2298-2300

2298
坂野雄二「認知行動療法入門」
セリグマン「獲得された無気力(learned helplessness)」
無気力な状態に陥り、自分から何もしなくなるという行動の特徴は、電気ショックという苦痛刺激(外傷)そのものによって引き起こされるのではなく、「自分の行った反応が外傷をコントロールできない」ということを学習した(対処不可能感を獲得した)結果引き起こされたものだということが示唆される。
つまり、外傷をもつことよりも、それに有効に対処できないという経験が重要である。
回避することのできない苦痛刺激に曝されること、対処不可能性を学習することが、無気力の形性の重要な要因となっている。
精神力動的心理療法では外傷体験がどのような意味を持つかが議論された。しかし、「外傷」に相当するような体験をもったときに人が何を学んでいたのか、すなわち、「対処不可能感」を学習していたのかどうかを明らかにすることが大切である。
●対処不可能な苦痛刺激にさらされるのが分裂病者である。症状に対処することに無気力になっても仕方がない面もある。それがさらに全般の無気力になっても仕方がない面がある。

○原因帰属の話
内的原因ー外的原因の軸と安定(持続的)ー不安定(一時的)の軸で四分する。
無気力者は失敗の原因を内的・継続的原因に帰属させる。
やる気のある者は失敗を努力の不足(内的・一時的原因)に、成功を能力と努力(内的)に帰属させる。
再帰属法
原因帰属を変更させる。失敗を能力不足ではなく努力不足に原因すると考えさせる。

失敗の原因帰属の例(表)

      持続的 一時的

内的 能力がない 努力不足
性格のせい 体調不良

外的 運命だ 仕事が難しかった
部長の指示が悪かった

2299
生活保護という制度の悪弊
頑張ればそれがお金で報われる。そのような制度を作る必要がある。現状では、仕事は何もしない方が得、仕事できないと認定してもらえば成功、そんな風潮である。
生活保護をもらって遊び歩き、たまにデイナイトケアで遊ぶ。そんな人生をつくってしまうのは罪ではないか。「仕事ができない病人のままでいること」が「彼らの仕事」になっている。
雨宮の例でも分かるように、生活保護を受けるためのノウハウも彼らは知っている。そんな人生の場を提供し、手助けをするのが社会の提供すべき福祉だとは思わない。
もっと彼ら本来の人生を開花させるような、そのような制度が必要である。

ここには微妙に人生観も反映されている。「可哀想な病人さんだから、わたしの子分にしてわたしが守ってあげたい」と考える流派の人たちも厳然と存在する。岩のように。厚くて巨大な壁である。

2300
臨床的知恵というものは、実際の場面に遭遇しないと出てこない。しかしまた、自分が主治医になっているときには症例検討会とは異なった雰囲気である。知恵が出やすいのは症例検討会である。クリエイティブな議論ができる。思いがけなくよい考えに行き着いたりする。
一人で考えるのと、大勢で考えるのとではまた異なる。大勢の知恵が次第に自分のものになる。
症例検討会こそが勉強の場である。

2301
互いに愛し合いなさいとの言葉は、互いに大切にし合いなさいという積極的な要請である。
それができないなら、せめて赦し合いなさいというのは消極的な要請である。赦すことならば、積極的に行動しなくてもよい。ただ消極的に、自分の怨みの気持ちを抑えればよいことだ。