。
たとえばあなたが道を歩いていたら、大きな犬が向こうから歩いてきたとする。近づくにつれて心臓はどきどきする、息は詰まりそうになる、冷や汗がでる、口は乾く、だんだん血圧が上がる。そばには飼い主もいるし、鎖もついているから噛みつかれることはないと思うが恐くてたまらない。いよいよ一番近づいたときにその犬は大きな声で「ワン!」と吠えた。何かにガツン!と殴られたような衝撃で、息が止まるかと思った。鳥肌が立った。脈拍は頂点に達し、失禁しそうだ。足がすくんで動かない。犬が通り過ぎてからも体ががたがた震えている。本当に死ぬかと思った。しばらくたってようやく歩けるようになった。家に帰るまでずっとめまいがしていた。「ただいま」の言葉も言えなかった。鏡を見ると顔面蒼白だった。水を一杯飲んでやや落ち着いた。強く握った手のひらは白く冷たくなっていた。
このような事件がパニック発作に似たものである。二度と経験したくないものだ。犬に吠えられるのも嫌だが、不安発作はもっと嫌なものだという。原因が分からないし、強度も強く質的にやや深い。
このような激烈な体験であるから、また起こったらどうしようかと持続的な不安に支配されるようになる。これを予期不安と呼ぶ。パニック発作よりは弱い不安である。二度と同じ目にあいたくないと考えて危険を回避するようになり、回り道をしたりする。これを回避行動と呼ぶ。特にパニック発作が起こったときに逃げられない場所や助けが得られない場所を回避するようになればアゴラフォビア(または広場恐怖、空間恐怖)を伴っていることになる。
治療はイミプラミンやアルプラゾラムが有効である。アルコール、カフェイン、麻薬、覚醒剤などがパニックを惹起することがある。寝ているときでもパニック発作が起こることなどから、原因については心因性の見方から生物学的な見方へ移行しつつある。
診断に際しては予期不安の有無と広場恐怖の有無について記載し、パニックの起こる状況について誘因物質も含めた詳細な問診が必要である。

1355
恐怖症
phobia
具体的な対象や状況に対して強烈な不安を感じる状態。不安障害のひとつであり、広場恐怖、対人恐怖、不潔恐怖などがある。対人恐怖には加害妄想や被害妄想の側面があったり、不潔恐怖は清潔強迫としてあらわれたりなど、他の病態との重なりも考慮する必要がある。
都会のクリニックでは「電車恐怖症」が問題となる。電車に乗ることができない点では共通であるが、妄想状態、うつ状態、性格障害、アルコール症、対人恐怖症などさまざまな状態を背景に持っているので鑑別診断が大切である。

1356
コラム →没?
恐怖症と妄想
外部現実についての訂正不可能な誤った確信は妄想であるが、「内部現実」(つまり自分の感情や信念)に関しての訂正不可能な誤った確信については何と呼んでいるだろうか。たとえば「私は胃ガンだ」と言うのなら、調査の結果「心気妄想または疾病妄想」などと言える。しかしたとえば「私は電車が恐い」と言う場合にはどうなるだろうか。
自分の心の状態について妄想を抱いているときには、他人はそれを妄想と言うことはできない。「頭を冷やせ」と言えるだけである。たとえば、恋愛の場合や宗教的確信の場合がそうである。「自分は愛している」「自分は信じている」との主張に対して、他人は「妄想」と判定することはできない。
「私は‥‥が恐い」と言う場合、これも検証できない性質のものである。本当に恐いかも知れない。しかしそれは妄想かも知れない。厳密にいえば本当に怖い場合は恐怖症で、妄想の場合には妄想状態である。これは区別できるのだろうか、区別すべきだろうか。

1357
アゴラフォビア
agoraphobia
=広場恐怖、空間恐怖
本来の語義は、アゴラすなわち広場、街、マーケット、人混みの中などに行くことに対する恐怖症ということであるが、DSM診断でパニック障害の診断に際してアゴラフォビアがあるかどうかが問われる場合には、特定の場所や状況に関係した恐怖症があるかという意味である。その場合には閉所恐怖(エレベーター、電車、飛行機など)や外出恐怖(一人で街を歩けないなど)も含んだ概念に拡張して用いている。
正確にいえば、「不安発作が起こったとき、助けがないか、安全な場所・状態に避難できないような場所や状況」を恐怖し回避することがアゴラフォビアである。その結果、外出できる場所が制限されたり、独りで外出できなくなったりする。
実際の症例では、患者は具体的なそれぞれの場所について安全か危険かをはっきり区別しているようである。ある患者の例をあげよう。
「自宅は安全、自宅まですぐに帰ってこられる場所なら安全、信号を渡った先はもし信号が赤ならすぐには帰ってこられないので危険。しかし横断歩道を渡りきったところにクリニックを見つけ、不安発作が起きたらそこに駆け込めばいいと発見したら、横断歩道の先もしばらくは安全。ひとりだと危険だが誰かと一緒なら安全。自宅にいるときも、30分以上ひとりでいるのは危険。急行電車はしばらく停まらないから、不安発作が起こったときにすぐ降ろしてもらえず危険。各駅停車なら閉じ込められている時間が短いので我慢できるかもしれない。地下鉄は理由が分からないが危険。タクシーはすぐに停めてもらえるので安全。」安全領域と危険領域がこのように区別されている。
アゴラフォビアも広場恐怖、空間恐怖も内容をよく伝える名前ではないのでわかりにくい。

1358
コラム
精神疾患の分類(「(広義の)精神病の見取り図」参照)
まず何が精神疾患であるか、これは自明ではない。たとえば同性愛はかつては精神疾患のひとつとして分類され、DSMで分類番号が与えられていた。しかし現在では精神疾患ではないと見なされている。したがって精神疾患かどうかはいつでも議論の余地を含むものであると考えておいてよいだろう。
さて、身体疾患の場合には組織病理診断(病理)と生活障害診断(症状)と二つのレベルで考えることができる。組織病理診断で病変がある場合が病気である。普通は組織病理病変があればそれに対応する生活障害がある。組織病理診断で病変があっても、生活障害がない場合もある。それは症状はないけれども病気である。組織病理病変がないけれども生活障害(症状)がある場合がある。そんなとき身体科の医師は神経症とか心因性とか考えて神経科・精神科に紹介する。

組織病理診断  生活障害診断(症状)
○ ○ 通常の病気
○ × 病気はあるが症状はない
× ○ 症状はあるが病気はない(神経症心因性

生きているうちに画像診断したり、死後に解剖したりして、脳に病変が発見されるとき、脳器質性疾患という。脳腫瘍、脳外傷、アルツハイマー病をはじめとする変性疾患、アルコール症などである。
脳器質性疾患は組織病理診断でも生活障害診断でも病気であると判断されるので、身体疾患と同じ考え方で対処できる。
また、他器官の疾患があり、それによって二次的に脳に障害が現れる場合があり、症状精神病という。この場合は原疾患と脳の異常のあいだの関係を厳密に考える。
以上の二つを除外した場合、つまり脳や他器官に脳の異常の原因となるような組織病理診断が何も見つからない場合を非器質性疾患または機能性疾患と呼んでいる。
機能性疾患を内因性精神病と神経症に分けている。内因性精神病には精神分裂病と内因性うつ病躁うつ病非定型精神病がある。神経症にはパニック障害全般性不安障害強迫症、恐怖症、神経症うつ状態、心気症、ヒステリーなどがある。内因性精神病と神経症の区別はいくつかある。症状としては「現実を歪めて認知しているかどうか」(現実検討という)が最も重要である。そのほか経過の特性、予後、病前性格、遺伝負因、発病状況などの点で区別される。
内因性精神病と神経症については組織病理診断の裏付けがないのに症状はあるものという定義にとどまっており、これは医学的な観点からは消極的な定義と言わざるを得ない。
従って、内因性精神病と神経症についてはいくつかの考え方が許されることになる。
内因性精神病は「まだ発見されていない脳器質性原因」によるものであるとし、神経症は「心因性」の原因によるものとするのが現在主流であると言えるだろう。薬剤への反応、症状の特性、経過の特性、予後、病前性格、遺伝負因、発病状況などが推定の根拠となる。
しかし両者ともいまだ発見されていない脳器質性の原因があるのだとする考え方もある。神経症の中でも特にパニック障害強迫性障害は薬剤への反応やその他の証拠から器質性疾患と考えるべきだとの考えが強まってきている。また、心因性とは言うものの、同じ心因にさらされても発症する場合としない場合があり、発症する場合も精神病症状を呈する場合から神経症症状を呈する場合まである。だとすれば、心因は症状発現のきっかけであると言うべきで、発病を準備しているのは精神病と神経症共に器質性要因であると言うべきである。
この議論は微妙なところがある。脳の機能は全て脳内の活動として記述されるとすれば、そしてそれは現在では当然の過程だと思うのだが、すべての症状はそれに対応する器質性のプロセスの記述を持つ。そのプロセスが異常であるか否かという議論は「異常」という言葉の定義にかかわることになる。
また一方では内因性精神病も神経症も、器質因が見つかっていないから暫定的に非器質性だというのではなく、積極的に非器質性であるとする立場がある。これは従来から根強い考え方で、心のストレスが症状を引き起こしたと見る常識的な因果関係の感じ方の延長上にある。

1359
コラム
最初期症状
病気の症状は「一次症状+二次症状(一次症状に対する反応)=総合症状」と考えることができる。たとえば高血圧は「高血圧+二次的不安=総合症状」という成り立ちになっている。精神症状の場合にはやや複雑である。「精神症状+二次反応=総合症状」であることは同じであるが、二次反応が正常反応でない場合が多い。つまり「原発異常+異常反応=総合症状」である。原発異常が何か、それに対する反応は何か、と分けて考えることが難しい。原発異常が何かを知るためのひとつのヒントは、精神異常の一番始まりの時点で何が起こっているかである。二次的異常反応が起こる前の時期に症状をつかまえられれば、それが原発異常ではないか。最近はこのような立場での分裂病の最初期症状の把握が話題になっている。

1360
離人症?感覚の動揺
離人感は動いているはずである。感覚は「変化」をとらえるのである。離人も長く続いて固定していれば、違和感もなくなるはずである。従って、苦しいからには揺れ動いているはずである。離人症の場合に「物体が目に飛び込んでくる」「ものが急に大きく見える」などと訴えることがある。このように揺れ動いているはずだ。揺れていることが患者自身に分からないのは何か理由があるのではないか?

1361
離人症?離人症幽体離脱
幽体離脱は体外離脱のこと。幽体とは「霊魂」であり、それが身体を離脱すること。臨死体験で霊魂が離脱して状況を斜め上方から見ていたりする。また非常に強いショックを受けたときに離人体験が生じ、その状況を映画でも見ているように客観的に眺めている。これは幽体離脱に近い状態になっていると考えられる。DSM離人症の記述は幽体離脱体験に近い。「自己の精神過程または身体から遊離し、自分が外部の傍観者であるかのような感情の体験」「ロボットになったような、夢の中にいるような感情の体験」などと記述されている。「自分は自動人形になってしまった」という感じが発展すると、自己が二重になったり、行動する自己と、それを外部から眺める自己とが二つに分かれてしまうこともある。
離人症を身体から霊魂が離れると解してみる人もいる。取り残された身体は自動機械のようになる。これはひとつの比喩として面白い。

1362
離人症?離人症と能動性
離人症を知覚障害の系列で考えてみたくなるのは理解できる。離人症を理解していない人はまず感覚器の検査をするだろう。知覚障害は、末梢感覚障害(低次の末梢の問題)と失認(高次の中枢の問題)とに大別できる。離人はこの系列で考えれば、超高次の機能障害とも考えられる。
離人が感覚の能動性の障害であると記載されるのはなぜか。浅い意味では、「自分が何かしているという実感が薄れる」という症状をとらえて、能動性の障害と言っているようである。
しかしさらに深い意味も考えられる。人間が何かを知覚するときには、ただ受動的に感受しているのではない。知覚には能動性が含まれている。コウモリが自分から超音波を発して、その反射を受け取るように、人間の側から対象に「網を投げかけるようにする」能動性が含まれている。
たとえば、目で見るときも手で触っているように能動性を発揮している。目は「ざらざらした」質感をとらえるが、それは手が能動的に動くことによって獲得する感覚である。
またたとえば眼球を固定した場合、視覚的認知がどれだけ制限されるかという実験がある。眼球を動かして能動性を発揮することによって、感覚を手に入れていることがわかる。能動的に感覚するから実感が生まれる。
こうしたことから考えると、知覚には能動性が関与していることがわかる。そして離人症が能動性の障害であるという記述の深い意味がここにある。

1363
コラム
離人感の訴えの例
「ビルが並んでる景色を見ても、本当かなと思う。何だか目で見ただけでは信じられなくて、手で触って確かめてみたいと思うような感じ。でも、遠くにあるビルだとそんなこともできない。
街並みがどんよりとしていて、なんともいえない感じ。
自分の手が、本当に自分の手なのか、納得がいかない。指先から肩までつながっていることを確認する。動かせば動くから自分の手だなとは思うけれど、本当かなという感じは残る。
景色もガラスを通してみているようです。きれいなガラスでも、窓ガラスを開けてみると、やっぱり違うでしょう、そんな感じ。何が違うんだといわれると困る。でも苦しいくらいに違うんです。」
「自分が生きているかどうかもわかんなくなっちゃって、手首を切るでしょう、すると血がプーッと出て、その瞬間にね、ああ生きてるんだって思えるわけ。だからまたやっちゃいますよ、絶対」

1364
集団療法の現代的意義
対人関係病理に対しては集団精神療法が大切である。しかもますます専門性を高めた集団精神療法である必要がある。その理由について説明しよう。
コンピュータの世界ではイントラネットとインターネットという言葉がある。会社を例にとると、会社内のたくさんのコンピュータをつないで情報交換をするのがイントラネットである。会社のコンピュータと外部のコンピュータをつないで情報のやり取りをするのがインターネットである。省略していえば、会社内ネットと会社間ネットである。
精神科の世界でもこれと同じ事情がある。個人内(イントラサイキック:intrapsychic)病理と対人関係(インターパーソナル:interpersonal)病理という。個人の心の内部の連絡と他人との連絡であり、それぞれイントラネットとインターネットに対応する。
フロイトの時代の神経症はヒステリーに代表されるような個人内(イントラサイキック)病理が原因だった。個人の内面での葛藤はイド、エゴ、スーパーエゴなどの装置で考察するのが適切であったし、治療としては個人精神療法が有効であった。
たとえばフロイトの時代には個人の心の内部での厳しすぎる超自我が問題であった。厳しい超自我と強い抑圧、しかしそれに負けないほどの強い欲望があって、神経症が成立した。治療は個人内の超自我と欲望の葛藤を直視するよう導くことであった。ここに他人との関係は登場しない。個人内部での問題であった。
しかし現代ではそのような強力な超自我はそもそも存在しない印象である。倫理の葛藤や正義の感情が問題になることはあまりない。むしろ人々は対人関係に悩んでいる。病理の中心は個人内病理から対人関係(インターパーソナル)病理に変化している。対人行動レパートリーの少なさ、対人圧力に対する耐性の低さ、対人交流モードの違う相手に対応できないことなどが原因である。これらは個人の内面の問題というよりも、他人と関係する部分の障害である。治療場面の設定としても対人関係場面が必要となり集団精神療法の技法が要請される。
このように現代では集団精神療法の意義が注目されていることをふまえて、つぎに診断と治療の二面にわけて説明しよう。
まず集団場面を設定することによる診断的価値が重要である。集団内で対人関係の困難が発生する様子を実際に観察することができる。次に集団内では個人精神療法の場合よりも多彩な転移関係が展開するので、個人の内面の特徴や問題点を幅広く把握することができる。
次に集団の治療的価値について述べよう。集団の性格として患者クラブのようなものから訓練的なものまでいろいろある。患者クラブのようなタイプのものは受容的で退行促進的である。SSTグループのような訓練的グループは生活再建的で人格成長促進的である。インターパーソナルな病理に対して、努力すれば社会適応が改善すると診断された場合には、むしろ訓練的グループで治療を試みるべきである。従来の患者クラブはいわば「竜宮城」だった。現実から遊離した空間で時間を楽しく過ごしたものの、社会復帰には役立たなかった。
また、集団精神療法は個人精神療法や薬物療法と複合させることで効果的になることが重要である。
社会復帰をめざすことは、社会の価値観に寄り添うことである。それが良いことかどうかと問い直すことも大切であろう。しかしまずとにかく生きることが大切だ。霞を食べて生きられるわけではない。デイケアにいるよりも、仕事をした方がいい。一人でいるよりも結婚して家庭を持った方がいい。そのような常識的な価値観にまず妥協しよう。食えるようになったらゆっくりと哲学しよう。

1365
デイケアの目的
デイケアの目的には二軸ある。生活拡大の軸と生活深化の軸である。生活拡大の軸は病院から中間施設、さらには社会へと連なる軸であり、生活の場が移るに従って自由度が増大し責任も増す。生活臨床で提唱される「病院よりも家庭がいい、結婚して仕事を持つのがいい」という目標である。これは世俗の価値観そのままの軸である。
しかし生活はそれだけではない。病院にいても、中間施設にいても、職場や学校にいても、それぞれの場所で人生を深めることはできる。それぞれの場所で生活を深化させることが生活深化の軸である。
社会(職場、学校、家庭)  →生活深化

中間施設(デイケア、作業所)→生活深化

病院 →生活深化
生活拡大に役立つのは、服薬、生活指導、家族関係調整、SSTをはじめとする生活訓練などである。
生活深化に有効なのは、メンバーやスタッフと人生をわかちあう意識である。

1366
夢?分析
無意識内容が加工されて夢になる。したがって加工を逆にたどれば無意識内容がわかる。このプロセスをさらに精密に考えることもできる。
?無意識内容が加工されて夢になるプロセスは、「身体的刺激や日中の経験の残りかす」が素材となり、それに「無意識」が構造を与え、結果として夢が成立する過程であると考えられる。
?夢は回想でしか語られない。さっき見た夢を思い出しながら語る。ここに必ず意識の作用が加わる。
したがって、夢分析をするときにはまず語られた夢から意識作用を引き算して正味の夢を再現する。その夢の構造を手がかりとして無意識の構造を探る。素材についてはその人の生活環境を推定させるにとどまる。
ロールシャッハテストと対応させるて考えると、「身体的刺激や日中の経験の残りかす」はインクのシミに当たる「素材」である。
「無意識が構造を与える」ことについては、たとえば建築であれば、建築素材に設計図が構造を与えることにたとえられる。ワープロであれば、テキストファイルに書式や文書スタイルが構造を与えることに似ている。
たとえば夢の中に蛇が出たとして、それが何を意味するか、これが伝統的な夢分析である。
まず、雨水が地表を流れる場合を考えてみよう。どのように流れるかは雨水の性質によるのではなく、地表の構造による。溝がどのように走っているかが雨水の流れ方を決める。雨水でなくてもオレンジジュースでも石油でも同じである。雨水は素材で、地表の溝が構造である。
夢の場合は蛇が何をするかが問題である。蛇は素材で、構造は別にある。「睡眠中の身体的刺激や日中の経験の残りかす」が素材であり、それらがどのように結合されるかを無意識の構造が決定する。
幻覚妄想についても同様の事情がある。幻覚妄想の素材で分類することは、心理内容を反映している。幻覚妄想の形式で分類する作業は、脳の病理を反映している。
夢でも幻覚妄想でも、何が素材で何が構造であるか、考える必要がある。

1367
アニマル・アシステッド・セラピー
animal assisted therapy:AAT
=動物介在療法、アニマル・セラピー
動物を使うことにより治療を促進する治療法。運動療法としての乗馬、情緒障害児童に対しての犬やイルカと遊ぶ治療法などが有名であり、そのほか老齢者や心筋梗塞患者についてもペットの有用性が確認されている。ペットそれ自体が患者の心理と身体を和らげたり元気を引き出したりする一方で、ペットを仲立ちとして治療者や他者との交流が円滑になる効果もある。ペットの病気に注意することが必要である。米国には動物性格判断士がいて動物の性格診断をして適切な動物を選ぶ。なおAAA:animal assisted activity は動物介在活動のことで動物やペットと触れ合うこと全般を指す。AATは治療目的のものを指す。

1368
CAPP
companion animal partnership program
社団法人日本動物病院福祉協会(JAHA:Japanese animal hospital association)が展開しているヒューマン・アニマル・ボンド(H.A.B:human animal bond)を基礎とした人と動物の触れ合い活動。犬や猫をはじめとする動物とともにボランティアが病院や施設を訪問する。「ペット」は愛玩の意味が強いためコンパニオン・アニマルの呼称が採用されている。

1369
GHQ
general health questionnaire

1370
MAPS
make a picture story
人格投影法検査

1371
MPU
medical psychiatric unit
精神身体合併症治療専門病棟

1372
SSRI
selective serotonin reuptake inhibitor
選択的セロトニン再取り込み阻害薬
新世代の抗うつ薬

1373
P-450(CYP)
肝ミクロゾームのチトクロームP-450のことで薬物代謝酵素のひとつ。シメチジン、ベンゾジアゼピン、三環系抗うつ剤カルバマゼピン、アルコールなどの多くの薬物がP-450で代謝される。したがってアルコールと薬剤を同時に摂取すると悪影響が出てしまう。P-450には多数の分子種があり、CYP2D6、CYP1A2、CYP2C19、CYP3Aなどがある。

1374
略号と代表的日本語表現一覧表
AA :Alcoholics Anonimous アルコール患者匿名会、断酒会
AAS :ascending activating system  上行性賦活系
ACA :Adult child of an alcoholic アルコール依存症の親のもとで育った大人、アダルトチルドレン
ACh :Acetylcholine アセチルコリン
AChE :Acetylcholinesterase アセチルコリンエステラーゼ
ACOA :Adult child of an alcoholic アルコール依存症の親のもとで育った大人、アダルトチルドレン
ACTH :Adrenocorticotropic hormone 副腎皮質刺激ホルモン
AD :Alzheimer disease アルツハイマー
ADC :AIDS dementia complex エイズ痴呆症候群
ADD :Attention deficit disorder 注意欠陥障害
ADH :Alcoholdehydrogenase アルコール脱水素酵素
ADHD :Attention deficit hyperactivity disorder 注意欠陥多動障害
ADL :Activities of daily living 日常生活動作
AI :Artificial intelligence 人工知能
AIDS :Acquired immunodeficiency syndrome 後天性免疫不全症候群エイズ
ALDH :Aldehyde dehydrogenase アルデヒド脱水素酵素
ALS :Amyotrophic lateral sclerosis 筋萎縮性側索硬化症
AN :Anorexia Nervosa 神経性食思不振症
ANS :Autonomic nervous system 自律神経系
BBB :Blood-Brain Barrier 脳血液関門
BN :Bulimia Nervosa 神経性過食症
BPO :Borderline Personality Organization 境界パーソナリティ構造
BPRS :Brief Psychiatric Rating Scale 簡易精神症状評価尺度
CJD :Creutzfeld-Jacob disease クロイツフェルト・ヤコブ病
Cl :Client クライエント、相談者、来談者
CNS :Central nervous system 中枢神経系
CP :Clinical psychologist 臨床心理士
CP :cerebral palsy 脳性麻痺
CP :Chlorpromazine クロールプロマジン(薬物名)
CPN :Community psychiatric nurse 地域精神科看護者。訪問看護担当看護婦にあたる。
CSF :Cerebrospinal Fluid 脳脊髄液
CT :Computed tomography X線コンピュータ断層法
CVD :cerebrovascular dementia 脳血管性痴呆
CW :Caseworker ケースワーカー
CW :Careworker ケアワーカー
DA :Dopamine ドーパミン
Dr :Doctor 医師
DSM :Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders 精神障害の診断と分類の手引き
Dx :Diagnosis 診断
ECT :Electroconvulsive therapy 電気けいれん療法
EE :Expressed emotions 表出感情
ECG :Electrocadiogram 心電図
EEG :Electroencephalogram 脳波
FAS :Fetal alcohol syndrome 胎児性アルコール症候群
GABA :γ-aminobutyric acid ガンマアミノ酪酸
GAD :Generalized anxiety disorder 全般性不安障害
GH :Growth hormone 成長ホルモン
HDS-R :Hasegawa Dementia Scale Revised 改訂長谷川式簡易知能評価スケール
HP :Haloperidol ハロペリドール(薬剤名)
5-HT :5-hydroxytryptamine(serotonin) セロトニン
Hy :Hysteria ヒステリー
ICD :International Classification of Disease 国際疾病分類
ICU :Intensive Care Unit 集中治療室
LD :Learning Disabilities 学習障害
LLPDD :Late luteal phase dysphoric disorder 黄体後期不機嫌障害、月経前緊張症
LP :Levomepromazine レボメプロマジン(薬剤名)
LTM :Long-term Memory 長期記憶
MAS :Manifest Anxiety Scale テイラー不安検査
MDI :Manic-depressive illness 躁うつ病
MID :Multi-infarct dementia 多発梗塞性痴呆
MMPI :Minesota Multiple-Personality-Inventory ミネソタ多面人格目録
MMSE :Mini-Mental State Examination ミニ精神機能検査(痴呆スクリーニングスケールのひとつ)
MPU :medical psychiatric unit 精神身体合併症治療専門病棟
MR :Mental Retardation 精神発達遅滞
MRI :Magnetic resonance imaging 磁気共鳴画像法
MSW :Medical Social Worker 医療ソーシャルワーカー
NE :Norepinephrine ノルエピネフリンノルアドレナリン
NMR :nuclear magnetic resonance 核磁気共鳴法
Nr(s) :Nurse 看護婦、看護士
NREM sleep :non REM sleep ノンレム睡眠
OCD :Obsessive-compulsive disorder 強迫性障害
OT :Occupational therapy 作業療法
OT :Occupational therapist 作業療法士
PD :Panic disorder パニック障害
PDD :Pervasive developmental disorder 広汎性発達障害
PET :Positron emission tomography ポジトロン陽電子)放出断層撮影法
PICU :Psychiatric Intensive Care Unit 精神科集中治療室
PMS/PMT :Premenstrual syndrome 月経前症候群、月経前緊張症
PSD :psychosomatic disease 心身症
PSM :psychosomatic medicine 心身医学
PSW :Psychyatric Social Worker 精神科ソーシャルワーカー
Pt :Patient 患者
PT :Physical Therapist 理学療法士
PTSD :Post-traumatic stress disorder 心的外傷後ストレス性障害
RAS :reticular activating system 網様体賦活系
REM sleep :Rapid eye movement sleep レム睡眠、急速眼球運動睡眠
Rp :Recipe,prescription 処方
Rx :Recipe,prescription 処方
SAD :Seasonal affective disorder 季節性感情障害
SANS :Scale for the assasment of Negative Symptoms 陰性症状評価スケール
SCT :Sentence Completion Test 文章完成テスト
SCW :Social Caseworker ソーシャルケースワーカー
SDS :Self-rating Depression Scale 自己評定抑うつ尺度
SPECT :Single photon emission computed tomography 単光子放出断層撮影法
SSRI :Selective serotonin reuptake inhibitor 選択的セロトニン再取り込み阻害剤(新世代の抗うつ薬
SST :Social Skills training 生活技能訓練
STM :Short-term Memory 短期記憶
SW :Social Worker ソーシャルワーカー
TA :Transactional analysis 交流分析
TAT :Thematic Apperception Test 絵画統覚検査
TEG :東大式エゴグラム egogram
TGA :Transient global amnesia 一過性全健忘
Th :Therapist 治療者
TIA :Transient ischemic attack 一過性虚血発作
Tx :Treat 治療
VA :Valproate バルプロ酸(薬剤名)
WAIS-R :Wechsler Adult Intelligence Scale,Revised 改訂版ウェクスラー成人知能検査
WISC-R :Wechsler Intelligent Scale for Children,Revised 改訂版ウェクスラー児童用知能検査
Y-G test :Yatabe-Guilford personality test 矢田部・ギルフォード性格検査

1375
○略号解説・不採用
AA Achievement Age 知能年齢?
AAMI Age-associated memory impairment
AANB Alpha-amino-n-butylic acid
AAS Anabolic-androgenic steroids
ACT Adaptive Control of Thought
ACT atropine coma therapy アトロピン昏睡療法
ADAP Alzheimerdisease-associated protein アルツハイマー病関連蛋白質
ADD Administration on Developmental Disabilities
ADI Attention Deviance Index ?
ADIS Anxiety Disorders Interview Schedule
ADR Adverse drug reaction 薬物有害作用
AEP Auditory evoked potential 聴覚誘発電位
AEP Average evoked potential
AFP Alpha-fetoprotein アルファフェトプロテイン:肝臓ガンのマーカー
AGCT Army General Classification Test
AHP Allied health professional
AID Acute infectious disease(s) 急性感染症
AID Autoimmune disease(s) 自己免疫病
AID artificial insemination by donor
AIMS Abnormal Involuntary Movements Scale 異常不随意運動スケール
WAIS :Wechsler Adult Intelligence Scale ウェクスラー成人知能検査
WISC :Wechsler Intelligent Scale for Children ウェクスラー児童用知能検査

1376
マカトン法
ことばの発達の遅い子ども、自閉症ダウン症、精神発達遅滞などを対象とした、サインと話し言葉の同時提示法による言語指導である。1972年に英国で開発されて以来、現在では広く世界に普及している。基本語彙は約350、発達段階と使用場面の広がりに応じて9つのステージがある。マカトンサインは音声言語に比べてイメージ性が強く学びやすいため重度の知的障害児にもコミニュケーション手段として適している。言語発達につれてサインは忘れられてゆく。他人に自分の内面を伝えられるようになると情緒が安定し、ことばの学習