夫婦の情景

夫婦の情景

お年を召した夫婦である。

奥さんは「隣の四人家族が窓からわたしたちの食卓を覗いて、悪口を言っている。」と語る。
普通に考えればありえない話で、周囲の人間としてはいわゆる幻聴なのかなと疑う。

しかし、いつも一緒にいる夫は語る。
「話の内容はもちろん信じられないようなことばかりです。でも、わたしは耳が悪くて補聴器をつけてもうまく聞き取れない。目も悪くて、特に暗がりではものの形がうまく分からない。だから妻の話も、はっきりは否定できない。むしろ、わたしとしては、妻がそのように確信を持って言うのですから、それを信じてやるしかないと思うのです。」

なんと、妻を信じるというのである。無条件に信じると語る。
夫婦愛の一つの形であると思う。
かくありたいものだ。

Last updated Mar 7, 2006 05:25:37 PM