こころの辞典3701-3800

3701
少子→家族内の対人関係が少なくなる。固定化しやすい。状況が変われば、それまで見たことがなかったような子供の言動が見られることもある。(レパートリーが少ないということだろう。)

少子化→親の期待の集中

対策は、質のよい対人関係を増やす、親の期待を適度なものにする。

3702
食を介して親の愛情の奪い合いが表現される場合がある。

3703
治療
子供が普段とは異なった役割を発揮し、異なった姿を見せることができる場所。大人の目が充分には届かない、子供たちの場。現実社会と診察室の中間のような場所。「たまり場」。

親の不安が過保護、過干渉となっているのではないか。

都市化、核家族化は知人や親戚などの地域サポートを失う過程でもある。

地域のサポート能力を高める。→行政的対応。

3704
家庭内暴力症例の臨床診断 293
器質性精神障害
精神遅滞
自閉性障害
ADHD
てんかん
精神分裂病 34
気分障害
分裂感情障害
境界例 36
その他 176

その他の細分類
登校拒否を伴うもの
強迫症状や心気症状といった神経症症状を呈するもの
家庭内暴力のみ
非行を伴うもの

3705
家庭は生産的機能を喪失し、単なる消費生活の場となってしまった。

母親は過干渉、過保護に、子供は几帳面、まじめでよい子を演じる。思春期に至っても持続すると自立が妨げられる。

家庭内暴力の意味……自立と退行の混合
抗議
自立の試み
親を操作する
共生的関係の再構築

3706
家庭内暴力は減少し、薬物乱用などの欧米型の問題行動が増加すると予測される。
家庭内暴力が生じるためには、そこに濃密な情緒的交流が存在し、暴力という形で甘えを表現できる対象が存在しなければならない。しかし近年の少子化傾向はそうした濃密な情緒的交流を否定するものであり、子供が暴力を振るおうとしてもそこには暴力を振るう対象が存在しないという事態が生じうる。そのため、これまでのように登校拒否や家庭内暴力のように家庭内に閉じこもったとしても、そこでは精神的安定を得ることはできない。子供は外部の世界へと依存対象を求めていくか、一時的にしろ確実に不安を解消してくれるアルコールや薬物に走らざるを得なくなる。
児童虐待の増加。

→これは有効な指摘かもしれない。

3707
インターネット情報をなぜ信じるのか。そこにはハイテクという威光があるから信じるのだろうか。ひどい話である。悲しい話である。自分の周りにはいないが、どこかに立派な人がいると幻想する。インターネットのような仮想的な世界はそうした幻想をはぐくむ場となっている。
普通人は権威の前では批判力を失う。肩書きやハイテク装置の威力。

3708
キレル、ムカツクなどによって表現される、短絡・即行傾向や社会的逸脱行為が目立つ。
普通と思われている子供の、唐突な問題行動。
精神疾患の低年齢化。
正常と異常の境界の不鮮明なケース。
症例の重症化・遷延化

自殺は減少している。
諸問題の低年齢化。
思春期スパートの早期化。
短絡傾向。
認知能力の乏しさ。
共感性、相互理解の乏しさ。

耐性閾値が低く、即行的に外部に向く行動化傾向
→葛藤・不安を内面に保持し内面で処理することができない。
→人間は内面に世界のモデルを持っていて、その中で体験し直したり、シュミレーションを繰り返したりしている。そのような「内部の舞台装置」が消失しているのではないか。

医療の対象となる生徒
行為障害
多動
反抗性挑戦性障害
情緒不安定性人格障害(衝動型、境界型)
自己愛性人格障害
習慣と衝動制御の障害(間歇性爆発障害)
適応障害
精神障害
3709
たとえば大人になってパチンコをやめられない人。それは大人になって辛い思いもしているし、そのような人生を選ぶのも本人の事情があるのだという了解がある。つまり、それだけ恵まれない人生だということで、そのような人が発生するのはある程度はどうしようもないことだとの了解がある。
それが低年齢化して拡大・一般化しているということなのだろう。

困った人たちと子供たちはこれまでどうしていたのだろうか。戦争後の一時期が特異な時期だったのだろうか。
戦争で人口の一部が(偏った形で)失われた。そして危機に直面して独特な倫理的風土が醸成された。

3710
共感性の未発達。
内的対象関係が成熟していない。他人が心の中に住んでいない。

3711
少年非行の変質。

豊かな社会の一方、家庭や地域社会の機能低下。これを背景として、非行の増加、重症化。

3712
学校は多少難のある生徒でもほしい。売り手市場である。

すぐに逆転する〈いじめ・いじめられ関係〉。

3713
悩みを抱えられない。
→内面化の障害。
葛藤を悩みとして抱えることができず、動機という自分なりの理由付けさえなされぬうちに、何の逡巡もなく、一足飛びに実際の行為が行われる。

ブランド品ほしさの援助交際
→なぜいけないと言えるのか。規範力が試されている。倫理が試されている。

鳩の社会に鷹が紛れ込んで得をしている。鳩は排除の方法が分からず、防衛の方法も分からず、倫理へのあこがれを言い続けている。

援助交際の二種
金ほしさと濃厚な対人関係ほしさ

「自己の欲望を満足させるためには、相手がどのように受け取るかということは予想せず、手段を選ばないで行動する、そのために周囲のひんしゅくを買い、時にはその手段が犯罪行為であるのに、反省という頭の回路が学習されていない例によく遭遇する」(北村)
「相手に与える恐怖や痛みを実感できない、共感できない点が最大の問題である」

他者の痛みが分からないのは、自己の心の痛みを実感できないことの裏返しであろう。

悩むことの前提条件が欠けている。

3714
全般に強迫性が不足している。しかし非行少年に強迫性成分が見られることもある。

強迫性の特徴
・普段はおとなしいが、自分が傷つけられたと感じたときには爆発、執拗、残忍な暴行・傷害。
・勉強(仕事)をするときは人の何倍もやるが、わずかなことで躓くと、すべてを投げ出してしまう。
・人並みではいやだ。高望み。相応の努力もしないのに、自信たっぷりの万能感にあふれている。
・尊大な自己像を抱いている。
・過剰適応や几帳面はあまりみられない。
・家族に強迫性性格者がいる。

社会適合的な強迫性を育てること。

こころを育てる場所と援助者を提供する。

3715
思い通りにならないときどうするか。

親が受容的共感的に接する。子供中心主義。子供の思いは何でも受け入れる。

ほどよい理不尽さを持つ親や教師がよい。
理不尽なところがあるから反発できる。

child abuse and neglect
maltreatment

3716
子供はいかにして社会化するか。

自然は3年という出産周期を望んでいる。もし子供が予定通りに生まれないと、現在いる子供は母親からの「過剰な教育的処遇」という被害を受けることになる。一人っ子は2年ごとの反抗期をより著明に表すことになる。子供は二年ごとに反抗期を経験する。(Kanner L)

3717
男性=競争的、女性=協同的。どこまで文化であり、どこまでホルモンであるか。

3718
親が子供に自分の不安定な感情を向ける。

母親が家庭で仕事を片づけるようにてきぱきと育児をすると、乳幼児のこころは緊張し育ちにくい。

子供ロールモデルの欠如。たとえばテレビは何を提供しているか。

核家族では親子は境界のない葛藤的な集団力動に陥りやすい。
父母連合、世代境界、性差境界などの基本的家族構造を確立しにくい。
親自身が退行してしまう。

親が拒絶的に接すると、子には否定的自己像が形成される。

専門家との関係でこころを癒すのではなく、子どもがもっとも望んでいる母親との信頼関係を直に作り直す。

面接の中で、自分自身を振り返り、自分の親との隠された葛藤に気づき始める。
親としての成熟。
治療者との関係が安全基地になる。

自己の葛藤に気づくことにより、人は自由になる。自らの弱さ、卑劣さをしみじみ味わえるようになると、欺瞞的な自己防衛の必要も薄らぐ。そして伴侶や身近な相手を見つめる眼差しも深く寛容になる。

治療者に母親がつっかかってくるあたりが、治療的変化の正念場である。理不尽な葛藤が治療者にも誘発される。スーパービジョンが大切。

3719
壊れたときにどんな症状が出現するか、臓器によってかなり違う。
肝臓は原因(感染、先天異常、ガンなど)が多様であっても症状は似ている。脳は原因が同じでも、場所によって多様な症状が出る。

3720
Hysteroid dysphoria
拒絶に対する極端な過敏
自己評価は他人の承認に左右される。
ヒステリー的。

人格障害神経症に二次的に生じる抑うつ。自己評価が他人の承認に左右されるために、拒絶に過敏で、反応的に抑うつ的になる。

ヤングアダルトの特徴
ヒステリー的色彩を持つ身体化症状
回避的行動化症状

3721
結婚は幸せの場ではない。人の道を極めるうえでの試練である。
困難な結婚も不幸ではない。個性化の場。人格的成長の場。

夫婦は文化摩擦や異文化接触の場である。家族文化を無自覚的に身につけている二人が衝突する。次第に新しい自分たちの家族文化を創り出す。

3722
学級崩壊
子供の質が変化した
面白いことにも集中力がなかなか持続しない
周囲を見ることができず自分のことしか考えない
落ち着きがない
家庭におけるしつけの問題

教育現場に適応できない教師
児童生徒だけでなく、教師も幼稚化している。

学校カウンセラー
週に2回だけやってくる人にどれだけ心を開くだろうか。
担任や養護教諭のスーパーバイザー。

3723
農業社会……大家族
工業社会……核家族
情報社会……単家族

これらの混在が、価値観の混在をもたらす。混在は混乱につながる。

大量生産のための効率を追求することは情報社会の理念ではない。

3724
子どもたちに備わった素質を自然に開花させる環境にない。自尊心が傷つけられる。

精神療法
困難や失敗にもかかわらず、ベストを尽くしていることを見つけ、評価できるところを探す。

思春期青年期の人格発達課題に注目。

言語表現を中心にした集団精神療法よりも、現実生活体験を味わえることを媒介とした集団活動が適切。

境界性人格障害の64%に両親による虐待、敵意、軽視などのPTSD

3725
非定型精神病。更年期発症の場合、ホルモン剤クロミフェン療法など。
内分泌が大きく変化する更年期は思春期と並んで、周期性精神病が発生しやすい。

3726
クレッチマーの敏感性格。
無力性要素に強力性要素がわずかに添加されたもの。

強力性格が全面に出て、無力性要素が背景にあるものを「広義の敏感性格」。
予後良好な幻覚妄想状態の病前性格は広義の敏感性格。
強力性格の勝った人は対人関係面での孤立や孤独に弱く、発症契機となりやすい。

3727
診断
薬が有効なもの
薬が無効なもの
時間がたてばよくなるもの・悪くなるもの
待っていいもの・対処が必要なもの

3728
医療としてのかかわり
教育との連携
学校
カウンセラー
その他

医療から教育へのフィードバック
どのように教育すればいいか
薬剤と教育・タイミングと薬剤選択

3729
医療と連携したことで何が変わるか?
薬剤だけ?→それでも小さくない問題。

3730
子どもをとりまく状況
子どもが変わった面と子どもをとりまく状況が変わった面と両方

3731
「大多数の子ども並みに」という目標は正しいか?
結局その人はどうしたいかである。でもそれは子どもだからはっきりしない。親は子供のための選択をしているとは限らない。
親の不安や無理解が子どもを苦しめているとき、治療者はどうするか。

3732
今の社会が人間を疎外しているのではないか?ではどうすればいいか?
子どもはどのように生活すればよいのか。

ひよこは自然にすくすく育つはず。しかし自然でない環境でどのように育てばよいのか。しかし自然でない環境で育つ必要があるからこそ、現代の状況があるのだ。

3733
医学的検査で問題が見つかるのではない。集団の中で処遇に困る子どもがいるのである。
たとえば色盲の検査のようなものならば状況が異なる。

3734
大人ならば、この人はもともとはこういう人ではなかった。なのにこうなった。病気だと思う。なおして下さい。となる。
子供は必ずしもそうではない。もともとそういう子供だったのかもしれない。それは治せるのか?
急性期医療や感染症、外傷などが解決されると残るのは先天性異常の問題である。それをどうするか。医学的に対応できる場合もある。たとえば酵素欠損症。しかしどうしようもないものもある。その場合には療育となる。

3735
相談っていうのは、本当は、本当に正しい道を教えてほしいのじゃなくて、自分が心の奥底で思っている考えを、自分以外の人の口から聞きたいっていうだけだ。(銀色夏生
なるほど。「自分以外の人」がそれなりに専門っぽい人だったらもっといいわけだ。

3736
家庭内での常識と、社会での常識がかけ離れているとき、子供は困る。適応障害になる。
例えば、家庭内で重要人物として扱われている子供が、社会に出るとまことに平凡なとるに足らない子供である。その落差に耐えられるか?
変な親が多いから子供に社会性が育たない。親に社会性がないのである。
結婚問題にしてもその延長にある。家庭内での自分と社会での自分の地位の落差に耐えられないのだろう。つらい現実を見るくらいなら、引きこもりを続け、あるいは未婚を続けたいのだろう。

3737
「治りました!」と言ってくれる患者をかわいく思う。治りませんと言う患者をだんだん疎ましく思うようになる。
しかし、患者が医者を頼っている程度からいえば、治らない患者こそが医者を頼っている。

3738
愛と恋
恋は感情であり、大脳辺縁系の営みである。
愛は知性であり、前頭葉の営みである。

下等動物に恋はあるが愛はない。人間に知性が発生して、はじめて人間に愛が発生した。愛とはそのようなものである。

3739
金と権力、才能と美貌。これらを持ったものは堕落の瀬戸際にある。
誘惑に身を任せるチャンスがあるとき、多くの人は実際に誘惑に身を任せる。
そしてその後に長い後悔が続く。後悔を忘れられるなら、生きやすい人生である。

3740
恋が終わって愛が始まるのではなく、恋が終わって、制度と慣れと習慣が始まる。

愛を築いていくには、愛は不安定すぎる。投資分を回収できない危険がある。恋ならば短期間のうちに結果が分かる。無駄と分かった時点で、それ以上の無駄な投資を続ける危険を回避できる。
カトリック教会が離婚を禁じている。この制度があれば、愛を忍耐強く築くことができる。不良債券化しないとの保証があるから。無駄にならないから。
愛のための投資とは、多分、我慢である。我慢が報われる日が来るのかどうか、それが問題だ。報われない可能性が高ければ、それ以上我慢することはできない。
短期的な恋愛のためならば我慢は容易である。結果は容易に見えるから。

3741
患者さんの体験。
考えを変えるとき、寝てしまうといい。
これは多分、脳の血流分布が変化し、座っているときと比べて、脳の別の部分が活動するからだと思う。
カウチが自由連想に適するのもおなじ理由。

3742
世界の意味や人生の意味についての考察。こうした問題は結局、こちら(考える主体)の問題なのだと思う。離人症の話なのだ。世界は同じ。それをどう受け取るかの問題である。
だから、世界の意味や人生の意味についての考察の形をとってはいても、結局、離人感の表現なのだと思う。

何かをどうかすれば、突然世界が意味に彩られるということではないだろう。世界を操作する方法ではない。むしろ脳を操作する方法である。

ということは、芸術は、どこにあるか?世界の側にではなく、脳の側にある?
感動を喚起するためには、離人感を吹き払う操作をすればよいわけだ。

芸術が生きる意味をくっきりと提示する。この世界の意味を明確に提示する。しかしそれは元来そこにあったものだろう。それを見えやすくすることが芸術というものだろう。

それとは別に、まったく新しい、自然ではない、創造物があるだろう。しかし脳の産物であり、脳の自然であるとも言える。

3743
配偶者選択。DNAは異種を選択しようとする。文化は同質性の個体を選択しようとする。この両者の妥協として、配偶者選択が行われる。

たとえば本妻は文化的同質性に従い、愛人はDNAの求める異種性に従う。

文化的同質性と遺伝子的異種性。この二つの圧力がある。

3744
人は男と女のピラミッドの中で、自分と相手の位置を評価する。評価の基準が価値観というもので、それが問題。価値観の多様化・相対化は自分の価値付けをあやふやにする。あやふやだから、後悔や疑念につながりやすい。

3745
1999-2-11(木)寒い日
エックルズも書いているように、「神のいない無意味な宇宙に耐えられない」。それは当然ではないか。
誰もが人生の意味を求めているのだ。

そう考えることの背景として、苦痛は報われるべきだとの考えがあるのではないか。
報いはなくて、ただそれだけのもの、そう考えることが難しい。
行動のすべてを金銭に換算して考える傾向と似たところがないか。

苦痛は何のためにあるのか。小さい頃、自分の苦痛を見て、同情し、報酬を考えてくれた父母が、これから先もいてほしいと考えて、宇宙と世界の意味などと言っているのだろうか。

3746
祈りの言葉。
朝、診療開始時の祈り。
途中で、困ったときの祈り。
途中で、嬉しかったときの祈り。
最後に、カルテを整理し終わったあとの、感謝と反省の祈り。

これらのものを友として診療を続けたいものだ。

3747
習慣は怠惰につながる。習慣は精神を眠らせる。
恋愛も時間がたてば熱狂が終わり、習慣が顔を出す。お互いの習慣がお互いを再び支配したとき、恋愛は完全に終わる。

自動機械、ロボットに近い。習慣は自意識を必要としない状態である。
パイロットなしの自動運転状態である。

怠惰な習慣にいつのまにか再び落ちついてしまう。それが大多数の人間である。良い習慣を維持すること、悪い習慣を意識して排除すること、自動運転状態を減らすこと。

習慣は覚醒の終わりである。コリン・ウィルソンの話に近い。

3748
自己実現という言葉に胡散臭さを感じる。実際何を意味しているのか、とても曖昧。曖昧で良いと思っている人たちに支持されている。厳密に具体的に考えたくない人に支持されている。

3749
「他人をほめる人、けなす人」より
ものの価値は、それを手に入れるために要する費用(努力)によって測られる。ものの価値は、それを取得するために支払われた代価に基づく。例えば、大変苦労して登った山の写真。

しかし別の側面もある。それですべてではない。
たとえば、ものの価値は、それが今後生み出すであろう価値に基づくともいえる。偶然拾った株券が、今後生み出すであろう利益。取得するための代価は大きくないが、価値は大きい。
生産費用による価値と、市場による価値とに似ている。

それを取得するために支払われた代価によってものの価値を考えるとして、人がそのものの取得にあたってどれだけの代価を妥当と考えるかは、支払う前にあらかじめあるだろう。それだけの価値があるから、人は大きな犠牲を払って手に入れようとする。大きな犠牲を払ったから価値が大きいと考えるのは、妥当する場合もあるが、全般的真理ではない。
それに価しない人に、何物かを与えてはならない。悪い結果を招く。彼を破滅に追い込み、あなたも破滅する。それはボランティアでも愛でもない。悪行である。
何かを手にするためには、あなたはそれに価しなければならない。
例えば、謙虚で控えめで質素だった娘。結婚によって金持ちになる。裕福になったことを感謝するだろうと思うと大間違い。

労せずして富をつかんだ人の周囲には悪い取り巻きが集まる。彼らの間に愛はない。軽蔑があり、恨みがある。
二代目や三代目はこのようにして没落するのだろうか。

3750
なすがままといっても、悪意ある攻撃者に対してなすがままにせよというのではない。神の意向に対してなすがままにせよといっているのである。

3751
「他人をほめる人、けなす人」より
支配の問題
会社で有能な男性も、家庭では必ずしも優秀ではない。「召使いに英雄なし」である。
夫は世間での待遇の延長として考えているのに、妻は軽蔑し、子供にも軽蔑を吹き込む。「世間では立派ということらしいが、家庭ではつまらない人間だ」という。そのようにして支配権を確立したがる。
無益な権力ゲームである。しかしそのような人間は少なくないからしかたがない。
最初は権力的でなかった人も、権力的な状況に慣れていくと権力的になる。困ったことだ。
妻にすれば、夫のささいな欠点を見つけだすのは容易である。夫は仕事が忙しいのだから妻の欠点探しにばかり熱中してはいられない。この非対称が権力関係を生む。夫は対抗として金銭面からの支配や暴力による支配を試みる。
仕事も家庭もというのは難しい。基本的には競争社会だから、家庭を犠牲にして仕事に打ち込む人にはかなわない。仕事で勝とうと思えば家庭は犠牲になる。そうすると妻に支配される。仕事で負けても、家庭で勝とうと思えば、こんどは「家庭には熱心だが仕事はできないだめな夫」と妻に批判され支配される。
この点では妻は批評家の立場に立てるから強い。

支配欲の強い人とはつきあうのが難しい。

支配されることの利益が明白ならば別であるが。

3752
自分の弱さと他者の寛容を利用する人たち。
なるほど。精神病者の一部はまさにそうだろう。また、「だってできないんだもん」と居直る人たち。「きちんとやったのに‥‥」と言い訳をする人たち。そのようにして強い側の人を苛立たせる戦術である。局所的な権力闘争である。このような細部が人間を消耗させるのではないか。

ただ他人の足を引っ張って、悪意のある喜びに浸っているのだ。他人を苛立たせるのが面白い。局所的な権力闘争に勝利する。このような人に関わり合っていると人生の時間がいくらあっても足りない。
人生は無限ではないのだから、自分を守る必要がある。こんなところで我慢する必要はない。

「他人をほめる人、けなす人」より
弱くてもろい人物は善良だとは限らない。

3753
精神に効く薬を恐れる理由。
体より精神が「自分自身」に近い。当たり前であるが、取り替えのきかない、自分自身の中核部分に近いと感覚している。そこを薬でコントロールするのはまずいと感じるわけだ。
それは健全だし常識的だと思う。
しかしそのように重要な部分だからこそ、自分の側でコントロールする必要があるのではないか?病気は一時的にせよ、感情や思考に対する自分自身のコントロールを弱めてしまう。その事態を薬を補助として使うことによって、回避できるのではないか?薬を適切に使ったほうが自分の思考や感情に対する自分のコントロールを維持できるのではないか?

3754
人徳の問題。これは無視できない部分がある。結局は人間がやっていることだから。

この人のもとで、患者さんのために力を発揮したいと思えるような状態。
モラルの問題。志気。やる気。気概。自分は立派なことをしているのだと信じられること。いいことをしていい人生にすると信じられること。

仕事の内容とともに、このリーダーのもとでなら、と感じさせることも大切だ。それが人徳であり、人間の力だ。
共有可能な価値観を提示することかもしれない。
目標設定、評価のシステム、こうしたことを通じて、よりよい人生の時間を作っていけるようにする。

3755
「一人と一人の優しい心、どうして一つにまとめられない」
という歌があった。昔のコマーシャルソング。

優しい心はあるのに、その自然な発揮を阻む何かがある。それが人間の幸せを台無しにしている。そう思う。
人間のいい心や優しい心を殺してしまう何かがある。何かといっても、結局は人の心の話である。ほんの少しのところなのである。
極限状況での話ではない。人間と人間との日常的な場面での話である。

診察室でもしばしば語られる。「あの人と話しているとなんとなく、どうしようもなく、イライラしてきて、そんな対応になってしまう。そんな言葉を吐いている自分がいやで、どんどん自分を嫌悪していく。」そうだろう。人の心にはそのようなどうしようもなさが現実にある。あると意識して、対処する必要があるだろう。
それにしても不思議なものだ。どうしようもない部分があるのである。

北風にならず、太陽になれという。診察室で患者さんにそう言う。しかし、自分でもどうしようもない場面がある。それが人間の気持ちというものだ。

3756
手渡した名刺をおいていってしまう人がある。そのくらい上の空だということだ。
こちらに落ち度がなくても、過剰な不安や思いこみの強い解釈によって、いろいろな誤解をしているのだろう。そのあたりまで含めて、ケアを考えなくてはいけない。

3757
摂食障害治療プログラムを作ること。
・各種検査のセットを確定する。TEG、SCT、STAI、CMI、絵画、ロール。目的は、背景病理の検索、中心葛藤課題の把握、経過の把握など。
・治療技法‥‥食事日記、精神療法、家族面接、薬物の使用など。
これらをすっきりと構造化して患者に提示できないか。このようにして治るのだと提示することが本質的に大切ではないか。

3758
閉じこもり・治療拒否の場合のアプローチの工夫。どうするか?
・「病気ではない。しばらく暖かく接して下さい」といえば時間を稼げる。しかしそれでは残酷というものだ。公務員的な「逃げの姿勢」を感じる。その人はその発言が治療的だと考えてはいないだろうけれども。
・とりあえずできるのは家族面接。その中で生育歴・家族歴・既往歴と現在症をまとめることができる。本人の心理テストはとれない。もっと本人に関する情報を収集できないか。ビデオを撮影してもらったりできないか。
もっと工夫が必要だ。

3759
行動賦活系と行動抑制系
通常は10:10
行為障害では20:10
ADHDでは10:5
行為障害にADHD合併では20:5

知能が高いか低いか、集団内で認められているか否か、家庭内で認められているか否か、こうしたことが病像を修飾する。

強迫性障害やチックについてはどうか?
一口に行動賦活系といっても、いろいろあるのだろうか。

3760
「パニックディスオーダー」上島国利編集 国際医書出版 2415円
「パニック・ディスオーダー入門」B.フォクス著 上島・樋口訳 星和書店 1800円
「痴呆のケアと在宅支援」露木敏子著 星和書店 1650円
「恥と自己愛の精神分析岡野憲一郎著 岩崎学術出版社 4500円
心理療法の常識」下坂幸三著 金剛出版 3800円

3761
やる気を起こす。乗せる。
どの分野でも先生として指導する場合には必要。
自分のいいところを認知していただく。

3762
拒食症の子に食欲増進のための漢方薬を投与していた産婦人科医がいる。
もっとやせなければいけないとする訂正不可能な確信(妄想)が病気の根本である。説得は不可能。親に隠れて食事を捨てている。大人の話は分かる。しかし受け入れない。栄養が、骨が、出産の時に‥‥、そうした常識も分かる。それでもやはり拒食を続ける。そのような認知の病気である。精神病と考えて対処しなければ道は開けないだろう。
食欲がなくて食べられないのではない。努力をして食べないのである。そんな子供の食欲を増進すればどうなるか。苦しみは増大する。食欲が勝り、食べたとしても後悔に苛まれ、吐く。「ああ負けてしまった」と涙を流しながら吐く。そして今度こそはと強く決心して拒食を再開する。
そうなると拒食と過食・嘔吐の反復となり、慢性化する。

食欲と、それを抑制しようとする心の、戦い。拒食と過食の振り子。

食欲と妄想の戦いといってもいい。食欲を増進させれば、妄想はさらに強まるだろう。さらに強い意志を持って拒食を試みるだろう。否定されるとますます燃え上がり強固になるのが妄想というものである。
そうではなくて、妄想を抑制する方向が正しい。

拒食のない過食。これは愛情飢餓のような側面もある。鳥の親が小鳥に餌を与える。食事は親の愛情そのものである。口に食べ物を詰め込むことで、愛情を確信したいのだ。

背景にまたは前景に、母親・娘関係の問題があることも多い。

産婦人科医は、生理がないなら注射をしましょうと平気でホルモン注射をする。こんなことがあっていいものだろうか。
3763
学生の場合には、時間がどんどんたってしまう。時間をかけて‥‥などといっていると友達とどんどん離れていってしまう。そうした不適応が二次的な神経症状態を引き起こす。

3764
ストレスへの対処法
・休息→寝る
・能動的→歌う(カラオケ)
寝るときには必ず緊張がとけている。歌うときも、リラックスしていないと歌にはならないだろう。
強制的リラックス法の一つといえるかもしれない。

例えば、ストレスを歪み、ストレッサーを負担と訳す。負担はいいが、歪みはもうひと工夫が必要か。

3765
安定剤ですといわない。「神経の過度の興奮を抑える薬です」と説明する。「神経過敏を調整する薬」など。
「精神を」といわず、「神経を」という。
「ストレスに対する抵抗性を強める薬です」もいい。

「心に余裕が出ます」これは心理的次元に偏りすぎだろう。

3766
気力と努力と体力。

3767
摂食障害に対する説明。
背景病理。
食欲だけの問題ではないこと。

3768
病気でないといってくれた人はいい人。
病気だから治療が必要ですといった人は悪い人。
人は逆恨みする。

3769
ストレスがかかったとき、免疫力が低下する。これは一見するとおかしい。ストレスにさらされると病気になって死んでしまうことを意味するから。なぜか?なぜそのような個体が生き延びてきたのだろう?
多分、進化がセレクトしてきたものは、ストレスに強い個体ではなくて、ストレスを感じない程度に環境に適応的な個体なのだろう。本当に適したものだけを残す。これが大切な進化の戦略である。それ以外は生きていなくていい。

笑うとNK細胞が増加して免疫力が強くなるというのも同じ。笑うくらい適応のいい人が残る。

3770
ストレス・サポート
そばにだれかがいてくれる。
受け入れてくれる場所がある。

3771
人工化学物質汚染について
DDTから始まってPCBなど各種の物質が長期にわたって影響を与える。
・時間の要素‥‥長期の影響は推定しきれないこともある。
・複合汚染‥‥複数の物質が体内で、また環境中で、どのような影響を及ぼすか。
また、胎児の問題では、影響を評価するまでにさらに時間もかかるし微妙な問題である。

薬もこうした人工化学物質の一つである。危険をどのようにして評価するか。安全をどのようにして保証できるか。難問である。

3772
薬の副作用についての問題
薬のせいでおかしくなったと騒ぐ。たいていはもともと変な人なのだ。だから薬をのむようにいわれたのだ。そして次第に症状が悪化した。それを薬のせいにしたがるのである。

薬を飲んで良くなった人。しかしその人は他人には何もいわないだろう。
薬を飲んでも悪くなった人。薬のせいで悪くなったと言いふらすだろう。

3773
母親が壊れていると、どうしようもない。ゆりかごが壊れているのだから。あるいは世界のモデルが壊れているのだから。母親に合わせて精神世界を構築してきた子供は外の世界では生きていけない。

以前から母親がおかしいとの説が繰り返し語られてきたことには理由があったと、いまわたしは思う。一種の逆転移といっていいかもしれない。
臨床家が否応なしに感じることなのではないか。

3774
老人介護とこころのケア。
こころのケアはどれくらい大切にされているか。痴呆老人だからどうでもいいだろうか?

体は心を養うためのものではないか。人が家に住むことにたとえると、心が体に住んでいるのだ。家を修理するのは住む人のためである。同じように、体を修理するのは心のためである。

3775
心療内科メンタルクリニックに来るのはある程度革新的な人たちである。保守的な人たちは来ない。
自分はある程度風変わりであるという自己認知を持っている人ならばクリニックに来やすい。
あるいは、そんなこともまったく考えないようなナイーヴな人。

3776
心理療法の進め方 前田重治
症状形成の意味は、ひとくちでいえば、心身の再統合の試みであり、自我の防衛のためである。現実からのストレス、自我が処理困難な出来事や葛藤、欲求阻止などに出会った際、一歩退却した形で、心の統合や安定が図られる。その場合のさまざまな防衛の方法や退却のしかたによって、症状が形成される。
症状や障害を形成することによって、歪んだ形ではあるが、心身の適応(自己の回復)をはかっているものである。
心理的にいえば、患者の自我は弱いために、すぐに自我防衛にしがみついて症状を形成するし、一方、そのような防衛に縛られているために、ますます自我が現実性を失って弱くなっているともいえるもので、そこに悪循環が形成されている。

●昔の行動様式を持ち出して応用してみる。一時的にはそれでいいが、いつかはその先に踏み出す必要がある。
新しい、より適応的な行動様式を開発して身につけることができるかどうか。

3777
母親が分裂病で、母親機能不全状態にある場合。遺伝的にも不利で、かつ環境としても不利である。従って、父親が分裂病である場合よりも、予後は不良である。
遺伝子もゆりかごも壊れているから。

しかし、分裂病にも進化論的に有用なところがあるからこそ、現代まで残っているのではないか。脳の進化の圧力がある限り、分裂病は発生するのではないか。進化の必然として、試行錯誤がある。トライアルである。その中でいいものが残る。環境に適しないものは分裂病と判定されているのかもしれない。
こうした分裂病論も可能であろう。

こう考えれば、単に壊れている脳と、分裂病的に壊れている脳とは別のものであるかもしれない。

3778
春は春の遊びに従う

3779
クリニックの立地をみても、患者の都合を考えているか、医者の都合を考えているか、分かる。

3780
患者さんに感謝していただける。本当に嬉しいことだ。
薬が効く。カウンセリングが効く。

3781
重いボールは、動かし始めには骨が折れる。しかしなかなか止まらない。軽いボールは動かし始めるのは簡単であるが、すぐに止まる。ポーの小説の中にあるという。
このたとえ。
物事をなかなか始めない人は、しかし、いったん始めるとなかなかやめないと解釈できる。
例えば、石橋を叩いてもわたらない人。いったんわたるとなかなか止まらない。強迫性性格のような。

また例えば、うつの人が、ひとつの考えにはまりこんでしまえば、抜け出せない。ここにもやはり質量の法則があるのではないか。

年をとって質量が軽くなると、運転しやすくなる。たとえばハンドルを切りやすくなる。まだ若くて質量があるうちは、ハンドルを切っても曲がってくれない。

考えの狭窄を解消する方法。同じ思考回路にはまりこんで抜け出せない。
自律訓練法
ズームの訓練。自分の現状を相対化する試み。
ズーム倍率を自在に変換する訓練。

3782
カウンセリングが過度の自己拘泥をさらに促進し固定するとしたら、治療阻害的である。
摂食障害者(背景に自我障害がある人)の日記のようなもの。手記。アダルトチルドレン系の用語が見え隠れしている。その世界の言葉で自己規定をして、世界の解釈を新たに組み立てているようである。一種の洗脳である。
それがいいことなのかどうか。アダルトチルドレンの場合にはあまりいいことではないように思う。
こうした場合、宗教やオカルトのように、「わたしはこれから少し特殊で一般社会の通念からはかけ離れた世界観を提示しますよ、注意してね、これをそのまま社会で通用させようと思っても当面はうまくはいかないかもしれませんよ」などと注釈をつけながら洗脳するのであればまた許されるだろう。しかしそうした側面を隠蔽して、治療や医学の装いで語られるとしたら、問題があるのではないか?

3783
検査結果によらず、訴えの内容だけで診断する領域では、性格障害者の餌食になりやすい。それをどうするか。たとえばいつまでも会社で仕事をしなくてすむようにするために医者を利用する人たち。またたとえば整形外科で交通事故後遺症の認定を求める人たち。
今後は、事故や犯罪被害の後にPTSDの認定を求める人たちも増加するのではないか。当院でもいるにはいたが、あまり大問題にならずにすんだ。
性格障害者の餌食にならず治療的であるためにどうするか。

患者の望むものではなく、「患者の治療自我の望むもの」を想定して治療にあたる。しかしそれが治療者の思考の反映でしかないとしたら?NTTや公的機関では逃れられない。しかし私的医療機関ではどうだろうか?わたしにはできないと宣言することも許されるのではないか?

3784
新聞投書で見る、紋切り型で大げさな表現。自分の感情を適切に表現する力がない。紋切り型とはつまり、「ものすごく」の延長で、程度がはなはだしいことを表示しているに過ぎない。

3785
才能がある、権力がある、金がある、美貌がある、こうした人たちは傲慢になりやすい。それは分かる。
病気の人も傲慢になりやすい。
権力とは、人よりいい思いができることだとしたら、病気であることもその一つとなりうる。病気も権力となる。

病気なんだからやさしくして。病気だから働けない。病気だから静かにして。すべて権力の行使である。

マイナスの状態であるのに、周囲の人の優しい心を餌食にして権力となる。

3786
ショパンピアノ曲のような女
自分の流した涙の美しさにうっとりしているような

3787
自分の才能の方向と自分の努力の方向が一致しているか?
そのあたりを伯楽に指導してもらうことが有効である。

3788
苦難
自分を磨くための絶好の機会である。与えていただいたことを感謝する。

苦難の代償・報酬として、神が何かを用意してくれると信じられるか?信じられるならいい。信じられないとしたか、この苦難の意味は何なのか?
わたしたち周囲の人間が、その人を助けたい。苦難が意味あるものであるようにしたい。たとえば、苦難に際して周囲の人たちの愛が感じられたと体験してほしいものではないか。
傷は痛い。しかしその傷から、愛が染み込んでくる、そのようでありたいものだ。

3789
 こんにちは。梅の花をそこここで見かけます。お元気でお過ごしでしょうか。
 湘南心療内科が開院して一年たちました。はやいものです。皆様のご支援によるものと思います。どうもありがとうございました。
 今後はより一層、患者さんのために何ができるかを考え、勉強を続けていきたいと思います。よろしくご指導下さいますよう、お願い申しあげます。
1999年3月2日

3790
まったくわけが分かっていない人
最初から知能に欠損がある人、病気のせいで困惑して健常な判断力を失っている人。こうした人たちに対して、どのように接するか。自分で決めたことだから勝手にすればいいと、自己責任の原則もいい。しかしそうではなくて、もう少し保護的に接することはできないか、考えたりもする。そして限界に突き当たる。逆恨みされたり、誤解されたりもする。しかしそこでくじけないで、患者さんのために最善のことができないか。それがプロの腕ではないか。

彼は会社を辞めて会津に帰りたいという。そこで、家を4月までに売って、会津に新築の家を建てたい。はやく売りたいとのこと。心配になったので、妻に来院していただいたところ、妻も同じ意見。まず会津のアパートにでも落ち着いて、その後でゆっくり家がいい値段で売れるのを待って、売れたらその後で新築すればいいのではないかと考えるが、そうでもないらしい。なにか田舎の人たちに対してのメンツでもあるのだろうかと思うけれど。

3791
小学校で
学級崩壊に見舞われた50歳の男の先生。六年生の担任。五クラスあって、ほかは五年からの持ち上がりだった。彼だけが新しい担任。前任者は、二十台の男性で、子供たちとは友達付き合いをしていた。夜も七時くらいまで遊んでいたりしたらしい。彼に代わってから、「抑圧的」と児童には思われた。父兄から文句が出ていた。
クラスでけんかがあった。拳で殴って、殴ったほうが小指を怪我した。親が出てきて、学校で怪我をしたのは学校の責任だと言った。その親は現場労働者で、片目がない。
学級崩壊状態になって、同僚も冷たい。あからさまな悪口を言ったりする。もう学校にいられない。校長は「運が悪かった。六年の担任にしたのはわたしだから、わたしにも責任の半分はある」と言ってくれている。教頭は校長と反目していて、彼にもきつくあたる。休んだまま出てこなければ、転任させると言う。

小学六年、中学三年など、最終学年は二月、三月に荒れると聞いていた。その通りらしい。

とにかく、子供の分別がないのが問題。親の分別が子供と同様にないのが次の、またはそれ以前の、問題。
親戚でもいれば、そんなことをさせておいては親族である自分たちの恥だ、自分たちも愚か者だと思われてしまっては大変だなどという感覚も生まれるのかもしれないけれど。しかしそんな条件にも欠けている。

3792
60台で同窓会。70になると自然消滅。
会社を辞めて暇になって人と会いたいと思う。同窓会を思いつく。しばらくはいいが、70も近くなると、亡くなる人もいるし、病気になる人もいて、集まろうといってもあまり楽しい集まりにはならないことが多い。そして自然消滅する。

3793
摂食障害
患者さんがある程度増えた現時点では、摂食障害患者はあまり歓迎ではない。従って、宣伝もしたくない。
摂食障害患者治療は実りが少ない。まず彼女らは認知の歪みがひどい。被害的で関係妄想的である。
次に母親に問題のあることが多い。
さらに、心療内科に来る前に、婦人科で月経をコントロールする治療を受けていたり、「食欲を出す薬」を飲まされていたりする。それは医療に対する不信感の素地となっている。

しかし標準治療プログラムを作るとしたらどうするか、考えてみるのもいい。
・両親と兄弟の生育歴、性格傾向、対人接触の特性などを調べる。→家族療法の感覚で。家族システム論を採用すれば、「悪者」をつくらなくてすむ。みんないい人だけど、家族になったときに、不都合が生じているのだと説明。
・特に、母親に、「あなたも治療対象である」ことを理解してもらう。
・本人の生育歴、性格傾向、対人接触の特性。
・食事日記・内面の日記・「家族の関係」に焦点を当てた日記。

3794
治療を標準プログラム化する。
・プログラムが鍛えられる
・患者に応じて細分化できる
・仕事に漏れがなくなる
・データとして有効なものが残る

うつ治療標準プログラム
パニック治療標準プログラム
不眠症治療標準プログラム
不登校対処標準プログラム

治療の最後に、今後に備えて、「病歴、処方歴、注意事項、未来の主治医に」などを書類にして渡したらいいだろうと思う。点数にはならないけれど。
人間ドックの結果報告のレポートのようなもの。

3795
濃厚な心理治療を求めない人もいる。
心理テストを見ただけで恐くなったという人も先日一人いた。そのあたりを上手に見抜くことが必要。面接の中でそのあたりの感触を患者からつかみたいが、時間がかかる?一応治療アンケートはあるけれど。書かない人も多いのはなぜなのだろうか。

3796
閉じこもりについて、レセプターのこと、過敏さのこと、このあたりから説明する。メカニズムが分かれば安心感があるだろう。

3797
拒食と過食の振り子。この様子を正確に描き出せないか。そしてどうすればいいか?

3798
笑えばがんに強くなるのではない。笑うくらいの人は強いということだ。弱い人が無理に笑って、それでがんに強くなるのではないだろう。

3799
高級感情の函養。これが市民社会を構成する市民を育てるための教育の根幹である。

3800
グローバル・スタンダードとはつまり、アメリカと同じように愚劣な生活をしろということだ。