育児 イライラ

 記者は、共働きの妻、保育園に通う娘(3)と3人暮らし。産後の1年間、育児休業中の妻は「ワンオペ育児」状態だった。妻の職場復帰を機に、家事や育児を2人で書き出し、均等に割り振った。

 昨年、「記者が聞く 父親の心得」という企画で体験をつづった。その時、家事や育児負担のイライラが募って「妻とのいさかいが絶えない」と書いた。ただ、別に目を向けるべきこともあった。仕事と家庭のやりくりからくるモヤモヤが、イライラの正体だったということだ。

 当時、娘は早ければ午前5時ごろに起きていた。イヤイヤ期も重なり、慢性的に寝不足で疲れていた。その上、保育園の送り迎えがある日は、午前9時ごろに出社し午後6時ごろに退社するスケジュールで、以前と比べ仕事に使える時間は限られていた。

 お迎えの時間になれば、仕事は打ち切らざるを得ない。長時間労働が染みつき、働いた時間量で評価する自分もいたのだろう。「早く帰って大丈夫か」と不安になった。仕事優先の時代は、夜の勉強会や週末のシンポジウムで知見を広げた。そうした機会が減って吸収量が減り、干上がっていくような感覚もあった。上司にさらなる働きを「期待」されると、応えられないことにほぞをかんだ。

 夜に急ぎの取材が入った場合は、妻に相談してお迎えを代わってもらうなどした。ただ、頻繁にはお願いできない。一方、私が抜けた分は上司や同僚がカバーすることになる。妻にも、職場にも、申し訳ない気持ちが募った。

 行き場のない気持ちからくるいら立ちは、妻に向かった。子どもの夕食を食べさせ、洗い物をすることを自ら買って出たのに、一休みする妻に腹を立てたこともある。完全な独り相撲だ。仕事を切り上げて自宅で子どもと遊んでいる時、「このままでよいのだろうか」と思う時もあった。

 当時の私は、モヤモヤをはき出せないでいた。共働き世帯全体に目を移せば、家事・育児関連時間(1日平均)は、2016年時点で夫は46分。妻の6分の1にも満たない。こうした格差に代表されるように、家庭で厳しい状況に置かれているのは多くの場合、母親だ。そんな状況を考えると、家事育児の半分を担った程度で、それも父親が、モヤモヤを語ることははばかられたのだった。