加計学園幹部同席か

週刊朝日 2017年8月18−25日号より抜粋 

 いまだ真相究明に程遠い状況の加計学園問題。中でも最大の謎の一つが、2015年4月2日、愛媛県今治市の職員2人が「獣医師養成系大学の設置に関する協議」のために首相官邸を訪問していることだ。
 
 訪問の時期は、今治市が国家戦略特区を使った獣医学部の新設を国に提案するより2カ月も前──。市町村の課長クラスが官邸を訪問することも異例だが、安倍官邸が訪問の詳細を頑なに明かそうとしないことから、問題の?核心?との疑念が深まっている。

 本誌はこのときの面会相手が経済産業省出身の柳瀬唯夫首相秘書官(当時)だったとスクープ(7月23日速報)。同月24、25日の国会の閉会中審査でこの事実関係を問われた柳瀬氏は「記憶にございません」を7回以上、連発した。

 8月2日には、愛媛県中村時広知事が、この訪問に県職員3人も同行していたことを明かした。徐々に真相が明らかになる中、8月8日発売の「週刊朝日」では核心に迫る新たな証言を詳報している。
 
 今治市の関係者がこう明かす。

「実は、問題となっている訪問には、複数の加計学園幹部が同行していたのです。加計学園側から今治市に連絡が行き、官邸訪問が実現したようだ。当時はまだ国家戦略特区の枠組みがどうなるかもわからない段階。首相秘書官から『準備、計画はどうなのか』『しっかりやってもらわないと困る』という趣旨の話があった。最初から『加計ありき』を疑わせるような訪問で、萩生田(光一前官房副長官)、柳瀬両氏が国会で頑なに資料、記憶がないと言い張ったのは、詳細を明かせば、それが一目瞭然でバレてしまうからではないのか」

 獣医学部の新設は官邸主導で最初から「加計ありき」で進められたのではないか──。

 異例のメンバーによる官邸訪問は、そんな想像を抱かせるに十分な状況証拠だ。
 だが、話はこれで終わらない。この日、官邸には意外な人物もいたのだ。前出の今治市関係者がこう続ける。

「面会のため一行が官邸内に入ると、下村博文文部科学相(当時)もやってきて言葉を交わしたそうです。『やあ、加計さん。しっかりやってくれよ』というような話も出たと聞いています」

 当日の首相動静を確認すると、下村氏は15時35分から57分まで、山中伸一文科事務次官(当時)とともに官邸で安倍首相と面会している。一方、今治市の記録では職員らが官邸を訪問したのは15時から16時半までで、確かに官邸内にいた時間は重なる。

 下村氏といえば、後援会の「博友会」が13年と14年に加計学園の山中一郎秘書室長(当時)から計200万円分のパーティー券代を受け取りながら、政治資金収支報告書に記載していなかった疑惑が浮上したのは記憶に新しい(下村氏は違法性を否定)。

 15年4月2日の官邸訪問について下村氏に取材すると、事務所を通じ、「(今治市職員や加計学園幹部らと)首相官邸で会話を交わした事実はございません。また、私が今治市職員らと柳瀬唯夫首相秘書官との面談をセッティングしたという事実もございません」と回答した。

 政府はこれまで、官邸の入館記録が破棄されたなどとして面会の詳細について答えていない。国会では、菅義偉官房長官が「今治市に聞かれたらいかがでしょう」(7月10日)と答弁したので、今治市企画課にも取材を申し込んだが、「(訪問の)相手方や内容等については、今後の今治市の業務に支障が生じるおそれがあるため、今治市情報公開条例の趣旨にのっとり、お答えを差し控えさせていただいております」

 加計学園に幹部が官邸を訪問したか、柳瀬氏や下村氏と面会したかなどの事実関係を複数回、問い合わせたが、「取材も多く、バタバタしている」とのことで、期限までに回答はなかった。柳瀬元首相秘書官は「これ以上お伝えすることはありません」とのことだった。